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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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見本

「ユリ様、注文した物が届いたのですか?」

「使ってみる?・・・って、大丈夫かしら?」

「ユメちゃんに聞いた方が良いですか?」

「そうね!その方が良いわ」


ユリは魔力について詳しくないので、ソウかユメに聞くべきと判断した。

実際、リラは訓練をしていないので、いきなり大きいものは危険である。小型アイス箱に充填したことはあるが、それ1度だけなのだ。

では、同じく訓練したことがないユリがなぜ大丈夫かと言えば、無意識で魔法を使い続け、訓練どころか実地で伸ばしたのだ。現時点でのユリの魔力総量は、一般貴族の10倍、約3000p(現時点での最大値)であり、600pの充填くらいなんでもないのである。

ちなみに、ユメは現在の体躯での最大値 約900p、今のリラの魔力は150p~300pの間である、155pといったところだ。


ただし、納品された器具類は、リラが充填しても問題がない。そもそも一般貴族用に作っているのだから、1台(1メモリ)なら大丈夫である。



「リラちゃん、ちょっと相談なんだけど・・・」

「はい」

「貴族に、貴族の女性にクッキー教えられる?」

「え?・・・誰がですか?」

「リラちゃんが」

「え?・・・ええぇー、無理です、絶対無理です」

「やっぱり? んー、じゃあ、私の助手でついてくるなら良い?」

「う・・・・・・ぅー。ユリ様と一緒なら、でも、・・・怖く、ない、ですか?」

「それは大丈夫。教える方が偉いからね!」


リラは考えたが、ユリが言うなら必要なことなのだろうと決心した。


「がんばります」

「今度の土曜日(だいちのひ)マーレイさんと一緒に来てね」

「はい。Eの日(だいちのひ)ですね」


「あ、そうだわ!外のバタフライピーの全体図と、花だけ拡大した図を描いてくれる? 青い色の粉の説明に使うと思うのよね。それとカラーチャート」

「カラーチャートってなんですか?」

「あ、ごめん、こんな感じに、色の場所は、赤、青、黄色を時計の12、4、8に塗って、2、6、10に、紫、緑、橙、中心が白で、中心と外側の間、赤と白の間が桃色、青と白の間が水色、て感じのをきれいに描いて欲しいんだけど」


ユリはメモに三重円を放射状に12分割したものを描いて、色の場所を文字で示した。


「これって、クッキーの色ですか!?」

「まー、そうなるわね。赤が作れていないからこの通りにはできないけどね」

「凄いです! ユリ様、自分用にも作って良いですか?」

「構わないわよ。大きな紙渡すわね。好きに使って良いわよ」


ユリは切り取れるタイプのスケッチブックをリラに渡した。

ワンコインショップで買ったものなので、いくつか持ち込んでいる。


「9:30から外で描いてきて良いわよ。よろしくね」

「はい!」


9:30になると、楽しそうにリラはスケッチブックと色鉛筆と水筆を持って外に出ていった。

ユリは仕込みを開始し、10:00過ぎに来たマーレイに、リラがいないことを驚かれた。


「リラちゃんは畑の方にいるから様子を見てくると良いわよ」

「畑ですか?・・・行って参ります」


なぜ畑にいるんだろうと顔に書いてあるマーレイは、ユリに言われた通り畑に様子を見に行った。


お店の建物沿いに立てられた支柱に巻き付いた植物を、熱心に描いている娘のリラがいた。


「何やってるんだい、リラ?」

「あ、おとうさん!あのね、ユリ様がこのお花の絵が説明に必要だから描いて、って!」

「ユリ・ハナノ様に頼まれた絵なのか!リラは凄いな」

「できたー!」


マーレイが覗き込むと、リラはサッと絵を隠した。


「ユリ様に一番に見てもらうの!」

「そうだな」


娘をほほえましく思い、マーレイとリラは一緒に店内に戻った。


「ユリ様ー!できました!」

「見せてもらえる?」

「はい!」


渡されたスケッチブックを開くと、それは素晴らしい水彩画だった。

写実的でわかりやすく、まるで写真を水彩画加工した絵 のようだった。


「素晴らしいわね! リラちゃん!」


少しそわそわしたマーレイを不思議に思ったユリがどうしたのか訪ねると、絵を見たいと言うので、スケッチブックを渡した。


「凄い、これをリラが・・・」


あら?リラちゃんはマーレイさんに見せなかったのね。

ユリはリラの才能を誉め、画材も紙も足りなくなったら言うのよ?と追加を約束した。


「さあ、ランチの準備とクッキー作りましょう!」

「はい!」

「あ、あの、ユリ・ハナノ様、今日はこの後何もないのですが、お手伝いする事はございますか?」

「ありがとう。リラちゃんの補助お願いします」

「かしこまりました」


ユリは、カレー粉とトマトの缶詰25缶と鳥もも肉25枚とバターと牛乳を使って、バターチキンカレーを約50人前作り、お玉でよそうだけにした。


もう一つは、ミックスベジタブルのパック詰め14パックと、細かく切った鳥もも肉10枚と大量のケチャップを炒めて、ご飯に混ぜるだけでオムライスの中身のチキンライス約40人前ができるようにした。卵は120個確保してある。


チキンライスを炊いた方が楽ではあるが、残ったとき困るのと、炊飯器に臭いがつくのを避けたかったからだ。


これらを作る合間に、ユリは形が出来上がったクッキーを焼いていた。


「ランチの準備終わったから私もクッキー作るわ。どの型を使って、何の花を作るか教えてもらえるかしら?」

「はい!」


ちらっと見たときに作っていた向日葵(ひまわり)や朝顔の他に、細目のハート型で白と黄緑の生地をぬき黄色の生地を花芯にしてカラーリリーと葉を作り、野菜抜き用の梅型で青い生地を抜いて、中心を白い菊型に入れ換えたネモフィラや小菊等を、大きめな丸型の中に配置して、花束を再現したものを作っていた。


ユリはリラの発想力に感心した。


「リラちゃん、ローズマリーとラベンダーって作れる?」

「一緒にですか?別々にですか?」

「別々に」

「少し濃いめの緑色の生地が欲しいです」

「抹茶生地にほんの少しココア生地を混ぜるとすこし暗い緑になると思うわ」

「作ってみます!」


ユリは、マーガレットなら菊型で白生地を抜いて、中心を黄色で入れ換えればできるなと思い付いたが、ローズマリーやラベンダーは作り方が思い付かなかった。


リラは緑色の生地で紙縒(こより)のような細いものを作り、大きな丸型の上に絵を書くように配置していった。紫や青の生地を混ぜたものを薄く伸ばして小さな星形で抜いて花を作り、重ねるようにして、ローズマリーやラベンダーを表現して見せた。


ユリは打ち抜くことを前提に考えていたので細い枝状の物が思い付かなかったのだ。


「凄いわ!リラちゃん!これは私が買い取るから、良いかしら?」

「ユリ様のお店のものなのに、ユリ様が買い取るんですか?」

「うふふ、そうね。あ、桃色ぽい色 要る?」

「作れるんですか!?」

「その紫芋の生地、レモンを混ぜたらできるわよ」

「え!?」


リラは急いで冷蔵庫からレモンを持ってきた。


「それを絞って、本当は生地を作るときに混ぜれば良いんだけど、薄く塗れば良いと思うわ・・・あ、と、バタフライピーも色が変わっちゃうから、レモンがつかないように注意してね」

「はい!」


リラはレモンを絞り、刷毛で薄く塗ってみた。

だんだんと色が鮮やかになり、濃い桃色になっていった。


「凄ーい!これなら色々作れます!」


「あ、そろそろランチだから私は抜けるけど、今日は忙しくならないだろうからクッキー作っていて良いわよ」

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