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作物

ユリが目を覚ますとベッドだった。

肉を焼いただけのご飯の後、話しながら眠ってしまったからだ。


今何時だろう?

とりあえず起きて、ソウを探した。


リビングを覗くとソウが朝食の用意をしている。


「ソウ、おはよう」

「おはよう、ユリ」


ソウが用意したのはクロワッサン、目玉焼き、ボイルウインナー、プチトマトだ。


「これ、どうしたの?」

「これ?・・・あ、クロワッサン? なら買ってきた。向こうで」


本当に気軽に行けるんだ。

ソウはすごいな。

ユリは感心した。


「売ってる店があるのかと思っちゃったわ」

「ないない。硬いパンしか売ってないよ」


そうなのね。

パンは仕入れるべきか、自分で作るべきか。

ユリは迷っていた。


「一緒に来た人達にパン屋さんは居ないの?」

「居るかどうかは判んないけど今から店を整えるからね、間に合わないんじゃない?」


ん?他の人たちはどこに住んでるの?

一気に疑問が沸き立つ。


「ソウ、一緒に来た方達は、今どこに居るの?」

「ほぼ、王都か市場の辺りだと思ったけど、何で?」


あれ?私だけ違うのかな?

昨日の市場で見たダンボール箱の りんごを売っていた人・・・は、ここの人の服だったから違うか。

皆さんは何してるの?

ユリは色々把握ができていなかったのだ。


「他の方は、店舗を希望しなかったの?」

「あー、居住区の希望しかなかったらしいよ。店舗は現地を見てから決めたいみたいだよ」

「そうなのね」


「とりあえず食べようよ」

「うん、いただきます」

「はいどうぞ、いただきます」


焼きたて風のクロワッサンはとても美味しかった。でも、これ、どうやって温めたんだろう?

温かいのを買ってきた?のかしら?

ユリは聞いても良いことなのか、秘密なのかわからなかった。


「どうした?美味しくなかった?」

「ん、あ、いえ、とても美味しかったの。温かくて・・・」

「温めたからな、ほら」


ソウが指差す先にはオーブントースターがあった。


「えー!いつの間に?」

「他に足りない物が有ったら言ってくれ」


電化製品は持ち込み禁止って書いてあったけど、ソウはOKなのね・・・。

新しそうには見えないからソウの私物かしら?


「そういえば、昨日はどこに寝たの?」

「ベッドがある部屋に寝たぞ?」

「あ、それで私物を持ってきたってこと?」

「まあ、そうだな」


元の国の俺の家からだけどな。



「そうだ、これ言っとかないと、俺がいないときに、絶対に(・・・)俺の部屋へ入らないでほしい。」

「うん、わかったー」


人の部屋に無断で入ったりしないよーと、軽く返事をする。


「転移の危険があるからな」

「・・・わ、わかったわ」


そんな重大なことなのね。

うん、絶対入らないわ!

ユリは心に誓った。


「もっと食べるか?おかわりあるぞ?」

「充分よ。ごちそうさま」

「おう」


ユリは食器を片付け、ソウに今日はどうするかを聞こうとした。


「ユリ、いつから店始める?」

「え?まだなにも用意がないけど?」

「食材以外は何が足りない?」

「え、周知とか、市場調査(しじょうちょうさ)とかなにもしてないから、何作って良いかわからないわよ?」

「そういうものなのか?」

「うん、いくらくらいが適正価格なのか調べないと何も売れないからね」

「物価は☆をそのまま円にした感じで大丈夫だぞ」

「じゃあ、 500☆ランチとか売れるかしら?」

「ユリが作るものなら確実に売れるよ!」



「とりあえず、冷蔵庫の中のお肉、使っちゃわないとね。良いお肉っぽいし、悪くしたらもったいないお化けが出ちゃうわ!」

「そうだな、近所の住民に振る舞うか?」

「良いの?」

「良いも何も、ユリのだぞ?」

「用意したのはソウよ?」

「まあ、家賃だと思ってくれ」

「家賃高すぎない!?」

「あはははは」


「何人分くらい用意すれば良いかしら?」

「あー聞いておくよ」


「出しちゃダメなものとかある?」

「この国の設備で作れるものなら新しいものでも大丈夫だが、うちはそうだな、冷たい料理は避けてくれれば良いかな」

「わかったわ!あと、お菓子とかは大丈夫?」

「料理と同じ条件で良いと思うよ」

「はーい」


「ちょっと出てくるから。すぐ戻るけど」

「はーい、行ってらっしゃい」



独り言を呟くユリは料理のことで頭がいっぱいのようで、ソウの方を見ていなかった。


えーと、ビーフシチューとローストビーフと牛カツと、お土産にクッキーとパウンドケーキで良いかしら?

うーん、本当にパンどうしよう。

冷蔵庫にあったワインは振る舞って良いのかしら?


とりあえず料理には持ち込んだワインを使うとして、パン粉有ったかしら?

トマト缶は沢山持ってきたけど、生物(なまもの)と野菜は現地の物って言われたからセロリの葉とパセリの茎がほしいわね・・・。

畑をもう一度見てこようかしら。


ふと気になり顔をあげたユリはソウが出掛けたことにようやく気がついた。


あ!ソウに頼むの忘れてた!


◇ーーメモーー◇


野菜苗

トマト(できればプチトマト)

胡瓜(きゅうり)

パセリ


ハーブ苗

ミント


花苗

矢車菊

ノースポール


樹木

月桂樹(植樹可能なら)

レモン


買い物


果物

オレンジ

レモン


野菜

セロリ

パセリ


パン類

テーブルロール

食パン

パン粉


◇ーーーー◇


メモに書いておけば忘れないわね。


よし、家の畑を見てみよう!


ユリは昨日のままの服を着替え、外へ出た。


畑にパセリは無かったが、にんじんぽい葉があった。


揚げ物にすると美味しいのよねー。

天ぷら食べたいなぁ。

お昼は野菜天作って蕎麦茹でようかしら。

小麦粉と卵はあったし、氷もあるし、作れそうね。

竹輪と青のりは、無いか。残念。

そういえば、魚介類は手に入らないのかしら?


一人ぶつぶつ呟いていると、川向こうにソウがいた。



あ、ユリが畑に、・・・何してんだ?

あの辺はにんじんを植えたんじゃなかったかな?

あ、こっちに気がついた。


「ソウ、おかえりなさい!」

「ただいまー。ユリ、なにしてるのー?」


川向こうから大きな声で聞かれて、大声で答えるほどの事はしていない。

ユリはニコニコと笑って答えずごまかした。


ソウは橋を渡って戻ってくると手に何か持っていた。


「はい、これ。昨日の馬車の中に落ちてたって」

「あ、私の髪留め!」

「で、何してたの?」

「にんじんのはっぱを天ぷらにしたいなって考えてたの」

「ははは、おいしそうだね。是非御相伴に預りたい」

「じゃあ、お昼はお蕎麦で!」

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