牽制
ユリはあまり休めなかったが、取り置き分が無事引き取られてほっとしていた。
「ユリ、ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
見守っていたソウとマーレイが席をたつ。
「あ、心配してきてくれてありがとね」
「今日は何時から作るの?」
「17:00の予定よ」
「その頃来るよ」
「お願いしまーす」
外の冷茶とお菓子を用意し戻ってきたユリは、残りを数えてみた。
オレンジシャーベットが予約分を除くと、20個しかない。
1回作ろうかしら。
「手伝うにゃ?」
「ありがとう。シャーベット1.6倍を1回作ろうと思うの」
「はい!」
「リラちゃんは昼休憩してないから少し休んでらっしゃい」
「え、ユリ様もお休みしてないのに」
「それはそれよ」
「わかりました。お休みしてきます」
「いってらっしゃい」
イタリアンメレンゲの用意をしていると15:00になった。
◇ーーーーー◇
おすすめおやつ
オレンジシャーベット 500☆
フルーツゼリー 500☆
持ち帰り用おやつ
オレンジシャーベット 500☆(限定58)
◎5分以内に真冬箱に入れてください。
フルーツゼリー 500☆(限定52)
◎20分以内に冬箱に入れてください。
持ち帰り用紙袋 100☆(2~4個対応)
◇ーーーーー◇
「オレンジシャーベットとフルーツゼリーを!」
すぐに15席埋まり、全員同じ注文だった。
ユメが出してくれると言うので、メレンゲ作りを続ける。
メレンゲができたのでオレンジジュースをアイス箱に入れて魔力を充填しハンドルを回す。
「ユリ、お土産用の紙袋どこに有るにゃ?」
「休憩室に有るんだけど・・・」
「未だ足りるにゃ」
「リラちゃんが起きてからで足りそう?」
「今30くらいにゃ」
「なら足りそうね。ユメちゃんありがとう」
「アイスの入れ物はどこに有るにゃ?」
「洗って、冷蔵庫に入れてあるわ。30くらいお願い」
「スプーンと一緒に出しておくにゃ」
「大デッシャーも用意してくれる?」
「わかったにゃ」
ユメが細々動き回る。
「シャーベットできたわ!」
ユリはボールにあけたシャーベットに大デッシャーを突っ込みココットに乗せていった。
「こんな簡単なのがあったにゃ・・・」
「ちょっと時間無いからね。こぼれるから普段はやりたくないのよ」
「にゃるほどにゃー」
二人でスプーンで詰め込み、33個できた。
急いで冷凍し、器具を片付ける。
イタリアンメレンゲに使った器具は、しばらく水に浸けないと固まった飴が落ちない。
「1個食べて良いわよ」
「ありがとにゃ!」
追加注文に応じたり、片付けをしたりしている内にリラが戻ってきた。
「お店、片付けてきます」
指示しなくても動ける人はとても貴重だ。
「紙袋持ってくるにゃ」
「お願いしまーす」
さて、黒蜜とアングレーズソース10回分でも作っておきましょう。
黒蜜を作っているとユメとリラが興味深そうに覗きに来た。
「黒蜜は簡単よ。黒糖を水に溶かして、焦がさないように少し煮詰めるだけよ」
「美味しい匂いがするにゃ」
「ほんとだぁ」
「あとは冷えれば出来上がりよ。熱い内は触っちゃダメよ」
「はーい」
「さわらないにゃ」
「リラ、絵、上手にゃ」
「いつ見たの?」
ユリが不思議に思って質問した。
「紙袋取りに行ったにゃ」
「あ、貰ったノート広げたままだった!」
描いている途中で時間になったらしい。
「良かったら見せてもらえる?」
「はい」
リラはノートを取りに行った。
休憩せず書いていたのだ。
ユリが見せてもらうと、一瞬読めない文字が読めるようになる。
そして、ユメが言った通り、挿し絵がとてもうまかった。
「そうだ、ちょっとお店見ててもらえる?」
「はい」
「わかったにゃ」
ユリは2階へ行き、使っていない新しい色鉛筆と簡易鉛筆削り器を持ってきた。
「これは色鉛筆。この先の色の部分だけが書ける場所で、これは鉛筆削りといって、先を削る道具。これをあげるから絵に色をつけると良いわ」
「凄い!色が色々有る!」
ハッとユリは気がついた。
「あ、これ・・・」
「何にゃ?」
「溶ける色鉛筆だった」
ユメは鉛筆本体が溶ける想像をした。
「溶けるにゃ?」
「水で濡らすと絵の具になるのよ」
「!?」
「筆持ってくるわね」
再び2階にユリは筆を取りに行った。
「これ水筆。ここを開けて水を入れると使えるわ。10分くらいやってみてても良いわよ。はい、要らない紙」
二人は休憩室に絵を描きに行った。
楽しそうで何よりだ。
ユリはお店を見に行き、お客さんと話していた。
「美人が増えたって聞いたんだけど、一人だけ?」
「今ちょっと外していますが、すぐ来ますよ」
実はこれ、どこの貴族勢力が取り入ったのかと調査や牽制だった。
リラとユメを見て、どこの貴族でもないと安心して帰っていたのだ。
ユリはそんなことは知らないので律儀に答えていた。
リラとユメがニコニコとお店に来て片付けを始めた。
それを見た客は一様に安堵した表情をし、お土産を買い、帰っていった。




