第67話
第67話
<海岸付近の3人:妹がポーチから小型のLEDライトを取り出す>
妹 「波の音が聞こえるね」
女の人「そうだね」
妹 「どうして、私達の世界と街並が違うんだろう」
「この先には絵画に描かれている砂浜なんて無いんでしょ」
女の人「『空間』の概念って、三元論では全く違う意味になるんだって」
「例えば、『3次元』の『縦・横・高さ』って本当は独立してないの」
「3を超える要素は『入れ子構造』になるから、3次元以上は必ず歪むんだよ」
「『次元』という概念自体が1つの要素になってしまうからね」
妹 「ふーん」
女の人「それでね、『影の世界に来た時に番号を割り当てられた』って話、したでしょう」
「『世界』が生まれた時、」
「『全領域』に其々異なる番号が割り当てられたんだと思うの」
「それも、途轍も無く大きな数字が」
妹 「じゃあ、『ナンバー1』なんて場所もあるって事?」
「それとも、私達が『人や物』を『名前』で区別してるみたいに『領域』にも・・」
安茂里「『人や物』も『領域』に含まれます」
「『境界』が共有できないのは、境界が『本体』だからです」
「人々の殆どは、自分の『意識』の場所を知りません」
「『領域』は『生き物』であるとは限りませんが、」
「『ナンバー1』は世界の何処かに『生物』として存在しているそうです」
<駅構内:鈴音と篝>
鈴音 「私も何時か、切符を買う日が来るのかしら・・」
篝 「私は、一人では買いたくありません」
鈴音 「篝は この世界、『死者の国』だと思う?」
「それとも『生者の国』?」
篝 「私は『生者の国』だと思います」
鈴音 「あら、私は『死者の国』だと思ってるわよっ」
「『影の世界』は『黄泉の国』、では ないわね」
篝 「はい」
<ライトを点けて砂浜沿いにある 道を歩く3人>
妹 「境界を跨いだ筈なのに時間は変わらないんだね」
女の人「『同調』使う必要が無かったからね」
安茂里「私も『錯交』を使っていません」
妹 「そうなんだ・・」
「お姉ちゃん。『絵画』を見せてくれない?」
女の人「えっ、見るの?」
妹 「えっ?」
〈3人が立ち止まって絵画を確認する〉
「私達がこれから会う霹靂神って、どっちなの?」
「両方の霹靂神が お互いに絵画を交換したんだよねえ」
安茂里「姉様、私達の探索は まだ始まったばかりです」
「霹靂神本人に直接 話を伺ってみませんか?」
………3分後………
女の人「この砂浜は突堤や離岸堤で守られているんだね」
妹 「ねえ、家ってアレじゃない?」
女の人「えっ、何処?」「家なんて、そんなの・・」
安茂里「神楽様、ぶつかります」
女の人「わっ・・」
〈突然現れた金網のフェンスに当たる〉
「・・大丈夫、『絵画』は ちゃんと持ってるから」
波打際から僅か10メートルの所に建てられた一軒家。
外見は住宅街に並んでいる家と大差なく、
海を望む砂の上、閉め切られたカーテンから漏れる明かりに霹靂神と閃緑が映し出された。
(家の先には消波ブロックが見える)
霹靂神「ようこそ、おいで下さいました」
女の人「はい。お互いの世界で、これから訪れる変化に期待します」
〈絵画を霹靂神に渡す〉
妹 「あのう、この世界の『始まり』って どんな風だったんですか?」
「それは自分の『意識』の場所にも関係してるんですか?」
閃緑 「その質問の『答え』は、御影に伝えておきます」
「この場で話す時間は、もう残されていませんから」
安茂里「私、この場所、凄く怖いです」
<六鳥神社の11人>
女の人「帰りましょうか」
鈴音 「そうね。お腹が空いてきたら困るわよね」
妹 「そう言えば、ちっとも お腹が減ってない気がする」
朱雪 「これで、今日の夕飯は2回分食べられますぅ」
<午後4時:駐車場の11人>
女の人「此処って、本当に元の世界なんでしょうか」
「時間は間に合ったけど、少し違和感が・・」
都筑 「たった今、お互いの世界が8ヶ所の点で繋がりました」
神楽 「すぐに慣れると、思いますよ」
鈴音 「そろそろ、帰りのグループを決めて貰えない?」
「戦利品は『影の世界』の情報」
「早速、『取り分』を決めなくちゃね」
〈そこへ〉
醍醐 「皆様、ちょっと宜しいですか?」
千鳥 「油留木様っ、上手く行きましたね」
五百箇「行きました」
<篝のタクシー(走行中):助手席に五百箇、後部座席右から油留木・千鳥>
五百箇「単さん、霹靂神様と ご一緒して緊張してないでしょうか」
千鳥 「幹部候補かぁ、私もドドーンと上に昇ってみたいなぁ」
油留木「そうねぇ、アナタ達3人は才能がある方だから、努力次第ね」
篝 「・・油留木様が褒めるなんて、珍しいですね」
<赤い車(走行中):助手席に都筑、後部座席右から鈴音・風雅・醍醐>
鈴音 「・・そう。それは興味深いわね」
都筑 「神楽様っ、これは年内に実現可能かも知れませんねっ」
神楽 「そうですね。彼女達なら成し遂げるでしょう」
<黒い車(走行中):助手席に御影、後部座席に姉・妹・安茂里>
御影 「この世界に戻る前、姉から兄の言葉を受け取りました」
「『世界の始まり』。それは、『同じモノ』と『違うモノ』」
「始まりは『二通り』」
「『同一』から始まり、『違い』が生まれる」
「『違い』から始まり、『同一』が生まれる」
「一番最初の神、『3』は『違い』の神で、」
「何度世界を遣り直しても必ず一番最初になるのだと」
妹 「それって、ズルなんじゃ・・」
御影 「それが、誰にも その謎が解けないそうです」
「『3』は、三元神の一人と婚姻し、『形』を有する事を許されました」
「我々の『意識』は此処から始まったとされます」
妹 「はい?」
安茂里「『意識』の基は『偶然』。サイコロそのもの」
「『必然』と結び付く事で『意思』になった」
朱雪 「『意思』に関しては、『ストロボ効果』が よく引合いに出されます」
「例えば、鳥や昆虫の羽撃きを観察する場合、」
「規則的に光を当てる事で、あたかも映像フィルムを編集するかのように見えます」
「つまり、『偶然』を掴む特別な『光』を当てるんです」
安茂里「『1と3』は『偶然と必然』」
「我々『2』は、『1』と『3』を繋ぎ、」
「『偶然』と『必然』を足して『意思』を持った」
女の人「すると、もし世界が『同一』から始まっていたら、」
「今とは違う全く別の世界になっていたんですね」
妹 「それで、『3』の奥さんって どんな神様なの?」
朱雪 「『無』そのもの、だと言われています」
「『有』を『無』に変える事も、」
「『無』から『有』を生み出す事も出来るそうです」
妹 「ふーん」
………5分後………
妹 「ねえねえ、お姉ちゃん」
女の人「なあに?」
妹 「どうしたら、人は『幸せ』になれるの?」
女の人「実はぁ、『幸せ』の素は『存在』そのもので、」
「自分の存在を『消費』した瞬間に幸せを感じるんだよ?」
妹 「えっ、そうなの?」
女の人「でも、みんなが幸せを願うから、段々世界の重さが軽くなって、」
「もうかなり『幸せ』が薄くなってるんだって」
妹 「へえ、そうだったんだぁ」
<5章完>




