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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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132/689

逆転

こんにちは。と声が聞こえる。

マーレイが外を見に行くと、魔動力機器コニファーの二人だった。


「遅くなり大変申し訳ございません。恥を忍んで教えを乞いに参りました」


どうやら、開発に行き詰まったらしく、納品が遅れたらしい。

開発中の棚を見せてもらうと、ユリには完成しているように見えた。


「おおよその形状はつかみましたが、重ねたものが取り出せず、かといって手の入る穴を開けると内容物が不安定になり、強度も保てなくなり、どうにも行き詰まりました。大変申し訳ございません」


土下座する勢いで謝られて、ユリがどうしたものかと半製品をみてみれば、ユリ的には完成品に見えた。


「このままでは使えないのですか?」

「重ねてしまうと取り出せません・・・」

「冬箱は有ります?」

「はい、こちらに」


ユリは空のココットを用意し、棚をひっくり返した状態で冬箱の底に入れた。

ココットを8個収納し、更にひっくり返した棚を重ねココットを2~3個入れたところで、尋ねた。


「大丈夫じゃないですか?」


あわわわ と聞こえてきそうな慌て顔でコニファーの二人は驚愕していた。


「目から鱗だ・・・」


コニファーの二人は机と同じ向きで使うことしか思い付かず、ただひっくり返しただけで解決するとは思ってもみなかったのだ。


「馬車に真冬箱があるので持って参ります」


そう言って真冬箱と、棚をいくつか持ってきた。


「よろしければ高さ違いの棚もお納めください」

「ありがとうございます」


半分だけ棚にして、半分は背の高いものを入れられるような便利な棚もあった。


「冬箱と真冬箱の代金はおいくらですか?」

「ございません。むしろこちらがお支払をする状況です。しかも問題解決をこんなにも鮮やかに。本当に関心いたしました」


「リラちゃん、悪いけどクッキー持ってきてくれる?」

「はい!」

「ユメちゃん、黒蜜もっ」

「わかったにゃ!」


言い終わらないうちにユメに返事をされた。


「コニファーさん、アイスクリーム食べていきますか?」

「ありがとうございます!」


頼まないうちにマーレイが持ってきてくれた。


「今日のアイスクリームは、抹茶と、黒蜜胡桃バニラです。こちらのクッキーは、持ってきた彼女が作った『リラの華』です。あと、これから流行ると思う『黒蜜』です」

「『リラの華』! 知ってます知ってます!これもこちらのお店のお菓子だったのですね!」

「このアイスクリーム美味しい!」

「その黒蜜をかけると良いみたいですよ」

「はい!やってみます!」

「うわー!最高!」


ソウが、どや顔で冷茶を持ってきた。


「ソウ、ありがとう」


コニファーの二人は満足した顔で帰っていった。


ユリはどっと疲れたのだった。



「みなさん、お休み時間なのにありがとうございました。どうかしっかり休んでくださいね15:30からでお願いします」



15:00前に、既にユメがスタンバイしていた。


「あら15:30からで良かったのよ」

「ユリに聞きたいことがあったにゃ」

「なあに?」

「黒糖クッキーはないにゃ?」

「作れるわよ?食べる?」

「食べるにゃ!」

「胡桃とか入れる?」

「入れるにゃ!先払いで手伝うにゃ!」

「ふふふ、ありがとう」


手伝う理由をつけたかったのねとユリは納得した。


おやつタイムも黒蜜が飛ぶように売れた。

朝のあの1回しか売り込みはしていないのに、どういう情報網なのだろう?とユリは不思議だった。

リラの華は少し落ち着いたのか今のところ100枚程度しか売れていない。


15:30に戻って来たソウが、既に手伝っているユメを見て、どういうこと?と聞いていた。


「新しいクッキーを頼んだのにゃ!」


堂々言って退()けたユメはすごいと思う。


ソウはマーレイと一緒にチョコアイスクリームを作り始め、ユリはユメに頼まれた胡桃入り黒糖クッキーを仕込んだ。

リラとユメは片付けをしながらお店を見ていてくれている。


黒糖クッキーを焼きながら、ユリはもう1つ仕込んだ。

黒糖とブラックココア入りの黒い生地だ。

たしか青い生地は余っていたはずと、少しだけ青い生地を持ってきた。

黒い生地の半分くらいを取り分け、抜き型で黒い生地を抜いて、青い生地も使い、碧眼の黒猫クッキーを作った。

先にリラに見つかり、凄い!と声をあげられてしまい、焼く前にユメに見られてしまった。


ユメもリラも大喜びで、少し騒がしかったのか、店の方でも、何があったんだろう?という雰囲気になっていた。


黒い生地だけだと焼き加減が分かりにくいが、瞳が青いので丁度良い。


出来立ては熱いので少し冷ましてからユメに渡すと、なんと、店の客に自慢しに行ったではないか。予想外の行動にユリは少し驚いたが、まあ、それだけ嬉しかったのかもしれない。


ここまではほほえましい話で済んだのだが、ユリは知らないこの国の黒猫を敬う信仰心。


食べ終わって次の人に席を譲るため外で待っているから黒猫クッキーを分けてほしいと言うのだ。

そこまで言われたらさすがに断れず、1人1枚迄として作るはめになった。


リラに手伝ってもらい、60枚ほど黒猫クッキーを 作った。


外に待っている人たちの為、クッキーを持って出ると、御者や従者の人たちに日頃のお茶とおやつのお礼を言われた。

そしてユリが手に持った黒猫クッキーを見ると目を見張ったあと拝みだした。

今度はユリが目を見張った。


外に待っていた人たちと、店内の客と、購入を希望した御者や従者たちで60枚捌けてしまった。


リラに黒猫クッキーを頼むと、少し笑っていた。


ユリが追加を作るために店に戻ってしまったので、客たちはユメに代金を払っていったらしい。

大体の人は500~1000☆で、中には1万☆払っていった人もちらほらと居たそうだ。


黒猫の信仰心。恐るべし。

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