第66話
第66話
<六鳥神社の境内:姉妹等3人が狛犬の所まで進むと6人が集まって来る>
女の人「『四鳥神社』で お賽銭を入れてきました」
「これで、海岸へ繋がる『境界』を通れると思います」
鈴音 「場所の目星は付いてるの?」
「我々の世界には存在しない砂浜よね」
風雅 「少し前、醍醐様が お見えになった」
「この近くに『駅』があるそうだ」
妹 「お姉ちゃん。どうするの?」
<夜の道(2車線で片側だけに街路樹)を歩く3人>
妹 「なんで こうなっちゃう訳ぇ?」
安茂里「神楽様の判断は正しいと思います」
風雅 「まぁ、この領域からは出ないからな」
<六鳥神社の6人>
女の人「残り時間は あと2時間と少しですね」
鈴音 「移動出来る境界は4つが限度って所かしら」
油留木「私、『一鳥神社』前の商店街が気になるのよね」
朱雪 「私は『八鳥神社』の隣の神社が気になりますぅ」
都筑 「私は、『二鳥神社』で風雅さんが拠点にするのを反対した事が気になります」
神楽 「私は特に気になる所はありませんよ」
鈴音 「私も無いわね」
女の人「神楽さん、神様が避ける数字とか有ったりするんですか?」
神楽 「そうですねえ。名前とは別に『数字』で呼ばれる神は何人か居ますよ」
「三元神の中で『形』を有しない神を『3』と呼んだりするそうです」
「他には、『1』は『0』に通じるとして、」
「『1』を取らない『取決め』があるとも聞きます」
「参考になりましたか?」
<蛍光灯の明かりが点いた駅に入る3人>
妹 「誰も居ないね」
安茂里「姉様、切符を買ってみませんか?」
妹 「そうだね」
〈3人が券売機(4台ある)の前へ移動〉
「案外、これが何かのスイッチだったりして・・」
〈財布から取り出した10円玉を1枚入れる〉
「あれっ?」
(10円玉がそのまま出てくる)
風雅 「買えないようだな」
妹 「風雅さん、私 商店街で改札機を見付けて、真夜中のホームに出たの」
「無人の電車が反対側のホームを通過して乗れなかったんだけど、」
「もし、乗る事が出来てたら何処へ行ったのかなって」
「やっぱり『死者の国』とか・・」
風雅 「この世界を『死者の国』だと思う者は『生者の国』へ」
「この世界を『生者の国』だと思う者は『狭間の国』へ」
「皆、自分の世界の事を知らないものだ」
妹 「その『狭間の国』って何ですか?」
「『狭間の国』は『死者の国』へ通じてるの?」
風雅 「『狭間の国』に列車は来ない。『狭間の国』とは そういう所だ」
妹 「うーん、良く分からないけど、」
「もしかして、風雅さんと安茂里なら切符が買えるんじゃ・・」
風雅 「恐らく、何方かが切符を買えるだろうな」
安茂里「私、まだ死にたくありません」
「私、今の言葉で、私には姉様と違って保護が無いのだと分かりました」
妹 「・・・」
「『六鳥神社』に戻ろう」
「安茂里。ごめんね」「私、安茂里に頼り過ぎてたよ」
<タクシー(走行中)>
朱雪 「やっぱり、力が戻ると落ち着きますぅ」
鈴音 「嫌だわぁ、私、『当たり』だったなんて・・」
女の人「これで、あと少しですね」
………駅前付近:3人の横にタクシーが止まる………
妹 「お姉ぇちゃん・・?」
〈鈴音側のドアが開き、鈴音から順に降りてくる〉
御影 「『絵画』を預けます。兄に渡して下さい」
女の人「はい」
(篝と御影を乗せたタクシーが走り去り、姿が消える)
朱雪 「今日は風雅様と沢山お話が出来そうですぅ」
風雅 「そうだな、神威との会談も悪くない」
朱雪 「ええっ、違いますぅ」
………駅構内の6人………
妹 「お姉ちゃん、説明してっ!」
女の人「神楽さんに重要なヒントを貰ったんだぁ」
〈姉が風雅の方を向く〉
「風雅さん。『二鳥神社』を拠点にするの、反対したんですよね?」
風雅 「そうだ。何故か、拠点を築くのには違和感を覚えた」
女の人「実は私達、『影の世界』に来た時に其々違う番号を割り当てられたの」
妹 「番号って?」
女の人「私達11人で、『0』から『9』まで一つずつだよ」
妹 「それ、一つ足りないじゃない」
女の人「安茂里は神様を当てられる」
「だから、安茂里には数字じゃないモノが割り当てられた」
風雅 「すると私は『2』か・・」
女の人「『四鳥神社』に行けたのは、3人で『4』になったから」
「この理由、何だと思う?」
妹 「足し算だったら『1と3』『0と4』でしか出来ないよね」
鈴音 「安茂里は、貴女達姉妹を繋いだのよっ」
「『演算子』って聞いた事ない?」
妹 「・・うーん、それなら『四則演算』や『平均』とかの何にでもなれるの?」
女の人「それで、境界を跨ぐ事が出来るのは6グループだったよね」
「仮に『二鳥神社』を出発点にして風雅さん一人を残したら、」
「6グループ8人で残りの神社の数字を全て一致させる事が出来る」
「7ヶ所の神社を廻って、何かを感じ取ったのは風雅さんと私だけ」
妹 「という事は、お姉ちゃんが『8』で、安茂里が『平均』なら私が『0』」
風雅 「御影は『6』だな」
朱雪 「私は『3』ですね」
安茂里「私は姉様と油留木様と一緒になるしかなく、『加法か減法』で油留木様は『7』」
女の人「神楽さんと都筑さんは『1か5』になるんだけどぉ・・」
鈴音 「私と篝が『4か9』で余っちゃうって訳」
(構内に御影と篝が入ってくる)
篝 「鈴音様」
鈴音 「ええ。分かってるわよ。私と篝は、この駅から出ちゃいけないのよねっ」
御影 「皆さん。我々の世界でも上手く事が運んでいます」
「もう少しで作戦は成功です」
朱雪 「それでは、我々3人で駅の外を見張りますぅ」
風雅 「御影。この世界の我々は、やっぱり同じだった?」
御影 「はい」
<六鳥神社の3人:狛犬の前に油留木>
油留木「更に暇だわぁ、私に出番がないのって、許されないわよっ」
〈そこへ〉
神楽 「油留木さん。彼女の話、どう思いました?」
油留木「『答え』の1つだと思います」
「案外、『問答好き』の神様が出した試験なのかも知れません」
「今回の作戦が成功すれば、」
「彼女の考えが『正しい事』になって、」
「各個人が対応する神社から『影の世界』へ自由に行き来できる筈です」
「神々の中には、『遡及』を司る神が居ると聞いています」
都筑 「油留木さん、お詳しいんですねっ」
油留木「はい。困った時の魔法少女 で・す・か・らっ」
<夜道を歩く3人:踏み切りを渡り、海岸方面へ>
妹 「ねえ、番号が分かったのなら、どうして神社に行かなかったの?」
女の人「時間的に無理だったから、醍醐さんが『助け舟』を出してくれたんだよ」
「もしも すぐに『答え』が分かっていたら、私達が神社を回って、」
「鈴音さんと篝さんが霹靂神本人に絵画を渡せば良かったの」
「多分、『四鳥神社』に行く必要も無かったんだと思う」
安茂里「私、余計な事をしたのかも知れません」
「元来、神様は探すものではないのですから」
妹 「私は、安茂里と探せて楽しかったよっ」
「きっと『私達が探し当てた神様にしか幸せにできない誰か』が居るんだよっ」