翻訳
焼き肉の会計、30万☆越えだった。
何か良いデザートはないかと相談されたので、アイス箱を宣伝し、客に作らせたら変わっていて良いと思うと提案しておいた。
「ユリ、何か見るの?」
「食器見に行っても良い?」
「青空市?」
「うん!」
「どこ行くにゃ?」
「説明が難しいから一緒に行きましょ!」
「わかったにゃ」
とは言ったものの、ユリは動かない。
ユメが不思議に思ってユリに聞くと、方向がわからないらしい。
「ソウ、どっちにゃ」
「広場の方なんだけど」
「わかったにゃ」
「え?ユメちゃんわかるの?」
「前に、歩いたにゃ」
ユメはすたすたと歩きだした。
ユリはわかっていないのでついていったが、ソウは感心していた。
「ユメちゃん、いったいいつ歩いたの?」
「・・・ユリがお菓子教えてるところの石を見た次の日にゃ」
「あの不思議な幕のあった石?」
「不思議な幕?」
ソウがユリの言葉に質問してきた。
「私には見えるけど、他の人には中が見えなくて、中からは外が見えるって。それで私と手を繋がないと入れなくて、パープル侯爵にはユメちゃんを抱っこして貰って入ったのよ」
「結界か。それどこにあるの?」
「あれって結界なの!? パープル侯爵邸の草むらにあるのよ」
「今度案内してくれる?」
「わかったわ。あ、そうだ、聞こうと思ってたんだけど、文字が一瞬読めなくてすぐ読めるようになるんだけど、なにかしら?」
「ん?どこで?」
「どこで?・・・そういえば、お店の中ね」
ユリはよく考えてみた。全部店で見た文字だった。
「あーごめん。結界が強すぎるのかも」
「!!!」
「この国には、魔法だか魔道具だかで自動翻訳がかかっているんだよ」
「そうなの?」
「俺とユリは同じ言葉を使っているけど、マーレイとリラはこの国の言葉を使っている。ユメはどうだろうな」
「ソウとユリと同じにゃ。お店の貼り紙はそのまま読めるにゃ。リラのノートは読めないときがあるにゃ」
あれ?ユメちゃんは、昔この国の魔導師だったのでは?
読めないときって、読めるときもあるの?
ユリの疑問はつきないが、ユメが読めないのは記憶喪失で、この国の言語を含む自身の記憶があまり戻っていないからである。
「ユリ、ついたにゃ」
「あ、本当だ。ユメちゃん凄い!」
「どこに行くにゃ?」
「ココットを買ったお店よ」
「ココット買うにゃ?」
「今日の欲しいのはココットじゃないけど、何か良いのがないかなぁって」
「ユリ、こっちだぞ」
「あ、あれ?あはは」
ユリは反対に曲がろうとしていた。
店につくと、あのおじいさんがいた。
「こんにちはー!」
「いらっしゃい。アルストロメリアのお嬢ちゃん」
足元に、白い小瓶がたくさん有る。
「!、こ、これ、これなんですか?」
「調味料入れにどうかね?」
卓上醤油くらいのサイズで、口が細く、とっての付いた壺のような形の陶器の入れ物がたくさんあった。
「これ、容量はどのくらいですか?」
「150ml入れて栓ができる量だの」
「不思議な容量ですね」
「マグナムを注文したら一桁間違えられたと言っておったの」
まぐなむ?なんだったかしら?
「で、おいくらですか?」
「1つ300☆と言いたいところじゃが、全く売れんでの。お嬢ちゃんならお安くしとくからいくらかでも引き取ってくれんかの?」
「全部で何個あるんですか?」
「割れていなければ1200有るはずだのぉ」
「1200引き取るなら1ついくらですか?」
「引き取ってくれるのか!いつもの60でいかがかの?」
「買った!えーと、72000☆?」
「割れているのがあるかもしれないからの、お代はあとでかまわんよ」
「数が前後しても良いですよ1500個くらいまでなら引き取ります」
「ありがたいのぉ。又、マーレイに引き渡しておくからの」
「よろしくお願いしまーす」
「いつもありがとう」
「ユリ、何に使うにゃ?」
「黒蜜よ!アイスクリームと一緒に販売したかったの!」
「あー、そういえば前から探してたな」
「ユリ、1つ欲しいにゃ」
「良いけど、何に使うの?」
「出かけるとき持っていくにゃ!」
「え?何を?」
「黒蜜にゃ!」
水筒代わりに黒蜜持ってでかけるの?
ユメちゃん 喉乾かないのかしら?
ユリはそのまま飲む想像をしたが、ガムシロップのように使うのであれば、あながち間違いでもない。
「わかったわ、黒蜜を入れてから渡すわね」
「ありがとにゃ!」
「マイ黒蜜かぁ。俺も欲しいな」
ソウまで黒蜜飲むの!?
ユリはドン引きしたが、気を取り直し約束する。
「わかったわ、ソウにも黒蜜を入れてから渡すわ」
「サンキュー!」
もしかして、リラちゃんやマーレイさんも欲しがるのかしら?
これが流行ったりするのかしら?
アルストロメリア会でも欲しがるのかしら?
ユリの疑問は尽きないのであった。




