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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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111/689

保温

教えられた店の入り口にボーと立っている人が見えたので、ユリは声をかけた。


「こんにちはー」

「ご依頼でしょうか?」

「はい」

「え、本当に依頼?」


訪ねておいて失礼である。

まあ、ユリが子供に見えるので致し方ない。

後ろには、きちんとした大人に見えるソウもマーレイもいるので、冗談なら子供を止めるだろうと思われたのだ。


「こちら夏箱のお店と聞いてきたんですが?」

「そうです!そうです!夏箱に誇りをかけてます!冬箱なんかには負けません!」


コニファーの店主が言った通りだった。


店の名前はトロピカル魔動力機器というらしい。

店の奥のソファーのような席に案内され、ユリとソウが座ると、こちらが用件を言う前になぜ冬箱に反抗的なのか語ってくれた。

どうやら、間接的にユリのせいである。

冷茶ブームで冬箱と真冬箱が売れ過ぎて、間違って来店する客に散々迷惑をかけられたらしい。その上、次はアイス箱が控えている。


「なんだかすみません」

「え!?」


ユリが謝るのでやっと正気に戻ったらしい店主が、非礼を謝ってきた。

数分後、やっと話ができるようになった。


「それで、製作を依頼したいのですが」

「はい。ご希望をおっしゃってください」

「可能かどうかはわかりませんが、箱ではなく、上にヤカンが乗る形状で、80度を保てるものが欲しいです」

「!? 何に使うのですか? って、ヤカンを乗せるのでしたね。80度のキープだと、魔力的に大変だと思いますが・・・」

「時間は3時間、又は7時間持てば良いです。魔力の心配は大丈夫です。一人で真冬箱のフル充填ができます」


マジか!といわんばかりに驚いたトロピカルの店主が気を取り直して聞いてきた。


「参考までに伺ってもよろしいですか?」

「はい。答えられることであれば」

「どのような状況で使われるのですか?」

「具体的には、お茶やお湯をお店に置いて、お客さんが自由に使えるようにします。お店に火を置くと危ないですからね」


「・・・凄い!素晴らしい!」


お世辞や、相づちではなく、店主は心の声で誉めているようだ。


「あと、調理用に普通の小型夏箱、60度、70度が1つ欲しいです」

「はい、それで、80度の物はいくつご入り用ですか?」


お店に3台、外おやつに3台、予備に1台かしらね。


「とりあえず7台ほどお願いします。前金必要ですか?」

「どちらに納品しますか?」

「アルストロメリアというお店をやっ」


ユリが言い終わらないうちに被せてきた。


「え!あなたが、あの、ユリ・ハナノ様なんですか!?」

「まあ、そうですけど・・・?」

「前金の必要はございません!即納品いたします!」


どうしてそういう思考に至った?と考えるとユリは頭がいたい。

明らかに、冬箱・真冬箱に対抗しての発言とわかる。


「はあ・・・」

「一週間、いえ、5日で納品します!」


棚だけ作るより早いなんて凄いなぁと本当に思ったのだ。ユリはうっかり呟く。


「コニファーさんより早いですね」

「やっぱり、3日で納品します!」

「そこまで急ぎませんので、よろしくお願いします」


これ以上話していると、無理してでも明日持っていきます!とか言いだしかねないと思い、ユリは撤退することにした。



水曜日(みずのひ)に届くの楽しみだわ!」

「届いたら何に使うにゃ?」

「冬になってからの外おやつのお茶とか、店内のセルフサービスのお茶に使おうと思ってるわ」


この話しぶりだと、すぐには使わないのかなぁ?と感じたリラが質問する。


Wの日(みずのひ)に届いても使わないのですか?」

「一台は使ってみるつもりよ。作ったお茶の保温とかね」


とりあえずは使うんだ。と全員が思った。


「みんな、付き合ってくれてありがとう!」


ユリは良い笑顔でお礼を言った。

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