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神楽  作者: 黒紫
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第46話

第46話


女の人「えーと。今回の協定で三者の勢力は同じ位になるんですよねえ」

鈴音 「神代は再編成による人員削減、霹靂神は資産とメンバーの増強、」

「神楽は横の繋がりの強化、かしらね」

「本来、神代が獲得する筈だった能力者や貴重品の多くが、」

「神楽と霹靂神へ流れたのだから当然でしょう」

女の人「鈴音さんは、オークションには積極的なんですか?」

鈴音 「人によっては、自分が集めた物の数に比例して入札額が上がる場合もあるわね」

「後々厄介だから、そんな相手には早めに仕掛けてるけど」

妹 「それって、その人にとっては、」

「物を集める事が『ある物』の消費を抑える役割を果たすからですよね」

鈴音 「そうとも言えるわね」

「・・でも、私には物を収集する趣味は無いわよっ」

「私はね、」

「『物』にも『命』が有って、私達とは異なる時間で生きてるって思ってるの」

「だから、自分と『物』とのサイクルが同じになれば、」

「何かの拍子に『物』が助けてくれるし、逆の場合だと、」

「『物』が人を操って、物自身の幸せの為に私達が使われてしまうのよ」

女の人「鈴音さんって、やっぱり面白いですね」

安茂里「あの、鈴音様は、『依存症』に付いて どのようにお考えですか?」

女の人「その話、私にも聞かせて貰えますか?」

鈴音 「そうね。こんな例えはどう?」

「幼児が積み木を積んで、壊す遊びをするの、見た事ない?」

女の人「それ、条件次第では延々と続けますよね」

鈴音 「我々はこれを、人の『励起循環(れいきじゅんかん)』と呼んでいるわ」

「特に、自身の疲弊に繋がる物を『依存症』、」

「自分の『流れ』に収まる物を『嗜好』として区別しているわね」

「一般的には、覚醒剤・麻薬・煙草・ギャンブル等が前者」

「『好物』や『お酒』、趣味等は後者とされ、」

「個人の特性で若干分類が変わると考えられているわよ」

女の人「つまり、その人にとって『単位未満』がどうかで変わるって事ですか?」

鈴音 「ええ、そうよ」

「人は『流れ』が無いと生きて行けないから、」

「自身の安全装置が働いても無視してしまうのよ」


………1時間後:道路沿いに田畑が見え始める………

女の人「脇道に入ったほうが良くありません?」

鈴音 「あら、貴女もそう思う?」


脇道(乗用車がすれ違うのがやっとの幅)を暫く進むと、見通しの悪い三叉路に出る。

左の方向を見ると、レッカー車と乗用車(クリーム色で半円型のボディ)が止まっており、

運転手と思われる女性(35歳位)が車の後部を開け、荷物を整理していた。


安茂里「鈴音様と神楽様は、事前に お分かりになるのですか?」

鈴音 「そうね」

女の人「何となくですけど」


スポーツカーはそのまま通り過ぎ、再び広い道路へ出る。

5分後。


女の人「そろそろですね」

鈴音 「ええ」

(前方に十字路(信号機有)があり、左右には小さな田んぼと畑が点在している)

妹 「あっ、あそこ」


左側の道路を見ると、ワゴン車(紺色)が交差点付近の脇に止まっていた。

ワゴン車は標識(速度制限)を40度に曲げ、

運転手の男性(32歳位)が車の後方で携帯電話を掛けている。


女の人「東京へ戻りましょうか」

鈴音 「そうね」

〈スポーツカーは左折してワゴンの隣を抜け、程無く幹線道路へ〉

安茂里「私・・」

女の人「安茂里さん少し時間が掛かりそうですね」

「私、暫く鈴音さんと安茂里さんに付き合いますよ」

妹 「私も」

鈴音 「そう、助かるわ」


………12時前………

とある回転寿司店(皿の色で値段が変わる店)のテーブル席に座る4人。

(鈴音の隣に安茂里が座り、姉妹と向かい合う)


妹 「私の要望で来ちゃったけど、安茂里さんはこれで良かったの?」

安茂里「私、嫌いじゃありません」

女の人「安茂里さんは回転寿司には良く行くんですか?」

安茂里「母親と何回か行った事がありますけど、」

「何時も必ず お皿がレーンに詰まって落ちたり、」

「機器に不具合が出たりする訳ではないんです」

妹 【・・ああ、これ重症だわ・・】


………12時30分:赤いスポーツカー(走行中)………

女の人「一先(ひとま)ず、安茂里さんの話は置いといて、今後の話でもしませんか?」

鈴音 「そうしましょうか」

妹 「やっぱり、時間が経てば、また三者で争うようになるの?」

鈴音 「前にも話したように、三者の関係は常に利がある訳じゃないのよっ」

女の人「私思うんですけど、」

「最近、情報機器の発達で『ある物』が足りなくなってきてますよね」

「まるで、人が『物』に使われているみたい」

「神代では、この件について、どう考えているんですか?」

鈴音 「我々は、人の(ぎょう)を妨げるつもりはないわよ」

「いずれ、端末に触れるだけで、」

「麻薬以上の中毒を起こすソフトウェアも開発されるでしょうね」

「だから我々は、人に『ある物』の無駄遣いをさせて、」

「『見える者』と『見えざる者』とに分けているのよっ」

妹 「そんな・・私はイヤ。私、この関係を変えてみたい」

鈴音 「あら、どうするつもり?」

「新たなルールを作って三者を纏めるの?」

「それとも、巨大な風を起こして、無理矢理変えるのかしら」

妹 「それは・・」

鈴音 「貴女のやろうとしている事は、神代様の行いと全く同じじゃありません?」

妹 「えっ?、そう・・だった・の?」

女の人「人には、『(ゼロ)』や『(無限大)』を排除する『力』なんて無いんですよね」

鈴音 「そう。危険な事も、割に合わない事も、」

「更には『(いたち)ごっこ』でさえ、1つの安定した形なのよ」

「だから、我々はルールを決めて行動しているの」

妹 「鈴音さん、それは何ですか?」

鈴音 「それは、『単位』と『単位』を繋ぐ『階段』を作る事よ」

「例え『世界の果て』に落ちたとしても、」

「『見る事』『知る事』を諦めさえしなければ必ず『階段』を見付けられるように」

「尤も、これは()(まで) 理想論だけど」

女の人「なるほど、神代・神楽・霹靂神の三者で三点を抑えるようになってたんですね」

鈴音 「そうよ。でないと2000年も続かないでしょう?」

妹 「じゃあ、霹靂神にも、神楽や神代に対抗できるルールがあるんですよね?」

鈴音 「気になるのなら、貴女が直接 霹靂神本人に聞いたらどうかしら」

妹 「うー」

女の人「安茂里さん、退屈じゃないですか?」

安茂里「いえ、こういった話のほうが落ち着きます」

鈴音 「ふふふ。安茂里は野心家ね」

安茂里「・・・」


………次の日(日曜日)………

朝。洗面所から出る姉と、3メートル離れた所にいるパジャマ姿の妹。

妹を見ると、右手首に腕輪のような光の帯が見える。


妹 「お姉ちゃん、おはよう」

女の人「おはよう。その腕、どうしたの?」

妹 「私、みんなよりも力を溜める時間が長いから、腕輪状にしてストックしてるの」

「『隠』を使うと完璧なんだけど、すぐ疲れちゃうから練習中なんだぁ」

女の人「ふーん。新しく妹が出来て、すっかり お姉ちゃん気分だね」

妹 「だって、鈴音さんにあんな事言われたら、負けられないでしょ?」

女の人「ふふっ、そうだね」


………午前9時20分:家の前に赤いスポーツカーが止まる(鈴音と安茂里)………

姉妹 「おはようございます」

鈴音 「おはよう」

安茂里「神楽様、姉様、おはようございます」

〈姉妹が後部座席に乗り込む:右から姉・妹・安茂里〉

鈴音 「今日は・・」

妹 「美術館に行くんでしょ?」「鈴音さんが何も言わなくても分かるもん」



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