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「そういうことだったのか……」

 読み終わった僕の顔からは、笑みが失われていた。

 彼が伝えたかったメッセージを、ばっちり理解したからだ。

   

 その作品のテーマは、アジサイだった。

 ポイントは、土中のミョウバンや鉄分が多くなると花の色が青くなる、ということ。アジサイの色が前年までとは変わったのを根拠に、その下から殺人事件の物的証拠を掘り出す、という物語だった。

「じゃあ俺の庭にも、何か曰く付きのものが埋められているのか?」

 でも、しょせんミステリ小説の話だ。現実に当てはまるかどうかは定かではなく……。

 少しネットで検索してみる。すると、出るわ出るわ、次々と似たような話がヒットした。

 どうやら、アジサイの変色というのは、この手の話では定番パターンらしい。特に、その下に死体が埋まっている、というケースだ。

 死骸から染み出した成分により、土の酸性・アルカリ性に変化が生じて、その影響で花の色も変わる。現実の事例はどうだか知らないが、少なくともミステリ小説マニアの間では、常識的な概念だそうだ。

 ならば、僕の庭にも、そうした恐ろしいものが埋まっているのだろうか……?

 改めてアジサイに視線を向けても、もはや花が僕を歓迎しているようには思えず、僕の顔からは冷や汗が吹き出すのだった。


   


 下見の時の、不動産屋の恐縮したような態度。

 それを改めて思い出す。

 もしかすると、あれは「庭が狭いから」ではなく「実は事故物件だから」ではないだろうか。本当の理由を隠すために、敢えて「庭が狭いから」の方を強調していたのではないだろうか。

 この庭には、前の住人と関係する、何らかの死体が埋まっているのかもしれない。

 一度そんなことを考えてしまうと、もう居ても立ってもいられなかった。

 スコップを手にして、庭へ飛び出して……。

   

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