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神楽  作者: 黒紫
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第7話

第7話


………3日後の朝(8月20日)………

妹 「ねえ、お姉ちゃん。こんなのを作ってみたんだけど・・」

(妹は右手の掌に折鶴を載せている)

女の人「何?ちょっと見せて」

〈姉は折鶴を指で掴もうと手を伸ばすが、途中で引っ込める〉

「おっと、また引っ掛かるところだった・・」

「この折鶴から『貸与』の力を感じるね」

「もう そんな事まで出来るようになったの?」

妹 「うん。昨日、何度も折鶴に『力』を掛けて作ったんだよぉ」

「まだまだ神楽さんには及ばないけど、また一歩前進だよ」


………朝食後………

妹 「もう副作用は無くなったみたいだし、今日から修行再開だね、お姉ちゃん」

女の人「そうだね。2人で出掛けるのは3日振り、かな?」


………ガレージ:車に乗る姉妹………

妹 「また美術館に行くの?」

女の人「ううん。今日は『風』を読んでみようと思うんだぁ」

「ちょっと、気になる事もあるし・・」


………30分後:とある駅の近く:駐車場………

妹 「あれっ、此の間のパン屋で感じた『風』と『気配』がするよ」

女の人「きっと誰かが私達を誘ってるんだね」

「あの時は怖くて確かめられなかったけど、今日は違う」

「私に『道』を見る能力があるのなら、これでいい筈なんだ」


………駅前の通路………

駅の改札がある『通路』を歩いていると、

前方の券売機で、切符を買って慌しく改札を抜ける男性(30歳位)が視界に入る。

券売機の前には駅員が1人立っており、程無く姉妹が駅員の前を通り過ぎようとすると、

駅員は先程の男性が釣銭を取り忘れている事に気付いて、すぐに小銭を回収。

まるで日常の業務をこなすように駅の中へと消えて行った。


妹 「今の何?」

「それに、気配が地下へ移動してるよ」

「追うの?罠かも知れないよ」

女の人「大丈夫。心配無いって」「『虎穴に入らずんば虎児を得ず』ってね」


姉妹はエスカレーターで地下へ。


………地下の通路………

エスカレーターを降りて少し歩くと、

前方に地下鉄の改札があり、近くに椀を持った『托鉢僧』が立っている。

丁度、向こうから来た小母さん(50歳位)が椀に小銭を入れたところで、

托鉢僧に何かを話しだした。

姉妹は そのまま無言で通り過ぎ、通路を右へ曲がる。

すると目の前の空間が広くなり、7メートル先に地上へのエスカレーターが見えた。


妹 「今度は地上に向かってるね」


姉妹はエスカレーターに乗ろうと、平行に並ぶ。

ところが、突然 横から若い男女(20歳位)が割り込んできて、先を越されてしまった。

女性の方を見ると、体が細くて背が高く、黒のショートパンツに薄ピンクのシャツ。

白くて細長い足を披露している。(ストッキング無し)

一方、左側の男性は、ジーンズに黒の帽子と黒のアロハシャツ。

手すりに肘を突いて少し体を崩している。(カッコ良い感じではない)


妹 「・・・」


この時、妹は正面の女性の足に見惚れて一言も喋らない。

男女も無言のまま身動きせず、20秒程で地上に着いた。


………駅前の道路:大きな交差点………

エスカレーターを降りると、男女は右へ。姉妹は左。

前方の信号が変わるまでの間、姉妹は楽しげに雑談を始めた。


妹 「今の人、カモシカさんだったね。私、初めて見たよっ」

女の人「うん、綺麗な足だった」

妹 「私ね・・」

〈姉妹の会話が続く〉


やがて信号が青に変わる。

姉妹は横断歩道を渡り、お洒落な店が並ぶ『通り』へと出た。


妹 「何処まで行くんだろうね」

女の人「分からない。でも、私達にとって重要な何かが起きる気がする」


姉妹は周りの店を見ながら並んで歩く。

すると、脇道から変わった格好の車が現れて、

目の前の横断歩道で停車した。(信号機有り)

よく見ると、スポーツカー風(二人乗り)の車高の低いボディに、

巨大な清涼飲料の缶を『斜め半分に切ったオブジェ』が載っている。(男性2人)


妹 「わあ、この車 凄いね」


妹は車に近付いて、珍しそうに細部まで見入っている。

周りの人達も この車に気付いて、携帯電話で写真や動画を撮り始めた。

あっという間に8人程が車を取り囲み、甲高い喋り声が周りに響く。

(姉は、少し離れた所から その様子を傍観している)

1分後。信号が青に変わり、車は走り去ってしまった。

取り囲んでいた人達も すぐに何処かへ消えてしまう。


女の人「車に戻ろう。気配が遠くなった」

妹 「えっ?」「・・うん」


………姉の車:駐車場………

女の人「ねえ、大丈夫?」「何ともない?」

妹 「どうしたの?」「私は平気、だよ?」

女の人「ならいいけど・・」

「じゃあ出発するね」


姉妹は再び『気配』を追い掛ける。


………25分後………

妹 「あっ、気配が消えちゃったね」

女の人「うん。私達も気配を消そう」

「さっきから ずっと真っ直ぐ進んでいるから、多分この先に何かあるんだよ」

〈3分後。右遠方に大型スーパーが見える〉

「あそこだね」

妹 「どうして分かるの?」

女の人「私の勘だけど・・」


………立体駐車場:姉が車から降りようとドアに手を掛ける………

妹 「待って!お姉ちゃん」

「私、ここでやらないといけない事があるんだっ」

女の人「急にどうしたの?」

(妹は何時もと雰囲気が違っている)

妹 「まず、ここで5分間待機」

「そしたら私が独りで行くから、お姉ちゃんは更に10分間ここを動かないでっ」

女の人「・・分かった」


………沈黙の5分後………

妹は無言で車から降りる。(姉は車の中で待っている)


<1階:食料品売り場>

妹はカゴを持ってパンコーナーに行き、菓子パンを2個入れて、5番のレジへ。

レジは丁度空いたところで、すぐに清算が終わる。


「196円です」


妹は左腰のポーチから財布を取り出す。

(この時、ポーチから『折鶴』が落ちて、カウンターの下へ)

妹は折鶴が落ちた事に気付かないまま、袋を詰める台へ足早に移動。

そして、パンを袋に詰め終わると、近くの『花売り場』へ。


………2分後………

5番のレジに、此の間コンビニで見た、女性と女の子が現れる。

(カゴの8分目まで食品が入っている)

1分程で順番が来ると、女性は前に進み、

女の子は落ちている折鶴に気付いて、左手で拾い上げた。

(女の子は折鶴を顔に近付けて5秒程眺めた後、自分のポケットにしまう)

2分後。女性はカードで精算を済ませると、袋を詰める台へ向かう。

女性は女の子を見る事もなく、買った物を次々と袋に詰め始めた。

(女の子は折鶴をポケットから出して、また眺めている)

30秒後。


「!」


女性の周辺で僅かな『風』が起こった。

女性は不意に何かの気配を感じて手を止め、顔を上げて正面を凝視する。

女性が見つめる先には、

かなりの厚化粧をした婦人(31歳位)が横を向いて立っている。

(女性は まるで硬直したように動かない)


『パンッ』


次の瞬間、女の子が折鶴を両手で叩き、小さな音を立てた。

しかし、周りに『音』は伝わらず、

代わりに女の子を中心とした巨大な『風』が吹き始める。


<妹:花売り場>

「あれっ、私、ここで何してるんだろう・・」(小菊を手にしながら)


<女性と女の子:女性は『風』の影響で我に返り、急いで残りの食品を袋に詰める>

「帰るよ」

(女の子は潰れた折鶴を左手に持っている)


<姉:階段で移動中>

「これって・・」

【取り敢えず、私に出来る事をしないと・・】


………1分後:食料品売り場に着いた姉が、すぐに妹を見付けて声を掛ける………

女の人「何があったのっ!?」

「こんな大きな風、私一人じゃ消せないよぉ」

妹 「今ね、すっごい厚化粧の女の人が・・って、あれっ?」


………3分後………

妹が床に落ちた 潰れた折鶴を見付ける。周りに女性と女の子の姿は見当たらない。


妹 「一体、どういう事なんだろう?」

女の人「神楽さんに連絡したほうが良いよね」


「それには及びませんよ」


姉妹が声のする方を見ると、神楽と男性(助手席の人)が立っていた。



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