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神楽  作者: 黒紫
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第35話

第35話


………地下駐車場:赤いスポーツカーの隣に姉の車:姉妹が車のドアを開ける………

鈴音 「ちょっといいかしら?」

女の人「何ですか?」

鈴音 「もし宜しければ、私を貴女のお母様に紹介して頂けませんか?」

女の人「えっ?」「はい。いいですよ」

妹 「鈴音さん、急にどうしたの?」

鈴音 「ふふふ。詳しい事は、その席でお話します」


………姉の車(帰宅途中)鈴音は姉の後ろの席………

妹 「・・角星さん達、試験に立ち会わなかったね」

女の人「無効化の準備で忙しいからじゃないの?」

妹 「だよね・・」

「ところでさあ、角星さんと都筑さんの能力って何だろうね」

「幹部なんだから、きっと特殊な能力だと思うんだ」

鈴音 「あら、知らないの?」

「角星さんは『属性変更』が得意で、通常攻撃程度ならまず効かないわね」

「都筑さんのほうは、能力の増強や軽減、所謂サポート役ね」

「貴女の特殊能力だって増やせるわよ?」

妹 「そうなんだ・・」「って、鈴音さん何で知ってるんですかっ!?」

鈴音 「敵の情報くらい知っていて当然でしょ?」

「例え霹靂神が神代のメンバー全員のアルゴリズムを解析していたとしても、」

「対策はあるんですよっ」

「もしかして貴女、お互いが『最善手』ばかり出していると思ってません?」

「『流れ』というものは、『無駄』と呼ばれているモノの中にあるんですよっ」


………玄関:姉が戸を開けると、目の前に母親が立っている………

姉妹 「お母さん、ただいま」

母親 「お帰りなさい」

「ようこそいらっしゃいました」(母親は鈴音の方に体を向ける)

鈴音 「お邪魔します」

母親 「お茶が冷めないうちに、どうぞ此方へ」


………客間………

テーブルの上には既にトレー(コーヒー・紅茶・カフェオレ×2・茶菓子)が置いてあり、

鈴音は勧められるまま上座に座る。

続いて、テーブルの反対側に母親・姉・妹が順番に座った。


鈴音 「初めまして。私は鈴音と言います」

母親 「初めまして。何時も娘がお世話になっております」

鈴音 「いいえ、此方こそ」

〈妹が全員にお茶を配る〉

「早速ですが、『パリティ・フィールド』、」

「いえ、『偶奇床(ぐうきしょう)』という技をご存知ですよね?」

母親 「ええ。私が考えた技ですから」

妹 「えっ、どういう事!?」

鈴音 「私の恩師である神代様は、類稀な才能の持ち主で、」

「15歳を迎える頃には既に先代様と互角に渡り合えたそうです」

「しかし、」

「神代様が15歳の誕生日を迎えた日、ある能力者に戦いを挑まれ、敗れました」

妹 「それが お母さんの『パリティ・フィールド』だったの?」

鈴音 「ええ」

「後にも先にも、神代様が敗れたのはその一度だけ。余程悔しかったんでしょうね」

「神代様は就任後、その能力者を探したそうですが、結局見付かりませんでした」

姉妹 「・・・」

鈴音 「私の話は以上です」

母親 「そうですか。娘を宜しくお願いします」

鈴音 「はい。約束ですから」


………玄関:鈴音を見送る姉妹………

女の人「本当に送らなくて良いんですか?」

鈴音 「ええ。この方が都合が良いんです」

〈鈴音は少し笑顔を見せる〉

「では、さようなら」

女の人「さようなら」

妹 「鈴音さん、またね」

〈4分後。鈴音が幹線道路へ出ると、目の前に黒色のタクシー(個人)が止まった〉

女性 「鈴音様、どうぞお乗り下さい」(22歳位で髪の長い女性)

鈴音 「あら、気が利くわね」


………タクシー………

鈴音は座席の中央に座る。運転席と助手席の間には小型の液晶テレビが付けられていて、

とある女性演歌歌手のコンサートの様子が映し出されていた。


鈴音 「神楽の本部までお願いね」

女性 「畏まりました」

〈2分後〉

鈴音 「そろそろ用件を聞きましょうか」

女性 「はい。『油留木(ゆるぎ)』様は鈴音様と手を組みたいと申しております」

鈴音 「あら、そう」

「ふふふ。いいわよ」「後で此方から連絡すると伝えておいて」


………次の日(月曜日)………

午後4時過ぎ。神楽の本部。

駐車場に鈴音と制服姿の妹(助手席)が乗ったスポーツカーが入ってくる。


鈴音 「先に応接室に行っててもらえる?」「私は神楽様に会ってから行くから」

妹 「はい」

〈妹が車から降りると、姉の車と黒い車が駐車場に入ってくる〉

鈴音 「皆さん お揃いね」


………応接室:妹が扉を開けて中に入る………

「あれっ?、・・男の人?」


妹は、テーブルの横で立ったまま此方を見つめる油留木に歩いて近付く。

すると突然、油留木は一歩前に踏み込むと、右手で妹の頬を(つね)りながら、


「私の何処が男に見えるって言うのっ!?」

(外見は15歳位で髪は長め、髪に小さなリボンを付けている)

妹 「ご、ごめんにゃさゃい」

〈油留木は手を放す〉

油留木「アナタ、私より格下でしょ。早く鈴音様を呼んできて頂戴!」

妹 【・・さっきは男の人に見えたのに、何でだろう・・】

〈そこへ〉

女の人「あっ、可愛い子ね」

油留木「初めまして」「私、油留木と申します。私、こう見えても17歳なんですよっ」

〈続いて〉

御影 「ご友人・・ですか?」

朱雪 「可愛いですぅ」

風雅 「・・油留木!、何の用だ」

油留木「鈴音様が此処で待つようにって、仰ったのっ」「アナタには関係ないでしょ」

「・・ところで、鈴音様に勝ったのって、貴女ですよね?」

〈油留木は姉の方を見る〉

「どんな王子様かと期待してたけど、思ってたのと少し違うかな・・」

女の人「・・・」(一同顔を見合わせる)

神楽 「可愛いお客さんですね」

鈴音 「ええ。自分の『幻覚』を見破れない人は格下になっちゃうみたいですけど」

〈油留木は鈴音の前まで早足で歩き〉

油留木「鈴音様、お会いできて光栄です」

「鈴音様となら『WIN-WIN』の関係を築けそうです」

妹 「ああ、また変な人が増えちゃったよ・・」

油留木「格下は黙って!」

鈴音 「知らないの?」「私に勝った王子様って、この子よ」

油留木「・・・」

女の人「えーと、さっき『WIN-WIN』って言ってましたよね」

「それに油留木さんって、神代のメンバーでしょ?」

鈴音 「神代は近年、勢力が急拡大したせいで、メンバーが取り分で揉めてるんです」

油留木「私みたいな新入りは実力があっても認められないの」

「だから、鈴音様と組む事にしたんです」

妹 「そんな話、信じろって言うの?」

女の人「でも、話の筋は通ってるんじゃない?」

「『コロニー』」

「つまり生物が作る集団は特定の大きさで安定するようになっていて、」

「大きくなる程 敵に襲われ難くなるといった利点がある反面、」

「『いざこざ』が絶えないようになる」

「生き物の中には、」

「バッタみたいに形が変わるのもあるけど、何処までも大きくなれる訳じゃない」

「人間が例外的な規模になれたのは、『相変異(そうへんい)』によって、」

「『言葉』を獲得したからだと考える人も居るくらいだしね」

油留木「でもそれは、貴女が納得する答えであって、」

「正しいとは限らないんじゃありません?」

女の人「ふふっ、そうですね」

「これが、油留木さんの力なんですよね?」

鈴音 「ええ。頼もしいでしょ」

妹 「何言ってるか、全然分かんない・・」

「ねえ神楽さん、私にも分かるように説明してくれませんか?」



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