不安
「おはようございます。リラちゃんは疲れて寝込んだりしていませんか?」
お迎えに上がりましたと挨拶するマーレイに、ユリは訪ねてみた。
「少しは疲れたようですが、今朝も普通に起きて元気でございます」
リラは元気らしい。
良かった。とユリが微笑み、マーレイも嬉しそうにしていた。
スパークリングワインのシャーベットを食べたのもあって、ユリは心配していたが、全回復の魔法を受けたリラは本当に元気である。
今日はユメがついてくることになった。
ソウは来ないけど、ミートミンサーを16台預かっている。
少し心配だったので、色つきココットを20個ほど持った。
「何作るにゃ?」
「パンプキンプリンよ」
「楽しみにゃ」
預かった荷物を座席においたのでちょっと窮屈になっている。
「荷物いっぱいにゃ」
「そうね。挽き肉を作る器械よ」
「この紙はなんにゃ?」
「ハンバーグのソースのレシピと、アレンジメニューのレシピよ」
「どんなのがあるにゃ?」
「大根おろしとポン酢で食べる和風ハンバーグとか、トマトソースと溶けるチーズをのせたイタリアンハンバーグとかね。本当は、うちで出しているケチャップとソースのも教えたいところだけど、お手軽に手に入らないしね」
「和風、今度作ってにゃ!」
「はい。わかりました ふふふ」
到着し、いつもの挨拶をビクッとしながら受け、ソウがいないことに安堵しているパープル侯爵を確認し、いつものアルストロメリア会が始まる。
「ローズマリーさん、ちょっと良いですか?」
「はい」
「次に料理長さんたちに教えることがあったら助手を連れてきたいんですが、良いですか?」
「構いませんが、料理人の時だけですの?」
「はい。普通の子なので」
「ユリ先生のお好きになさってください・・・あの、もしかして、ライラック様に困らせられ、いえ、お話しされた子供ですの?」
「そうです。さすがローズマリーさん!」
「先週、ホシミ様がいらして侯爵様とお話しされたので、私も質問されましたの。その後いかがですの?」
「ライラックさんですか?」
「ええ」
「うちに2度来て以降は来ていませんよ。まあ、リラちゃん、あー、その子供のところに直接1度行ったみたいですけどね。毎回土曜日です」
「今日辺り、大丈夫ですの?」
「あー、連れてきた方が良かったのかしら・・・」
「ユリ様がご心配であれば御者に迎えに行かせてはいかがですの?」
「御者をしているマーレイさんの娘なんです。そうします」
「サリー、ユリ様の御者に、娘を迎えにいくよう伝えなさい」
「かしこまりました」
「一緒に行ってくるにゃー」
ユメがサリーについて行った。
「ローズマリーさん!どうもありがとうございます。こう言っては失礼かもしれませんが、お母さんみたいで頼りになります!」
「 ユリ様の御母堂様はご健在ですの?」
「両親とも事故で亡くなりました。もうだいぶ昔です」
心からのお悔やみを言われ、思わずユリが涙ぐむと、娘のように我が儘でもなんでも、母と思って言って欲しいと言われた。
周りに良い大人が少なかったユリは、久々に頼れる大人に会った気がした。
ユメはサリーとともに戻ってきた。
「説明したにゃ!すぐに来るにゃ!」
ユメがユリに話している間、サリーはローズマリーに報告していた。
「ご報告いたします。御者の者に伝えましたところ、奥様への最大限の感謝を表し、すぐに娘を連れて戻ると申しておりました。当家の一番早い馬車を貸し出しました」
「そう。ユリ先生の不安が晴れて良かったわ」
「ローズマリーさん!ありがとうございます!」
ユリは改めてお礼を言った。
「さ、では始めましょう。ご紹介いたします。
こちら、レッド公爵夫人 アコナイト様
こちら、ブラウン侯爵令嬢 オレアンダ様
こちら、メローイエロー伯爵令嬢 リコリス様、妹君のナルシス様、
こちら、コーラルピンク子爵令嬢 ダチュラ様」
新たに5人紹介された。
いつものメンバーは、ユリの助手のラベンダー、参加は、ローズマリー、マーガレット、 ローズ、ピアニー、カーネーションだ。
ユリは覚える気がないわけではないが、覚えきれないでいた。
「では、2人組になってください」
既存メンバーが一人ずつ付こうとしたが、新人姉妹が二人で組みたいと主張するので、ローズとピアニーが組むことになった。
移動して実習が始まる。




