第21話
第21話
………1時間後………
美術館の近くにある喫茶店。奥の席で会話を楽しんでいる2人。
(妹の前にはアイスコーヒー、鈴音の前にはカフェオレが置かれている)
妹 「ねえ、鈴音さん」
「さっき美術館で『絵に魂が込められてる』って言ってましたよね?」
鈴音 「ええ。私、子供の頃からそういうのが分かるんです」
「魂はどんな物にも少しずつあって、」
「色んな物と引き合って、その力で この世界に留まろうとしている」
「私達人間がこんなに発展できたのは、」
「他の生き物よりも大きな魂を持つようになったから」
「魂って、『幸せ』だと減っちゃうんですよっ」
「ふふふ。私、変な事言ってます?」
妹 「ううん。鈴音さんって、世界をそんな風に見てるんだなぁって」
「私のお姉ちゃんも、いつも変な事ばっかり言ってるから、全然変じゃないです」
鈴音 「そう、お姉さんと仲が良いんですね」「今日はあなた独りなんですか?」
妹 「・・・」
「実は私、ちょっと上手く行かない事があって、それで・・」
鈴音 「ねえ、『問題と答えの関係』って知ってます?」
妹 「えっ?」
鈴音 「『答え』を探しているのに見付からない」
「それが自分の中にあるのか、誰かが持っているのか、」
「それとも、神様が意地悪して外の世界へ持って行ったのかも知れない」
「これは私の勘だけど、」
「あなたがよく知ってる人が『答え』を持っているんじゃないかな?」
「あなたはきっと、怒られるのが怖くて言い出せないんだと思う」
「あっ、ごめんなさい。私、勝手な事言ってますね」
妹 「ううん」「鈴音さん。・・ありがとう」
<別の時間:神楽の支部:10階の応接室:神楽・御影・朱雪の3人でミーティング>
御影 「あの二人にも参加させては如何ですか?」
神楽 「まだ早いと思います」
御影 「しかし、神代の動向を考えると、何か手を打つべきではないでしょうか」
神楽 「昨日、Aクラスのメンバー1人が鈴音に襲われ、『力』を奪われました」
「回復に ひと月は掛かるでしょう」
「鈴音の能力はご存知ですよね?」
朱雪 「私が集めた情報では、『吸収』を得意として発動範囲はテニスコート2面分」
「神代の中でもトップクラスの実力があり、次期神代とも噂されています」
「ただ、身勝手でよく問題を起こすそうです」
「それから、御影様を意図的に避けているようで、」
「直接出会う事はありませんでした」
神楽 「鈴音は『道』を見る能力を持っています」
「我々の監視を簡単に潜り抜けてしまうため、」
「何時も対応が後手に回るのが現状です」
御影 「神楽様は、どの様な未来をご覧になったのですか?」
神楽 「気になりますか?」
御影 「いいえ」「安堵致しました」
………玄関:妹が戸を開けて中に入ると、姉が妹の前に現れる………
妹 「ただいまっ!」(元気良く)
女の人「お帰りなさい」
妹 「お姉ちゃん、ごめんね」
女の人「どうしたの?何か良い事でもあった?」
妹 「内緒」「お姉ちゃん、すぐ喋っちゃうから・・」
女の人「もしかして、能力者に会ったとか?」
妹 「うーん、そうだとは思うんだけど、」
「纏ってる『風』が神楽とも霹靂神とも違うんだよね」
「神代の人達みたいに嫌な感じじゃなくて、」
「落ち着くって言うか、何でも話せる感じかなぁ」
女の人「ふうん。なら、良いんじゃない?」
「私が見る未来にも悪い影は出てないみたいだしね」
「あっ、それから、明日の事なんだけど・・」
………次の日(日曜日)………
朝。洗面所から出る姉と、3メートル離れた所にいるパジャマ姿の妹。
妹 「お姉ちゃん、おはよう。今日からコレを使って勝負しない?」
〈妹は右手の人差し指からテニスボール位の光玉を出した〉
女の人「『無極』を使うんだね」
「いいよっ」
「でも、エアホッケーで朱雪さんから1点取っただけなのに強気じゃない?」
妹 「勿論、最初っから勝とうなんて思ってないよ」「私は努力家だからね」
女の人「ふふっ、じゃあ始めよっか」
妹は早速、光玉を姉に飛ばす。(時速15キロ)
すると姉は両手を後ろに組み、
『移流』で作り出した壁(姉の前30センチ)で光玉を真っ直ぐ打ち返した。
それを見た妹はすぐに右手を構え、光を帯びた拳で更に打ち返す。(お互い時速15キロ)
妹 【・・これが私とお姉ちゃんとの差なんだ・・】
〈打ち合いが続いてから10秒後〉
女の人「これはどう?」
〈姉が返した光玉が廊下の壁に向かう:妹から左斜め上80センチの所〉
〈次の瞬間、壁で角度を変えて反射し、妹の方へ〉
妹 「えっ?」
〈妹は咄嗟に拳を動かそうとするが、間に合わずに左胸へヒット〉
「お姉ちゃんズルいよぉ」
女の人「『移流』を壁に使えば角度を自由に変えられるからね」
「2つの『力』を同時に出せるくらいじゃ、朱雪さんにも勝てないよ?」
妹 「うー」
………午前9時:ガレージから車が出る(妹は助手席)………
妹 「神楽さんから呼び出されるなんて、一体どうしたんだろうね」
女の人「簡単な お手伝いをして欲しいって頼まれたんだけど、」
「私にしか出来ない事なのかな・・」
………40分後:ある8階建てのビルの地下駐車場に車を止める………
〈姉妹が車を降りると、すぐに女性(30歳位)が現れ〉
女性 「お待ちしておりました。どうぞ此方へ」
〈姉妹はエレベーターで3階に案内される〉
「妹さんは、此方の部屋でお待ち下さい」
妹 「はい」
〈妹はエレベーターの近くにある部屋へ通された〉
(20平米位で大きなテーブルと椅子が6つ置いてある)
女性 「3分程お待ち頂けますか?」
妹 「はい」
<姉:女性は姉を連れ、別の部屋の前に案内する>
女性 「此方で神楽様が商談をされています」
「相手の方は大変お忙しく、無理を言って都合をつけて頂きました」
「是非、お会いになって下さい」
女の人「はい。分かりました」
〈姉が扉をノックする〉
神楽 「どうぞ」
〈扉を開けて〉
女の人「失礼します」
〈中へ入ると:内装は妹が居る部屋と同じ〉
「あっ、お父さん」(48歳位で実年齢より少し若く見える)
〈姉がテーブルの前まで歩いて行く:テーブルの上に資料が広げられた状態〉
神楽 「御令嬢には我々のお手伝いをして頂いてます」
「大変な才能の持ち主で、将来有望です」
父親 「そうですか。娘を宜しくお願いします」
神楽 「はい。お任せ下さい」
「ところで、席を5分程外しますが、宜しいですか?」
父親 「どうぞ」
〈神楽は立ち上がると、姉に小声で〉
神楽 「お願いしますね」
女の人「えっ?」
〈神楽が部屋を出ると、姉は席に座る〉
【・・家に居る時は気付かなかったけど、】
【お父さん、『蹉跌』を受けた状態になってる】
【しかも、かなりレベルが高い。きっと神代にやられたんだね・・】
「お父さん。最近、ミスが頻発してない?」
「それも、普通じゃ起こらないような事」
父親 「確かに、ミスが起きているのは事実だが・・」
女の人「ちょっと左手を見せてっ」(姉は真剣な顔をする)
父親 「あっ、ああ」
父親が左手を(掌を上にして)出すと、姉が右手で父親の手先を 下から軽く握る。
すると、2つの手が僅かに光を放ち、
父親がさっきよりも落ち着いた感じになった。(父親に光は見えていない)
女の人「いいよ、お父さん」「これで暫くは大丈夫だと思う」
父親 「ちょっと、不思議な感じだな」「母さんに出会った頃を思い出すよ」
女の人「!?」
「ねえ、お父さん。良かったら、最近起こった事を私に話してくれない?」
<妹:神楽が部屋に入ってくる>
神楽 「お待たせしました」
「私に何か、話があるのではありませんか?」
妹 「はい」
「神楽さん、聞いて下さい」




