第16話
第16話
………5分後………
妹 「昨日の事なんだけど・・」(小さめの声で)
「・・・」
「何があるか分からない所を調べるのって、」
「思ったより力の配分が難しいですねっ」(空元気で)
御影 「はい」「最初の予定では、お二人に全て お任せするつもりでした」
「常に注意を払うのと同時に、力の消費を抑える構成を考える事」
「本来の目的は それです」
女の人「私、思うんですけど、広い場所にたった一ヶ所 罠が仕掛けてあるだけで、」
「絶えず注意が必要になるなら相手が有利ですよね」
「そんな時、御影さんはどうやって対処してるんですか?」
御影 「人が ある程度居る場所なら、人々の変化を読み取って範囲を絞ります」
「例え人が居なくとも、その場の情報を集める方法は存在します」
「対象が点になるか、全てになるかは、貴女方の判断力と経験次第です」
「勿論、それ以外の答えもありますから、」
「相手が有利だと感じたなら、相手と立場を入れ換える事も考えてみて下さい」
………9時35分:駐車場に車を止める………
妹 「美術館?」
御影 「はい」
「今回は、館内に居る朱雪を見付け、『沈黙』で『幻覚』を停止できれば終了です」
「私も他人に紛れて貴女方の妨害をしますので、」
「何時でも反撃できるようにしておいて下さい」
「但し、私達と同じく順路に従って進み、後戻りは出来ません」
「又、見付けられずに最後の部屋を出ても終了となります」
女の人「どうしよう、今朝、『貸与』避けちゃったし・・」
妹 「ほらね」
………館内(9時30分開館)………
御影はチケット売り場で3人分の入館料を払うと、受け取ったチケットを姉妹に渡す。
「始めて下さい」
〈すぐに御影は最初の部屋へ向かい、続いて姉も御影の後を追う〉
妹 「お姉ちゃん、待って」
姉が振り返ると、妹は目を閉じて、右手の掌を顔に向けている。
程無く、親指から順に指先が光を帯びた。(5本で5秒)
妹 「オーダーは、『補佑』『整流』『貸与』『誘導』『沈黙』」
「今の私の力じゃ1回のチャージで2発分、合計10発が限度だけど、」
「これなら不意打ちされても平気だよね」
女の人「あれっ、『貸与』と『沈黙』って難しいんじゃないの?」
妹 「うん、ホントはね。昨日のお姉ちゃんの『おまじない』が効いてるのかな?」
姉妹は、御影に少し遅れて最初の部屋へ。
………最初の部屋………
妹 「えっ?、これって・・」
姉妹(左:姉・右:妹)は風景画『ゴッホ:秋のポプラ並木(に似てる)』の中に居る。
(壁に展示された絵画は宙に浮き、オブジェと他の客7人も合成して見えている)
女の人「あの絵が背景になってるんだね」(姉は左の真ん中辺りにある 絵画を指差す)
妹 「訓練なのに、何だか楽しくなっちゃうね」
そんな妹の発言に反応したのか、早速、光玉(ビー玉)が右斜め5メートル先から妹に、
一瞬遅れて左斜め5メートル先から姉に向かって飛んできた。(時速10キロ)
妹 「それっ」
〈掛け声と共に、親指から光玉を出して迎撃する〉
〈姉も人差し指から光玉を出して、目の前で消滅させた〉
妹 「余裕、余裕」
続けて、『右側』からは姉に、
『左側』からは妹に新たな光玉が飛んで来るが、今度も難なく迎撃してしまう。
妹 「次はこっちの番だね」
〈薬指と小指から左右に2発ずつ、合計4発を飛ばして反撃:時速10キロ〉
「どう?」
〈しかし妹が飛ばした光玉は、左右5メートル先で同時に明るく光って消滅〉
「間が空いたら、すぐチャージしないとね」
〈妹は目を閉じて、すぐに指先の光を補充する〉
女の人「ねえ。正面からの攻撃は通用しそうにないから、」
「まず朱雪さんを特定する事だけを考えた方が良いんじゃない?」
妹 「そうかなぁ?、私はもっと積極的に攻めるべきだと思う」
「今だって左右どちらかに的を絞れば、隙を見付けられるかも知れないんだよ?」
女の人「うーん。でもやっぱりここは慎重に・・」
妹 「もぉ、お姉ちゃん何時も そればっかりじゃないっ!」
「いいもん、私、独りでやるからっ」
妹は右手を構えて、右斜め5メートル先へ勝手に向かう。
【・・僅かだけど人の気配が残ってる・・】
〈次に左側へ移動し、辺りを念入りに調べる〉
【・・ここにも気配が残ってる・・】
【誰かまでは分からないけど、2つの気配は微妙に違うから、】
【御影さんが独りで二人分をやってる訳じゃないみたい・・】
「よし、次の部屋へ行こう」
妹は隣の部屋へ移動。
一方 姉は、ゆっくりと部屋を歩きながら絵画の鑑賞を楽しんでいる。
「ふふっ、私には私のやり方が・・ってね」
………隣の部屋:絵画『ダリ:記憶の固執(に似てる)』の中に居る………
妹 【この絵は有名だよね】
「って、そんな事より何かヒントを見付けないと・・」
ここでも、さっきと同じように撃ち合いになるが、
妹は あっさりと全弾を消滅させられてしまう。
【どうしよう、『沈黙』なんて何発も撃てないよ】
【やっぱり、お姉ちゃんの言う事を聞いたほうが・・】
「って、お姉ちゃん居ないじゃん!」
………更に隣の部屋:妹は姉を待たずに次の部屋へ入る………
「あれっ?、ここは・・」
この部屋は、美術館の内装そのまま。
奥には絵画を鑑賞する男子(昨日の高校生)が独り。他には誰も居ない。
【・・あっ、そういう事なんだ・・】
妹は右手を軽く握り、男子にゆっくりと近付く。
そして、男子との距離が3メートルになった時、
男子 「神楽の雑魚か。退屈しのぎに相手になってやるぜっ」
〈男子は振り向きざまに、指先から光玉(ビー玉強)を飛ばした:時速10キロ〉
妹 【今度こそ・・】
妹は指を広げ、人差し指から『整流』(ビー玉強)を飛ばして迎撃する。
0.5秒後、
お互いの中間点で衝突した光玉は、0.5秒程輝くと、新たな光玉(ビーズ玉強)に変化。
「これでどう?」
妹は続けて薬指から『誘導』を放つ。
放たれた光玉(ビー玉強)は、中間点の光玉を取り込み、真っ直ぐ男子へ向かう。
男子は咄嗟に体を捩って避けようとするが、光玉は軌道を変え、男子の背中の中へ。
男子は体が硬直して動けない。
妹はその様子を確認すると、
右手の甲を男子に向けながら ゆっくりと歩いて、(指三本が光った状態)
「私を甘く見ないでね」
〈2秒後。硬直が解けた男子は、何も言わずに走って逃げる〉
「ふふっ・・」
「さてと、朱雪さんを探さないとね」
………25分後:3階(最後の部屋)入り口から少し進んだ場所で、妹と姉が出会う………
妹 「お姉ちゃん遅いぃ!」
女の人「そう?」「これでも急いで来たんだよ」
妹 「もぉ・・」(妹は不機嫌な顔をする)
「で、とうとう この部屋で最後だよね」「何か妙案は無いの?」
女の人「あるよ」「聞きたい?」
〈姉は小声で妹に説明する〉
妹 「えっ、そうなの?」
〈説明を終えて〉
「うん分かった。やってみる」
女の人「じゃあ、その前に・・」
姉は妹の額に人差し指を当てる。(姉の指先が光り、妹は静かに目を閉じた)
5秒後。妹は目を見開いて、
「今度は私の番だね」
妹は両手の掌を顔に向け、再び目を閉じる。
10秒後。全ての指が光を帯びると、
妹は『左側』へ一斉に光玉(ビー玉強)を飛ばした。(20発:時速10キロ)
すると何故か、4メートル程進んだ所で全ての光玉は減速し、
一つひとつが光を発しながら時間を掛けて消えてゆく。
女の人「はい。ここですね」
(姉は入り口付近に移動し、両手で何かを掴んでいる)
朱雪 「お見事。参りましたぁ」
全員が実体化する。右側には御影。左側には男性。(神楽の助手席の人)
そして皆が、妹の所へ集まって来る。
御影 「お二人とも、合格です」
妹 「やったぁ!」
女の人「何とかなったね」
朱雪 「はうぅ、どうして分かったんですかぁ?」