回復
イチゴとパイナップルのアイスクリームの売れ行きは順調だった。
最近のランチは皆アイスクリーム付きを注文している。まれに頼まない人も、回りを見て追加で注文する。セットだと冷茶が付くが、別注文には冷茶が付かない。
おやつタイムになっても順調で、おかわりの人が予想より多く、早くに売り切れた。
来店してもアイスクリームが無いとわかると帰る客もいる。
外のイーゼルに、アイスクリーム売り切れました。を表示し、早々に作り始めることにした。
休み明けの抹茶アイスクリームと、紫芋アイスクリームだ。
「抹茶6回、紫芋4回、ココット40、中デッシャー140です。あと、本当に実験で、シャンパンシャーベットを小さいアイス箱で作ろうと思います」
「大きいので作らないにゃ?」
「味に自信がないし、私はあまり食べないし・・・」
「美味しかったら大きいので作るにゃ?」
「そうね。でも店では売れないかもしれません」
「なぜにゃ?」
「高すぎるのよ。材料費が」
シャンパン自体が安くはない。
「売ったらいくらにゃ?」
「いつもの量で、1500☆、いえ、持ち込みだから7500☆かも」
「大丈夫じゃないか?」
ソウが意見した。
「え?そうなの?」
「ユリの店は基本的に安すぎるようだし、貴族連中はもっと高くても出すだろう」
「あー」
そういえば、1万☆払っていく人がいまだに居たんだったわ。とユリは思い出した。
小金貨ではなく、大銀貨10枚を払っていくのだ。小金貨だとユリがお釣りを用意するので、わざわざ大銀貨で払うらしい。
「ま、とりあえず店のアイスクリーム作ろうぜ」
「アングレーズソース できてます」
「アイスクリーム作る準備できてます!」
「完璧にゃ!」
抹茶アイスクリームは順調に出来上がり、つづいて紫芋アイスクリームを作ることになった。
他の粉類を混ぜるアイスクリームと違って、紫芋粉は少量の水で溶いてしまうと大失敗する。粘度か高すぎるのだ。
「少し牛乳足した方が良いかしら?」
「足すにゃ?」
しばらく考え込んだユリが答えを出す。
「いいえ、このまま作ってみましょう」
結果、蒸かし芋をアイスにしたような芋芋しいアイスクリームができた。
好きな人は好きそうだ。
「ユリ様、小さいアイス箱の魔力充填してみたいです!」
リラが申し出るとソウが助言する。
「良いんじゃないか? 5だか10だろ?マーレイでもできるぞ」
「そうなの!?」「そうなんですか!?」
ユリとリラが驚く。
「この国に住んでる者で魔力無しは居ないそうだぞ」
以外と知られていない情報だった。
「リラちゃん、すぐ用意するから待ってね」
「はい。何か手伝いますか?」
「大丈夫よ。イタリアンメレンゲも入れないから」
冷蔵庫に眠っていた貰い物のシャンパンにシロップを加えてアイス箱にかけるだけだ。
「冷えたシロップとシャンパ・・・スパークリングワインを加え、アイス箱で混ぜるだけです」
シャンパンではなく、スパークリングワインだったらしい。
リラがアイス箱に魔力を注ぐ。
「充填しました!混ぜます!」
「お願いします」
リラは軽快にハンドルを回していた。
「軽いです!とても軽いです!」
「やってみるにゃ!」
ユメに変わったが、ユメも軽いと言っていた。
再びリラに代わったが、そのまま最後までリラが回した。特に重いと感じる間もなく出来上がったそうだ。
シャンパンシャーベットはココットに7個できた。
さすがに、リラもユメも主張しなかったので、ソウとマーレイに2つ、女子は1つに ユリが振り分けた。子供ではない、女子なのだ。
予想通り、マーレイが物凄く美味しそうに食べていた。
「とても美味しいです!」
「なんだかシュワシュワします!」
「美味しいにゃ!」
「旨いな」
「あ、思ったほどアルコール臭くないのね」
先に食べ終わったリラの顔が真っ赤だった。
「冷たいのになんだか熱いです」
「え!」「にゃ!」「リラ!」
ソウと、ユメと、マーレイが同時に声をあげた。
「リラちゃん、大丈夫?」
ユリはリラの額をさわる。ふわっとユリがほのかに発光した。
「あれ?なんだか大丈夫になりました」
リラは回復したらしい。
一瞬発光したユリを認識したのはソウとユメだけだった。
ユリは本当に無意識で魔法を使っている。
ソウとユメは頭を抱えたくなった。
ユリが行ったのは「全回復」だ。今は使える者がいないはずの魔法だ。
「ソウ、どうするにゃ?」
「言わない方が・・・良いだろうな・・・」
「そうだにゃ・・・」
このままいくとユリは大聖女か大白魔導師になりそうである。
(※なりません。)