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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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夏板

約束の水曜日(みずのひ)

開店前に、トロピカルの店主は従業員を二人連れてやってきた。

荷物が多いので運搬要員のようだ。


「いやー、楽しみにしていたんですよ!!」


来店するなりハイテンションのトロピカルの店主は、いかに来店が楽しみだったかしばらく語っていた。

まあ、それでも納品された製品は素晴らしく、期待の何倍も優れたものだった。


ヤカンを置く用に80度で注文した上置き型夏箱は、80度、85度、90度、95度、100度が切り替えられる。

つまりこのままで沸かせるのだ。保温のみではなく、沸かした上で保温ができる。まるで電子ポットのようだ。外見は、厚みこそだいぶあるが、電磁プレートに良く似た感じの物だ。

使用魔力は、50p(80度3時間保温)・50p×2(80度7時間保温)、10p(100度 湯沸かし)

ユリとしてはとても経済的である。


6台に魔力充填してもなんともないユリだからこそ、経済的で便利なのだ。


注文した70度の小型夏箱はダイヤル付きで、5度刻みに20~80度まで使える優れものだった。容量は、ココットを9つ平置きできるサイズである。

これなら、低温チャーシューも、パンの発酵も、温泉卵も色々作れる!


使用魔力は、

100p(24時間50度の時) 100p×3(24時間80度の時、フル充填)動力源スイッチ付き


パープル侯爵邸で教えてもらったものよりだいぶ進化していた。


「思っていた以上の品ですね。優秀なのですね」

「ありがとうございます!!」

「もしかして、100度以上のものも作れるのですか?」


「技術的には可能ですが、使い道がありません」

「可能なんですか!180度、200度とか作れます?」


「できますけど、使い道有るんですか?」

「沢山あります!貴族に売れますよ!」

「え!本当ですか!?」


「上置きの鉄板を温める方式にすれば汚れも落とせるし、上置きの鉄板の種類を作れば万能調理器具ができます!」


「開発にご協力いただけるのですか?」

「作ってくれるなら協力しますよ!」


ユリはホットプレートと、たこ焼き器と、ワッフルメーカーを作ろうとしていた。


「今日は時間がないので、とりあえず、ランチでも召し上がっていってください」


「お!待ってました!」


ついてきた2人も役得とばかりに喜んでいた。


一、二番人気のハンバーグとミニグラタンのランチと、冷茶を出す。

グラタンは、2階のキッチンに有るオーブントースターで焼いてきたのだ。


「これが夢にまで見た癒しの店のランチセット!」


ん?また、癒しの店って言われてるわ。

ユリは訂正こそしなかったが、少し残念に思っていた。

そもそもこの店を「アルストロメリア」と正しく呼んでいるのは、ごく少数である。


「うまい!!」

「噂通りだ!!」

「これで自慢できる!」


なんだか大変なことになってそう。

ユリの知らないところで一人歩きしているらしい評判が、勝手に加速するのである。


「アイスクリーム召し上がります?」

「是非!!!」


今朝、小型アイス箱で2種類作っておいたアイスクリームをだす。


「一番人気のラムレーズンアイスクリームと、二番人気のチョコアイスクリームです。特別に作りました」

「なんと!」

「これは想像以上のうまさだ!!」

「コニファーも、頑張ってるんだな・・・」


食事が終わり、テンションの高いまま話し合いに入った。


「名前なんですが、なんか良いのありますかね?」

「箱じゃないですものね。夏箱の板タイプで夏板とかどうですか?」

「それでいきましょ!夏板!」


あっさり決定してしまった。



「おはようございます!」


リラが出勤してきた。

そうなのだ、この人たちは9時前から来ているのだ。

ユリが朝ごはんのあと、たまたまお店に降りたら、すでにドアの前にいたのだ。

その時間はなんと8時前である。

どんだけ楽しみにしていたのだろう。


「それで、おいくらになりますか?」

「権利を売ってください!」

「夏板のですか? それなら要りませんよ。私が作れる訳じゃないですし」

「えええ!!! 利益を請求しないのですか?」

「しませんよ。だからいくらか教えてください」

「利益分でお釣りが来ますので、お代は要りません。夏板追加購入の場合、3割引という事でよろしいでしょうか?」

「そちらが損しないなら、もうそれで良いです」


ユリは交渉を諦めた。

コニファーの時に悟ったのだ。


ユリは少し、いや大分疲れたが、無事納品された。

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