完成
14:00少し前、少し手の空いたユリが、クッキーの計量を始めた。
白いクッキーの生地の計量のようだ。
リラが気になって見てみると、赤い生地が出来上がっていた。
「リラちゃん、この色どう?」
「赤いですね!」
「確か、高温と、長時間加熱は厳禁だったかな」
「するとどうなるんですか?」
「鮮やかな色が退色するのよ」
「それは大変ですね!?」
「さて、ランチを食べたらみんなしっかり休んでくださいね」
「ユリもな」
「うん、私も休むよ。昨日は迷惑かけちゃったし」
「迷惑はかかっていません!でも、心配しました」
「ごめんね。ありがとう」
「ユリ、元気になったにゃ?」
「うん。あ、ユメちゃん、黒蜜できたわよ。どうぞ」
「ありがとにゃ」
「ソウも、どうぞ」
「お、ありがとな」
「マーレイさんとリラちゃんも要る?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「ところで、何に使うの?」
「色々かけるにゃ」
「俺は、外で不味いお茶に入れようかと」
「あ、そのまま飲むんじゃないのね。あはは、よかった」
「いくらなんでもそのままは飲まないにゃ・・・」
ユリは少し疑っていたことを反省した。
「これいくらで売るの?」
「器が返ってくるなら500☆で良いんだけど・・・」
「返ってこないのを見越すならもう少し高いのか」
「1200~1300有るから当分先の話だけどね。でも無くなったら次は作ってもらうことになるだろうし・・・」
「ま、とりあえず、全員休憩な」
ユリが2階に上がった後、少し足りないココットをソウは洗っていた。
「まーた、面白いことしてるにゃ」
「なんだユメか、驚かすなよ」
「ホシミ様!お手伝いします!」
「ユリ言ってたにゃ『リラちゃんが真似したらどうするにゃ!』ってにゃ」
「どうする『にゃ』とは言ってなかったけどな」
「何か言ったにゃ?」
「いや、何も」
「ユリに言って、三つ葉ご飯にしてもらうにゃ!」
「うわー、まずそ」
「ホシミ様、何個足りないんですか?15:00になったら洗っておきます」
「わかった。リラよろしくな。追加に使った分が足りない」
「全部で50個くらいですね。洗っておきます」
ソウは諦めて2階へ上がっていった。
ユメは冷茶を出してきて、もらった黒蜜を早速使っていた。
見ていたリラも真似してみた。
「美味しくなった!」
「美味しいにゃー」
「クッキーは黒糖無いにゃ?」
「そういえば無いですね」
「有ったら美味しいにゃ」
「ユリ様に聞いてみましょうか?」
「そうするにゃ」
二人がクッキー談義をしているとユリが下りてきた。
「ユリまだ早いにゃ」
「うん、ちょっと気になることがあってね」
ユリは冷蔵庫を開けていた。
「冷蔵庫にゃ?」
「さっき、黒蜜を取ったときに、やけに暗く見えたのはなんでかなって・・・あ、やっぱり」
「どうしたにゃ?」
「漏れてるのがあるわ」
奥の方のトレー一面に黒蜜が漏れていた。
トレーごと外に出し、漏れている容器を探すため、一つずつ持ち上げてみる。
「無いわねぇ?」
「ユリ様、これこっちにヒビが見えます」
「ありがとう!」
「ユリ、これもダメにゃ」
ユメが渡してくれた容器は、大分漏れたのか軽かった。
「大丈夫なのを洗うか拭くかしないとダメね」
ユリは濡れ布巾で容器の底を拭いていった。
漏れた容器のそばに有った物は拭くだけではきれいにならず、軽く洗った。
「二人とも、休み時間なのにごめんなさいね。どうもありがとう」
「ユリ、この漏れた容器はどうするにゃ?」
「確実に処分ね」
「あー!仕事してる!」
ソウが帰ってきた。後ろにマーレイもいる。
「漏れてたのにゃ」
「漏れてたのよ」
「漏れてました」
「そ、そうか、漏れてたのか・・・?」
ソウは、よくわからないまま納得させられた。
そろそろ15:00だ。
開店と同時に満席になった。
真冬箱は持参していないが、走って帰るのでアイスクリームを売ってくれと言う客がいて、ユメを困らせていた。
ここにドライアイスはない。
アイスを作り始めていたソウだが、ユメの代わりに客対応してくれた。
リラは器をいくつか洗ってからクッキーを作っていた。
ユリは午前中に焼かずに冷蔵したクッキーを焼きながら、リラと一緒にネモフィラクッキーを作っていた。
ソウとマーレイは抹茶アイスクリームを作っている。
お店は順調だ。
16:00前に、ネモフィラクッキーが合計320個できたので、失敗している感じのものを避け、315個を完全に冷まして1枚ずつ薄い紙袋にいれてから緩衝材を挟み箱に詰め、できあがった。
ソウが、明日朝一番で持って行ってくれるそうだ。
アイスクリームも予定数ができあがった。
「リラちゃん、お疲れさまでした」
「間に合って良かったです!」
「少し休んだら、リラの華をお願いします」
「はい!」
「私はユメちゃんと代わってくるわ」
「ユメちゃん、少し休んでね。この2日間無理させたわね。どうもありがとう」
「ネモフィラクッキーできたのにゃ?」
「315個、箱に詰めたわ。弾いたのは食べて良いわよ」
「わかったにゃ」
18:00より前に店内飲食分でチョコ胡桃が足りなくなったけど、売り切れとして断った。
明日は「抹茶と黒糖胡桃バニラ黒蜜がけ」だと言ったら納得してくれた。
みんなのお陰で特別注文を乗り切れた。
ユリはホッとして息を吐いた。




