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神楽  作者: 黒紫
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第15話

第15話


………屋上:エレベーター前………

〈エレベーターの扉が開き、姉妹が降りてくる:周りには誰も居ない〉

妹 「あれっ、何か変だよ?」

女の人「そう?」


ガラス扉を開け、姉から先に外へ。

すぐに姉妹は辺りを見渡すが、

何故か駐車場には人の気配が全く無い。(車の数は全体の1割程度)


女の人「御影さん居ないね」

妹 「車を置いて何処に行ったんだろう。声も聞こえないし・・」

「あっ!」


妹は、10メートル離れた所に倒れている女性(朱雪)を見付け、走って近寄る。

(しかし姉は、その様子を見ても動こうとはしない)


「朱雪さん!」


妹が朱雪の(そば)まで来ると、

突然4メートル離れたワゴン車の影から男子(高校3年生)が現れた。


男子 「神楽の雑魚か。俺の出世の為に負けて貰うぜっ」

〈男子は力を溜めずに指先から光玉(ビー玉強)を妹に飛ばす:時速10キロ〉

妹 【えっ、間に合わない・・】


妹は咄嗟に指を立て、意識を集中しようとするが、上手く集中出来ない。

次の瞬間、

後方から光玉(ビー玉強)が高速に飛んで来て、妹の前方1メートルの所で衝突。


女の人「上手くいった?」(姉は指先を此方に向けている)


しかし、衝突した光玉は、0.5秒程 明るく輝いた後、

新たな光玉(ビーズ玉強)に変化して、妹の胸元へ消えていく。


妹 【・・そんなぁ・・】

(妹は体が硬直して動けない)

〈男子は指先の光玉を大きくしながら妹に近付いて来る〉

男子 「まずは お前からだ」

〈男子は妹の目の前まで来て、ピンポン玉位になった光玉を妹の顔に近付ける〉

妹 【私って、ここまでなのかな?】

【・・お姉ちゃん助けてっ!・・】

女の人「ここですねっ」


姉は扉から3メートル離れた場所へ移動し、両手で何かを掴んでいる。


朱雪 「はい、お見事です」

「御影様、見付かっちゃいましたぁ」


何も無い空間から、朱雪が実体化する。(朱雪の手と指は、姉に掴まれた状態)

続いて、倒れている筈の朱雪が消え、目の前に居る男子が御影に変わった。


御影 「大丈夫ですか?」「貴女に怖い思いをさせてしまいました」

妹 「・・私、平気です」

「・・・」(妹は少し俯く)


姉は地面に落ちた袋(食パンと菓子)を拾うと、朱雪と一緒に妹の所へ歩いて来る。


女の人「『幻覚(げんかく)』・・ですよね?」

御影 「はい」「私と朱雪で、お二人別々に少し違う『幻覚』をお見せしました」

妹 「私、動けなかった」

御影 「それは、」(御影はポケットからピンクのハンカチを取り出す)

「このハンカチに集めた『誘導』の反動を使ったからです」

妹 「えっ?、そんな事どうやって・・」

御影 「・・・」(御影は少し笑顔を見せる)

女の人「もしかして、『虚栄』を使うんですか?」

御影 「はい」「一時的に分身を作る事で、対象の変更をするのです」

「但し、時間が経つと元に戻ろうとするので取り扱いには十分注意して下さい」

(駐車場に赤い車が入って来る)

妹 「神楽さんだ」

(赤い車は4人の前で停まる)

神楽 「そろそろ終わる頃だと思いました」

御影 「はい」「お二人とも順調です」

〈御影は姉妹の方を向いて〉

「今日はここまでです」

姉妹 「ありがとうございました」

神楽 「御影さん、早速ですが、例のポイントをお願いします」

御影 「はい」「承知致しました」

神楽 「お二人とも、私の車に乗って下さい。家まで送りますよ」

「あっ、それから、入り口の『誘導』は私が無効化しておきましたから」

御影 「はい」

〈姉妹は御影と朱雪に改めて向かい合うと〉

妹 「御影さん、朱雪さん、さようなら」「また明日」

女の人「さようなら」

御影 「さようなら」

朱雪 「またお会いしましょうね」


姉妹は赤い車の後部座席に座る。(姉は神楽の後ろ)

一方、御影と朱雪は黒い車に戻ると、朱雪は運転席、御影は後部座席に座った。


………赤い車(帰り道)………

妹 「ねえ」「神楽さんって、御影さんよりクラスが上なんでしょ?」

「なのにどうして、簡単な技でも力を溜めるんですか?」

神楽 「これは私のやり方で、どんな力でも2秒前後で出すようにしてるんです」

「例えば、ある能力者はレベル1の力なら0秒で出せますが、」

「レベル10だと30秒掛かるとします」

「能力者と戦う時は当然相手も此方の行動を見ていますから、」

「容易に推察され、すぐに対処されてしまいます」

「でも、」

「どのレベルも同じ時間なら、何が来るのか予測するのは難しくなりますよね?」

「勿論、」

「意識を集中している間に襲われたりしないよう、意識の分散も必要ですけど」

女の人「まるで、ゲームのラスボスが『チートレベル』で技を繰り出すのと同じですね」

神楽 「はい。大将ですから」

妹 「神楽さん、私もっと強くなりたい」「私、どうしたらいいの?」

神楽 「そうですねえ」

「まずは、自分の中での『変化』を知る事から始めては如何ですか?」

女の人「つまり、過去の自分と比べるんですよね?」

神楽 「はい」

「昨日の自分、一週間前の自分、一年前の自分」

「自分が何を払って、何を得ているのか」

「これ以外にも、ある瞬間に自分の中で起こった感情の変化をセンサーにして、」

「『風』の流れを知る方法もあります」

「外へ出て景色を眺めたり、」

「美術館で絵を鑑賞したり、」

「静かな場所で音楽を聴いたり」

「我々が普段何気なく接している物の中にもヒントは隠されているのですから」

妹 「・・・」

女の人「あっ、そうだ」

「今日気になったんですけど、反動無しに無効化って出来るんですか?」

神楽 「反動を予測して事前に付加すれば可能ですが、」

「それは先に反動を受けるのと同じですよ」

「無効化の際に出る反動は、『虚栄』で相手に返す事も出来ますので、」

「通常は行いません」


………家の前………

神楽 「お二人とも、今日はゆっくり休んで下さいね」

姉妹 「神楽さん、さようなら」

〈姉妹は玄関の戸を開け、中へ〉

妹 「お姉ちゃん・・」(小声で)

女の人「!」(姉は、妹の額に人差し指を当てる)

「らしくないぞぉ」

〈突然、姉の指先が光りだし、妹はゆっくりと目を閉じた〉

〈3秒後〉

「『補佑』と『整流』を合わせてみたよ」「どう、落ち着いた?」

「お昼ご飯にしよ」

妹 「うん」


………次の日(8月28日)………

朝。洗面所から出る姉と、3メートル離れた所にいるパジャマ姿の妹。


妹 「お姉ちゃん行くよぉ」


妹は右手の甲を姉に向け、(5本の指先が少し光った状態)

親指から順に光玉(ビー玉)を次々に飛ばす。

姉も その様子を見て、人差し指から光玉を飛ばして迎撃開始。(お互い時速5キロ)

姉妹が放った光玉は、おおよそ中間地点で衝突し、僅かな光を発しながら消滅する。

そして、妹の小指からの5投目、


妹 「えっ、何で()けるの?」

女の人「だって、『貸与』なんて無効化できないもん」

〈避けられた光玉は そのまま壁の中に入って行く〉

「これ、無効化しておいてねっ」

妹 「もぉ」「そんなんじゃ明日(あした)から追尾にしちゃうよっ」


………午前9時:姉妹が玄関を出ると、黒い車が止まる(御影独り)………

姉妹 「おはようございます」

御影 「おはようございます」「お二人とも、後ろに乗って下さい」

〈姉妹が車に乗る〉

「今日の訓練は、目的地に着いてから説明します」

「レベルを少し上げますから、気を引き締めて下さい」

姉妹 「はい」

妹 「ところで、朱雪さんは今日居ないんですか?」

御影 「いいえ」「まだ話せません」



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