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薔薇

小型アイス箱に、リラちゃんの割烹着に、作って貰ったクッキーに、書いて貰ったカラーチャートに、親子丼鍋とタレ!

自分の割烹着と、アイスクリームの作り方一覧と、バタフライピーの絵と、バタフライピーの粉と、クッキー生地全色。

忘れ物無いかしら?


あー!ゼリー忘れてた!


ユリは今日持っていくものを早朝から用意していた。


「おはようユリ、早いな。ふぁー」


あくびをしながらソウが起きてきた。


「おはようソウ。今日は持っていく物が多くてね」

「何か手伝う?」

「大丈夫よ。朝ご飯食べる?」

「自分でやるよ。ユリは?」

「まだ食べていないわよ」

「じゃあ、パン買ってくる」


え?と振り返ったらもう居なかった。

ソウは何かパンを買いに行ったらしい。


「もう行くのにゃ?」

「おはようユメちゃん。早いわね」

「今日は一緒に行くのにゃ」

「ありがとう。まだ出かけないわよ。今、ソウがパンを買いに行ったわ」


「ただいま!」


戻ってきたソウは、焼きたてメロンパンと揚げたてカレーパンを持っていた。


「お、ユメ起きてるのか、ちょうど良いな!」


ユリは牛乳をコップに注ぎ、簡単なサラダを用意した。


「何にゃ?」

「これはカレーパン、こっちはメロンパン」

「カレーが入っているパンと、メロンが入っているパンにゃ?」


「カレーパンはカレーが入っているけど、メロンパンは見た目がメロンみたいなパンという意味よ。でも最近はメロンクリームが入っているタイプもあるわね」


「なんだ知ってたか」


そう言ってソウは更にパンを出してきた。

中にクリームが挟まったメロンパンだった。


高カロリーパン3つは朝からきついと思う。

ユリはクリームが挟まったメロンパンを冷蔵庫にしまい、カレーパンと、焼きたてメロンパンを食べた。

ユメもユリの真似をして冷蔵庫にしまっていたが、ソウは全部食べていた。


「どっちも食べたことがある気がする味だったにゃ」


あ、やっぱり。と二人は思ったのだった。



8:30にマーレイが迎えに来た。

リラはユリが渡したワンピースを着て御者席にいた。


「お父さんが一人だと寂しいと思うし、景色が色々見えて楽しいのでこっちに座ります」


ユリは客車に誘ったが、リラに断られてしまった。


「行ってきまーす」

「気を付けてな。ユメ、何かあったら頼むな」

「わかったにゃ!」



「今日は何作るにゃ?」

「予定では、アイスクリームよ」

「何のアイスにゃ?」

「アイス箱の実践?だから、決まってないのよ」

「美味しいのが良いにゃ」

「そうね。美味しいのが良いわね」


最近の流行はアルコール系のアイスで、子供向きではなくなってきている。

商売として作ってはいるが、やっぱりアイスクリームは甘くて美味しいのが良いとユリは思っている。


邸に到着し、馬車のドアを開けるといつもの揃った挨拶。

ドアを開けてくれたリラがビクッとしていた。

うん。あれってビクッとするよね。


メンバーを見ると、初期メンバー8人全員と、ネモフィラの9人だった。


「ユリ先生、少しお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「はい。何でしょう?」

「リラの華というクッキー、ユリ先生がお作りになったのではないのですか?」

「そうですね。リラの華は私が作ったものではありません。よくご存じですね」

「では、どなたが?」

「私は貴族でも平民でもない立場ですが、皆さんは私にお菓子を習いたいとおっしゃいました。では、平民の女の子が先生になっても教わりますか?」

「え・・・」「どういう?」


「私は、自分より優れた感性があるというのなら、相手が平民でも教えていただきたいと思いますわ!」


ラベンダーが言い切った。


「そうですね。教える側が気の毒な気もしますが、私も教えを乞う立場で相手の身分は気に致しませんの」


ローズマリーも言い切った。


「私はむしろ、そういった方にこそ教わってみたいですのよ」


元第一王女のネモフィラまで言い切った。


「私も教わりたいです!」


マーガレットが同意した。


「同じく思います」「私も!」


ローズとピアニーが同時に同意した。


「教えてくださるというのに、身分を理由に断るような方はこちらにはいらっしゃらないと思いますの」


サンフラワーの言葉に、カメリアとカーネーションが微笑んで同意する。


「皆さんありがとうございます。リラの華は、こちらのリラちゃんが作りました」


ユメと手を繋いで立っていたリラを紹介した。

リラはあわてて頭を下げた。


「あ、それで、名前が・・・」


「では、まずはアイスクリームの講習をしましょうか?」

「はい。お願いしますわ」


「あ、これ、梅酒ゼリーです。お酒はほとんど抜けていますが。前回のお手紙のお礼です。非売品です。うふふ、あ、種は食べないでくださいね」


ローズマリーにゼリーを渡すと、ものすごく喜んでいた。非売品というのが良いらしい。

サリーには、持ち込んだクッキー生地を冷やしておいてもらえるように頼んだ。


「リラちゃん、ユメちゃんと一緒に見学する?厨房に行ってる?」

「ユメちゃんが一緒に居るなら見学したいです」

「ユメちゃん、今日もよろしくお願いしますね」

「任せるのにゃ!」


アルストロメリア専用厨房に移動した。


「リラちゃん、これ着てくれる?」


ユリは昔着ていた割烹着をリラに渡し、自分のを着て見せた。


「これもエプロンですか?」

「割烹着という名前のエプロンね」


作業台の上には、アルストロメリアの絵の付いたアイス箱が10個置かれていた。


ユリは書いて来た紙を、前の壁に吊るした。


◇ーーーーー◇

◎果物+生クリームのタイプ

イチゴ ブルーベリー 桃 パイナップル 杏 ぶどう りんご バナナ 真桑瓜(要加熱)


◎果汁や果実酒を凍らせるタイプ

オレンジジュース 梅酒 ワイン スパークリングワイン

◇ーーーーー◇


◇ーーーーー◇

◎アングレーズソースが必要なタイプ


◎混ぜ込みのみで作ることができるタイプ

バニラ 抹茶 チョコ 紫芋 南瓜 紅茶


◎混ぜ込みと仕上げが必要なタイプ

黒蜜黄粉 黒糖黒蜜 チョコ胡桃 蜜胡桃 栗


◎バニラを仕上げて味を変えるタイプ

薔薇 ラムレーズン クッキー&クリーム 苺ミルフィーユ    

◇ーーーーー◇


「この2枚の紙に書いてあるのが、お店で出したものとこれから出すもの一覧です」


ざわざわとした。

こんなに!とか、あれはなんでしょう?とか、あ、あれ、いただきたいわ。とか。


「アイス箱はいずれ一般販売されますが、そこへ付く仕様説明書に載るレシピは、オレンジシャーベット、ワインシャーベット、イチゴアイスクリーム、くらいで、すぐに食べる用です。イタリアンメレンゲや、アングレーズソースを使うものは、一度習わないと難しいので当分載りません。アングレーズソースをしっかり覚えてください」


「それで、今日は何を作りますか?」

「ユリ先生!薔薇とは花の薔薇ですの?」

「あ、これは、このバラのジャムを使います」


ユリはバラジャムの瓶を出した。


「ちょっと召し上がってみます?」


キラキラした目で頷く女性たちを見て、サリーが素早く行動し、薄切りのパンを持ってきた。


ユリは借りたスプーンで、パンにジャムを塗り、リラやサリーを含む全員に配った。


「なんという!」

「お花の香りが!」

「まるで香水のようですわ!」

「こんなにも優雅な食べ物があったなんて!」


「明日の店売りが、このアイスクリームです」

「なんですって!!」

「お店来るの大変ですよね?ここで作りますか?」

「お願いします!!」


「このジャム自体は、花びらが薄めで香りの良いピンク色のバラを水と砂糖とレモン果汁でジャムにしたものです。黄色い花は若干苦く、濃い暗い色合いの赤い花は出来上がりが毒々しいので、鮮やかな赤~ピンク色辺りが良いそうです」


「うちの薔薇で作ってみます!」

「バラは、管理している人に聞いて、殺虫剤等を使用していないか必ず確認してくださいね。咲きたての開ききっていない物が良いそうです」


「ユリ先生!紅茶はどの様に作るのですか?」

「分量の牛乳(少し多め)で紅茶の葉を煮出し、その牛乳でアングレーズソースを作ります」


「ユリ先生!イチゴミルフィーユとは、どの様なものでどの様に作るのですか?」

「バニラアイスクリームを仕上げ、最後に刻んで凍らせたイチゴと、砕いたパイを加えるか、パイで挟みます。ケーキの名前なので、そのうち作りましょう」


「ユリ先生!クッキー&クリームというのはどの様に作るのですか?」

「バニラアイスクリームを仕上げ、最後にチョコクッキーを割って加えます」


「ここに書いてある以外のお酒でもシャーベットは作れますか?」

「アルコール濃度が高すぎると凍りませんので、12%くらいには下げる必要があります」


「ここに書いてある以外の果物でもアイスクリームは作れますか?」

「水分が多すぎるものは、アイスクリームよりシャーベットが向いていますが、おおむね作れます。潰れ難いものは刻むなり先に潰すなりしてください」


「真桑瓜に、要加熱と書いてあるのはなぜですか?」

「真桑瓜類は、乳成分を苦い方向に分解するらしく、生のままだと苦くなってしまうのです」

「では、シャーベットにするなら加熱は必要ないということでしょうか?」

「その通りです」



「さあ、では作りましょう」


全員違うものを作るらしい。

ユリにもアルストロメリア柄のアイス箱を渡されたので、持ち込んだ方のアイス箱は、サリーに試してもらうことにした。


「リラちゃん、ユメちゃんと相談して好きなの作って良いわよ」

「はい!!」


「サリーさん。やってみたいでしょ?というか、実験に付き合ってもらえますか?」

「私で可能なことならば いかようにも」


後ろがザワっとした。

何事かと振り返ると、リラが充填したことに驚いたらしい。


「魔動力機器コニファーさんが言っていましたが、このアイス箱は平民でも使えるそうです。それで、サリーさんにも手伝ってもらいたいのですが」


全員がキョトンとしていた。

今、そこの平民の女の子が充填したのに?と言う顔だ。


「あー、リラちゃんは魔力があります。リラは、ライラックの別の言い方です」


今度こそ本当に驚いた顔だった。


「サリーさん、どれ作りたいですか?」

「は、はい。・・・申し訳ございません。ユリ様がお選びになってください」


材料を使う都合上、選ぶのは難しいのかもしれないわね。とユリは悟った。


「ちょっと材料見てくるわ」


クルミとメープルシロップを見つけた。

メープルウォーナッツにしよう!


「アングレーズソースの準備とフライパン用意してもらえます?」

「かしこまりました!」


ユリが何か始めたと、全員が見学に来た。


フライパンにクルミをいれ少々炒る。

メープルシロップをざっとかけて、水気がなくなるまで炒めてできあがり。


作業台に広げてあら熱を取り、大きいものをより分けた。


「味見どうぞ」


大きいものを味見にと全員に配った。


「うわ、美味しい!あと引く美味しさですわね」

「あるだけ食べちゃう味ですよね、ふふふ」



「アングレーズソースつくります。確認したい方はどうぞ」


サンフラワーとネモフィラと、リラとユメとサリーが見学するらしい。


「作るつもりなら一緒にどうぞ」


サリーがリラにも用意してくれた。

リラもユメも最初から通しで見るのは初めてである。


卵黄を混ぜて砂糖(又は粉末黒糖)を加え混ぜ、温めた牛乳を加えて裏ごして、鍋にかけて焦がさないように加熱してできあがり。


みんな初めてだが上手にできた。

サンフラワーが一番ホッとしているようだった。


ボールにあけ、氷水で冷やして、冷えたら生クリームと合わせてアイス箱に入れる。


「では、サリーさん、充填してみてください」

「はい、かしこまりました!」


「手が冷える感じがします」


「あ!ランプ、つきました!」

「おめでとー!アイス箱に充填できましたね」

「凄いです!本当にできました!」

「では回してみましょう!」

「はい!」


見てまわると、ユメとリラは黒糖黒蜜を作るらしかった。


ユリは黒蜜を少しもらい、黒蜜クルミも作った。


そろそろ15分になるのでサリーのところへ戻り、アイスクリームの仕上げをした。


11種類のアイスクリームやシャーベットが出来上がった。

アイス箱に大きなスプーンを刺し、小皿をもって食べて回ることになった。

バラジャムも誰かが作っていたので、みんな試食することができた。


もう結構と言う量を食べ、それでも半分くらいは残っている。

メイドがボールに移し、アイス箱を洗って返してくれた。

残っているアイスクリームやシャーベットは、屋敷のみんなで食べたらしい。

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