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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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茄子

「昨日はお疲れさまでした」

「今日、仕事無いから手伝おうか?」

「ありがとう!」


ソウが朝から手伝ってくれるというので、朝からアイスクリームを作ろうとユリは考えていた。


「アイスクリームは、ブルーベリーと栗の予定です」

「栗かぁ。旨そうだな」

「刻みを入れるかどうしようかと悩んでるわ」

「入れた方が良いよ!」

「そう?じゃあ、ペーストと刻みを入れましょう」



ユリは先に厨房に来て、クッキーの生地7色を5倍で仕込んでいた。緑が2色有り、青色生地はまだ残っている。


「あ!アイスクリームの葉っぱの分がない!」


ユリは思い出したように叫ぶと思案した。

抹茶だけ作るしかないわね。と呟き、再度仕込み始めた。


花ほど色焼けに注意を払わないので、葉っぱクッキーは早く焼ける。焼きながら次の分の型を抜き、350枚の葉っぱクッキーを作った。


朝早くから作業した理由は、釜の温度を下げるため、葉っぱを早く作り終えたかったのだ。


「しばらくクッキーが落ち着くまでグラタンを出せないわね・・・」


水曜日(みずのひ)に夏箱の店トロピカルの店主がくるのだ。きっとランチを食べたいだろう。どうしようか?とユリは悩んでいた。


「おはようございます!」

「おはよう。リラちゃん、相変わらず早いわね」

「昨日、ノートが全く書けなかったので、早く来ました」

「昨日はお疲れ様。本当に大変だったわよね」

「でも、嬉しいです!今日もいっぱい売れるかな?」

「そうね。今日は、茄子80個、ピーマン30個刻んだらクッキー作ってね。途中アイスクリーム詰め込みがあるわ」

「はい!」


リラは返事をして休憩室に入っていった。

入れ替わるようにソウが降りてきた。


「もう、リラ来てるんだ」

「ノート書くんですって」

「勉強熱心だな」

「偉いわよね。清書用とか要るかしら?」

「向こうにノートいっぱい有るから今度持ってくるよ」

「わかったわ、ありがとう」


ユリは栗アイスクリーム用のアングレーズソースを作り、栗を刻み、シロップごと煮て柔らかくしてから手動フードチョッパーでペーストを作った。持ち込んだ瓶詰めの栗だ。


ブルーベリー6回、栗4 回、中デッシャー150個、ココット詰め40個が今日の予定だ。それに、今日提供分はチョコなので、予定外の追加があるかもしれないとユリは予想していた。


9:30になりリラが戻ってきた。リラは早速野菜を用意してユリに見本に1つ切ってもらい、残りを切り始めた。茄子とピーマンだ。


ユリは麻婆茄子用の肉味噌を作り、お玉で取れるようにした。

その後リラを手伝って野菜切りを終わらせた。


「リラちゃん、クッキーお願いね」

「はい!! 昨日と違うのも作って良いですか?」

「同じ値段で売れる生地の量と同程度の手間なら良いわよ」

「はい!」


何やら色々考えてきたらしく、違う花を作りたいらしい。


ソウもアイスクリームを作り始めるらしく、「デッシャーの時はよろしくな!」と言っていた。


リラをちらっと見ると、大きな菊型でカボチャ生地を抜いて、放射線状のあとをつけ、中心を丸く抜き、格子状にあとをつけ同じ丸で抜いたチョコ生地を組み合わせていた。向日葵(ひまわり)かしら?

次に、大きな丸い青い生地と、紫の生地の中心を星形で抜き、白い生地の星形を組み合わせていた。朝顔かしら?

よく考えるわねぇ。ユリは感心していた。


「ブルーベリーできた。デッシャーお願い!」


ソウから声がかかり、ユリがデッシャーを手伝った。


こうして開店前に、ブルーベリー4回が終了した。

クッキーは、120個できた。

ユリが料理にかかりきりになるので釜も見られないため、リラはクッキーを休みアイスクリームを手伝うことになった。

ブルーベリーをもう2回だ。ココット詰めなので、手伝える。


「おはようにゃ!」

「おはようユメちゃん」

「もうアイス作ってるにゃ?」

「イレギュラーねー。クッキーも今日のチョコアイスクリームも予想がたたないからね」

「手伝うにゃー!」


ユメも手伝って、ブルーベリーアイスクリームは無事終了した。


そんなユメが来たあとから、ユリはお店の注文に追われていた。

予想より茄子に火を通すのに時間がかかり、注文がさばききれていない。


栗のアイスクリームを後回しにし、ソウが調理を手伝ってくれた。ユリより技術はないが、パワーがあるので中華鍋が振れるのだ。

ユメはお店で購入だけの客の対応をしてくれた。やはり、「リラの華」が飛ぶように売れる。


「リラちゃん、手が空いたらクッキーおねがい」

「はい!!」


ソウのお陰で注文の停滞がなくなり、ユリは釜を見られるようになったのだ。

空いた時間に茄子を半調理しておき、その後を乗り切った。

ランチセットは85食でて、40食の麻婆茄子が売り切れたあとは、夏野菜カレーだけでのりきった。


「お昼ご飯、夏野菜カレーか、親子丼です。どっちが良いですか?」

「はい!親子丼作りたいです!」

「食べたいんじゃなくて作りたいなの?」

「はい!」

「親子丼食べるにゃ。リラが作って良いにゃ」

「俺はカレー食べたい」

「親子丼は3人前の材料だから私もカレー食べようかしら?」


「遅くなりました」


そう言ってマーレイが小麦粉と卵とカボチャを持ってきた。

そういえば、今日午前中に来なかったわね。

ユリは忙しすぎて忘れていたようだ。


「リラちゃん、3人前作ってみる?」

「はい!やってみます!」

「タレの配合はね・・・」


ユリは最初から全部できるように教えることにした。

切るのはできる。煮るのもおそらくできる。あとはタレの配合だけわかれば一人でも作れるようになるだろう。


「私が作っているのはこんな感じ。もう少し甘めがよければみりんを増やすとか、少し変えても構いません」

「はい!」


リラは少し時間差をつけながら3つの親子丼鍋にタレを入れ、玉ねぎと小さく切った鶏肉を入れた。

鶏肉が煮えた頃、用意しておいた溶き卵を順番に入れ、火を止めてから少し残した卵を加えた。

ご飯にのせ、一番上手にできたのをユメに渡し、のせるのを少し失敗したのを自分の分にしていた。


今日のマーレイは選択権がなく親子丼だ。


見ていて少し煮すぎの感じもしたが、おおむね良くできていた。

あとは自分の舌で覚えるしかないだろう。


「どう?上手にできた?」

「ユリ様が作った親子丼より、鶏肉と玉子が固い気がします」

「ほんの少し煮すぎかもしれないわね」

「美味しいにゃ。リラ凄いにゃ」

「ユメちゃんありがとう」


マーレイは、静かに大事そうに食べていた。



おやつタイムが始まっても、クッキーこそパニック状態だが、アイスクリームは追加もなく予定通りだった。


リラとユメはクッキーを作り、お店はユリが一人で回した。


栗のアイスクリームを作り終わったソウに、リクエストを聞いたら特にないらしく今日作ったアイスクリームで良いらしい。そろそろアイスクリームのドカ食いに飽きたのかもしれない。


営業が終了し、クッキーは350個以上売れた。さすがに今日は作る方が早かったので、売り切れて製造待ち状態はなかったが、明日用にと思っていた分もだいぶ売れてしまった。


「今日は久しぶりに時間内に終わりましたが、良かったら夕飯を食べていってください」


ここのところ毎日だったので、帰っても夕飯の用意がないだろうとユリは考えたのだ。

実際、夕飯の用意を考えていなかったマーレイ親子はとても喜んでいた。

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