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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
2章

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冷樽

魔動力機器コニファーの店先にユリが来ると、すぐに店員が飛んできた。


「これはユリ・ハナノ様、ご来店ありがとうございます。本日のご用件はいかがいたしましょう?」

「まずは、冬箱、真冬箱を1つずつ購入と、あとは、冬箱の製作依頼です」

「製作依頼でございますか? 少々こちらでお待ち下さい。店主を呼んで参ります」


歩きながらテーブルの有る場所に案内され、その店員は奥に店主を呼びに行った。


ついてきたユメとマーレイとリラは興味深そうに店内を見ていた。


最初に対応したのは知らない店員だったが、あちらはユリを知っていたようだ。

すぐに店主と いつもの女性店員がお茶をもって来た。

店主が話し出す。


「いらっしゃいませ、ユリ・ハナノ様、冬箱と真冬箱のご注文と伺いましたが、どのくらいの物がご入り用でしょうか?」

「持ち運べるサイズで一番大きい冬箱と真冬箱に、棚をつけてもらいたいのですが」

「棚でございますか?どのような形状でしょうか?」


形状、出来上がったイメージを言えば良いかしら?


「具体的には、ゼリーやカップアイスクリームを複数持ち運べるようにしたいので、冷気が通る網状の板に四つ足と、真ん中辺りに補助の足があれば良いのですが、誰に頼めば良いかわかりませんのでこちらに来ました」


これで通じたかしら?とユリが考えていると、頭の中で計算した商人の顔で店主が声を上げだ。


「それは凄い!即作ります!10日以内に納品します。この権利はいくらですか?」


いくら?って、買い物に来たのは私の方なのに、何の事かしら?

ユリは不思議に思い聞いてみる。


「権利はいくら、とは?」

「ハナノ様は売り上げの利益を要求されないので、買い取る方が良いかと思いまして」


あー、そういう意味なのね。著作権的なものを請求するのがおそらく筋なのね。

店にしてみれば、貴族は権利と歩合を要求するものである。パープル侯爵の関係者で、流行の発信源で、無茶は言わないのに儲け話をくれる相手だ、大事にしない選択肢はない。


「作ってくれさえすれば良いですよ。儲かるなら儲けてください。あともう1つ、冬箱の製作依頼です」


「伺います」


ユリはウォータージャグの説明と、それが冷やせる状態、もしくは、冷えるウォータージャグを作って欲しいと注文した。


「こちらの方は試行錯誤から始めるようですので、いつ納品できるか断言できませんが、よろしいでしょうか?」


「無理のない範囲で良いですよ。一番が、パープル侯爵婦人からの依頼で、その次にお願いします」


「お店の納品が先でなくてよろしいのですか?」

「はい。アルストロメリアの絵がついたアイス箱が先にできた方が、教える都合上 私も助かります。これらには、使用説明のみで配合をつけなくて構いません。私が配りますので」


ユリは親切で言ったつもりだが、聞く方にすれば、貴族の(げん)より力がある宣言だった。


「は、はい。かしこまりました。最大限急がせます」

「無理のない範囲で頑張ってください」


くどいようだが、ユリは親切で言ったつもりだが、聞く方にすれば、フルスピードの要求だ。


とにかく早く仕上げなければと店主が頭のなかで計算していると、ユリに意外なことを言われた。


「あと、夏箱を作っている人か店を紹介してもらえませんか?」


次は夏箱で新たなものを産み出すのだろうなぁと店主はちらりと思ったが、とりあえず説明しなければと思い直した。


「お教えするのは構いませんが、こちらとしては特に思うことはないのですが、向こうはライバルだと思っているらしく、色々突っかかってくるので、紹介だとは言わない方が良いかと思われます。この真裏くらいに店がございます。まあ、腕だけは良いので、変わったものを注文するには向いていると思います」


店主は方向を指しながら説明してくれた。


「わかりました。ありがとうございます」


ユリはお礼を言って、店をあとにした。


「ユリ、用は終わったの?」


店の外にソウが待っていた。

ソウの用事は終わったらしい。


「この後、夏箱を作っているお店に行こうと思うの。この裏の通りに有るらしいわ」


ユリは手で行く先を示した。

マーレイとリラが、あれ?という顔をする。


「ユリ、本当にその方向?」

「んー、リラちゃん、どっちだと思う?」

「こっちだと思います」


リラの指した方向はユリと90度違った。


「じゃあ、そっちで。あはは」


ユリ本人も方向音痴を自覚しているので方角の主張が無駄だと理解しているのである。

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