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神楽  作者: 黒紫
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第33話

第33話


ビルの屋上に鈴音が独り。右手の掌の上に光玉ソフトボールを浮かべている。


「神代様・・、お別れです」


光玉はゆっくりと上昇すると、

西に向かって次第に速度を速めながら飛んで行く。(時速200キロ)


<別の時間:神代の御前>

神代の前に女(24歳位で髪は短め)が現れる。

右手の掌に光玉ソフトボールを浮かべ、少し慌てた様子。


女 「神代様、鈴音から退身の申し出がありました。如何なさいますか?」

神代 「()い」

「鈴音には手を焼いておったところじゃ、居場所なぞ何処にも無いであろう」

女 「承知致しました」「それから、これを神代様にと」

〈神代が右手の掌を上に向けると、女が持っている光玉が一瞬で掌へ移動する〉

「鈴音は、『ターゲットは未熟。熟れるまで待つように』と申しておりました」

神代 「これがそうかっ。鈴音にしては、良い土産じゃのう」


神代は光玉を自分の胸に入れると、穏やかで満足した表情になった。


………午後4時過ぎ:とあるコンビニの前:赤いスポーツカーの横に軽自動車………

鈴音 「あら、こんな所に呼び出して、何の御用?」(鈴音は普段の服装)

女性 「私はアンタの部下になったばかりに不幸になった」

「娘の能力だって、何時戻るかも分からない」

「全部、アンタのせいだ」

鈴音 「ふふふ。あなたは理由が知りたいの?」「お望みなら教えてあげましょうか?」

「でも、その対価は安くはないですよ」

「あなたの生涯収入くらいじゃ、全然足りないからっ」

女性 「アンタは何時だってそう。この恨みは・・」

鈴音 「!」

「何なら、私の力を今此処で使っても良くってよ?」

女性 「・・・」


鈴音の雰囲気が急に変わり、女性は思わず息を呑む。


………次の日(日曜日)午前10時過ぎ:神楽の本部:応接室で会議中の8人………

妹 「あっ、来た」

〈扉がノックされ、誰かが入ってくる〉

鈴音 「失礼します」

風雅 「お嬢ちゃん、ホントに連れてきたよ」

〈鈴音が神楽の隣まで歩いて行く〉

神楽 「皆さんに紹介します。此方が新しい神楽のメンバー・・」

鈴音 「鈴音です」「皆さん、私の能力はご存知ですよね?」

都筑 「何だか、万事解決しそうにない展開ですね」

妹 「鈴音さん、これからは神楽のメンバーとして、沢山の人達を助けようよ」

鈴音 「人を助ける?」「貴女、また勘違いしてますね」

「助けるというのは、」

「『無』から『有』を生み出すのと同じくらい難しいんですよっ」

妹 「そんなぁ・・」

女の人「私、鈴音さんと同じ考えです」

「だから、鈴音さんが神楽のメンバーでも構わないと思います」

御影 「私も、そう思います」

角星 「異論は無い」

都筑 「皆さんがそう仰るのなら・・」

朱雪 「はうぅ、また『様付(さまづ)け』が必要な(かた)が増えましたぁ」

鈴音 「最初に断っておきますけど、私、『大飯喰らい』なんです」

妹 「そうなの?」

女の人「それって、鈴音さんが欲しがってる物は形があるとは限らないって事ですよね?」

鈴音 「はい。でないと私、自分で『風』を起こしてしまうかも知れません」

妹 「えっ、まさか、2ヶ月前の事件って・・」

女の人「そうそう。あの時は角星さんも一緒だったね」

「でも、『風』を消した時の反動は無かった気がするよ」

鈴音 「ええ。勝手な事をすると後で神代様がうるさいから、調整が大変なんです」

風雅 「おいおい、全然大丈夫じゃないだろっ」

神楽 「お二人さん、鈴音さんの事、お願いしますね」

姉妹 「はい。神楽さん」

鈴音 「ふふふ。冗談ですよっ」

都筑 「今のお話、何処から何処までが冗談なのでしょうか・・」(小声で)

妹 「ところで鈴音さん。鈴音さんの目利きで神代から美術品を守ってくれませんか?」

角星 「私からもお願いする」

鈴音 「仕方ないですね」

「今のところ、貴重なコレクションを手放したコレクターはいないみたいですが、」

「『蹉跌の風』の影響は次第に顕著になり、」

「やがて人が持つ価値観を狂わせるでしょうね」

女の人「目に見えないモノに対して、幾ら払うべきなのか分からなくなるって事ですか?」

鈴音 「ええ。対価は物質だけで支払われる訳ではないですから、」

「極端な話、当事者の思い込みだけで全財産を失う場合も起こり得ますよ」

妹 「そんな事って・・」

神楽 「この世界では、目に映る物が全てではありません」

「人の多くは、自分で捉えられないモノを別の物に置き換えて考えようとします」

「しかし、そこに大きな誤差が生じるのだとすれば、一体どうなると思いますか?」

妹 「私達が良い行いをしても、正当に評価されないって事ですか?」

神楽 「少し違います」

「ただ、善意が善意として伝わらないだけでなく、」

「『見える者』と『見えざる者』との間で格差が生まれるのは確かです」

「これから我々がすべき事は尽きないでしょう」

風雅 「お嬢ちゃん、もしかして、善意を自分の基準で価値化してない?」

「今はいいかも知れないけど、このままだと何時か潰れるよ」

妹 「ぶー」

鈴音 「そうですね」

「貴女は、『才能』や『能力』が何処から来るのか知らないみたいだから」

妹 「ええっ、鈴音さんまで・・」

鈴音 「良く聞いてね」

「今のままだと、貴女は、自分で自分を壊すようになる」

「貴女はまだ、それを知らないから」

妹 「・・・」

鈴音 「ふふふ。でも、まだ間に合いそう」

「貴女も この子に手を貸しているの?」(鈴音は御影の方を見る)

御影 「はい」「いけませんか?」


………12時過ぎ………

食堂の一角で9人がテーブルに着く。

(長方形で左右に4人ずつ、上下に1人ずつの10人掛け)

神楽が正面(一番上)に座り、

左側に姉・妹・鈴音・風雅、右側に角星・都筑・御影・朱雪の順で座る。


神楽 「それでは・・」

〈神楽が手を合わせる。すると、鈴音以外の全員が手を合わせて〉

8人 「頂きます」


全員が食事を始める。

神楽と姉と妹は、カレーライスとサラダのセット。

他のメンバーはオムライスとコーンスープのセット。(朱雪は両方)

その他 一品物として、

神楽はエビフライ、妹はクリームコロッケ、風雅は唐揚げを注文している。


妹 「鈴音さん、ここの食事はどうですか?」

鈴音 「まあまあ かな?、今までに食べた事のない味がしますけど・・」

朱雪 「私は沢山食べられて幸せですぅ」

「御影様にお仕えして神楽に移籍した時はどうなることかと思いましたけど、」

「霹靂神様と協定を結び、」

「こうして風雅様とも御一緒できるなんて、とても素晴らしいですぅ」

風雅 「はいはい。そうだね」

妹 「鈴音さん、一緒に神代を倒しましょう」

「鈴音さんが居れば、きっと上手く行く。そんな気がするんです」

鈴音 「貴女の勘違いも、ここまで来ると脱帽しますね」

「『物』や『考え』を壊したり、」

「変えたりするのには大変な労力が必要なんですよっ」

「場合によっては、1から作り直すのと同じくらいに」

「『築く』というのは、そういう事だと思いません?」

妹 「・・・」

女の人「単に神代を倒すだけだと、却って混乱させてしまいますよね」

「それが『正しい』と言う事と、それが『正しい』とする事とでは全く話が違う」

「『自分が正しい』と言いたいだけの子供なんて要らない」

「先の話をするというのは、そういう事だと思います」

鈴音 「ふふふ。神楽は後継者に恵まれましたね」

神楽 「はい。お蔭様で」


………昼食後………

神楽 「それでは、妹さんの試験を始めましょうか」

妹 「はい」

神楽 「皆さんも立ち会いますか?」


<2章完>



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