第13話
第13話
〈御影は突然 目を閉じて何かを探っている:神楽が車に向かう〉
〈2秒後、御影は目を開け〉
御影 「大丈夫のようです」
「それではまず、貴女方が使える能力を教えて頂けますか?」
妹 「えーと私は、」
「『貸与』『誘導』『虚栄』と、御影さんに使ったのを入れて4つです」
女の人「私はまだ、『風』と『気配』しか分からないんですけど、何とかなりますか?」
御影 「それは私にも分かりません」「私は飽く迄、機会を提供するだけなのですから」
〈神楽は車に乗り、車を発進させる〉
妹 「神楽さん、どうして自分から教えようとしないんだろうね」
「お姉ちゃん引っ掛かってばっかりなのに」
御影 「あの方には『道』を見る能力があります」
「その中で最も良い『道』を選び、そして、私に託したのでしょう」
妹 「そうだったんだぁ」
「神楽さんと お姉ちゃんって、同じ能力を持ってるんだね」
それを聞いた御影は左手を軽く握り、口に当てる。(御影の癖)
そして、2秒程 目を閉じた後、
御影 「分かりました」「最初は『風』を読む訓練からです。車に乗って移動しましょう」
姉妹 「はい」
〈3人は姉の車に乗る:妹は助手席、御影は姉の後ろの席〉
御影 「これから私が、貴女方に色んな お話をしますが、」
「その前に必ず守って頂きたい事があります」
姉妹 「はい」
御影 「それは、『責任』を持つ事です」
「私達は日々、対価を支払って様々な物や能力を得ています」
「それは同時に、責任を負う事でもあります」
「これは、提供する側も受ける側も同じです」
姉妹 「・・・」(姉妹は御影の話に集中している)
御影 「私は今後、貴女方に教えた事による『責任』を負います」
「貴女方は これから先、覚えた知識や能力を自由に使って頂いて構いません」
「但し、貴女方が誰かに教えたいと思った時は、私の話を思い出して下さい」
「宜しいですか?」
女の人「はい」
妹 「はい。御影さん」
御影 「始めましょう」
「『悪い風』を探して、その場所へ行って下さい」
「お二人で相談しても構いませんから」
女の人「風を鎮めるんですか?」
御影 「いいえ」「自然に起こる風は変えないほうが良いでしょう」
姉は車を発進させる。
………3分後………
妹 「こっちがいいんじゃない?」
女の人「うーん、私は向こうの方だと思うよ?」
妹 「じゃあ、お姉ちゃんのでいいよ」
………7分後………
交差点(2車線、右折レーン有)に差し掛かると、
丁度信号が『赤』に変わったので停止線で止まる。(交差点左上の角に郵便局がある)
前を見ると、横断歩道の左側にバッグを持った女性(40歳位)が1人だけ立っている。
御影 「何か、気付いた事はありませんか?」
姉妹 「・・・」(姉妹は一瞬 顔を見合わせる)
女性は車の前を横切り、右側へ。
御影は その瞬間、右手の指先から光玉(ビー玉)を女性に向けて飛ばした。
(光玉は窓を通り抜け、女性の背中に入る)
すると女性は、横断歩道を渡り終えた直後に向きを変え、走って引き返してしまう。
そして、左右の車が来ないのを確認すると、赤信号を渡り、正面の郵便局へ入って行った。
女の人「えっ?今 何をしたんですか?」
御影 「今の女性は、悪い風によって『ある物』が足りない状態になっていました」
「それを私が補ったのです」
〈信号が青に変わり、姉はアクセルを踏む〉
妹 「あっ、分かった。『蹉跌』でしょう?」
御影 「はい」「その通りです」
妹 「神楽さんに初めて会った時、無効化して貰ったよね」
女の人「そうなんだ・・」
御影 「ちなみに、私が行った無効化の力を『補佑』と言います」
妹 「でも確か、無効化すると反動があるんじゃなかったっけ」
御影 「はい」「特に人が悪意を持って使った場合は反動があります」
「でも今回は、自然に起きた風の影響なので、心配ご無用です」
女の人「あっ、そうだ」
「私今日、銀行の口座にお金を入れるんだった」
「御影さん、すいません」「ちょっと寄ってもいいですか?」
御影 「はい」
妹 「もぉ、お姉ちゃん・・」
………銀行内:入り口………
自動ドアが開き、姉(独り)が入ってくる。
目の前のATMには人が並び、姉は5番目の所に着いた。(8台ある)
【・・あれっ、この人・・】
姉は、ATMを操作している女性(40歳位)に興味を示す。
女性は台の左側にノートを置き、更にノートの上にカードを載せている。
【・・これって多分・・】
1分後。女性は左手でノートを勢いよく手元に引き寄せた。
(この時、ノートを半回転させた反動でカードが左側へ飛び、
ATMと仕切り板の間1センチ程の隙間に入ってしまう)
女性はすぐに気付き、隙間を覗いて指を入れようとするが、
どうする事も出来ないので、再びATMの操作に戻ってしまう。
30秒後。女性の左隣のATMが空き、姉は女性の前を通り過ぎて、ATMの前へ。
(姉はカードと紙幣を出して、素早く入金を済ませる)
「すいませーん」
程無く女性銀行員(30歳位)が女性の所へ駆け付ける。
姉はATMから出て、駆け付けた銀行員の背中を抜けながら出口へ向かった。
………銀行の駐車場:姉が素早く車に乗り込む………
「お待たせしました」「次の風を探します」
………2時間後(午後5時前)姉の車(走行中)………
御影 「今日はここまでです」
姉妹 「ありがとうございました」
妹 「お姉ちゃんも、やっと1つ使えるようになったね」
女の人「うん。やっとだね」
妹 「御影さんの教え方って、とっても分かり易いです」
御影 「ありがとうございます」
「でも、忘れないで下さい」
「知識や能力は万能でもなければ、際限なく持てる物でもありません」
「特定の知識を持つ事で他の物を理解し難くなったり、」
「特定の能力が使えなくなる場合もあります」
「時には、『持たない選択』もあると心得て下さい」
姉妹 「はい」
女の人「御影さん、送りますよ。何処がいいですか?」
御影 「ありがとうございます」「では、駅までお願いします」
女の人「それなら、一緒に夕飯にしませんか?」
「地下街に新しいパスタ屋さんがオープンしたんですよ」
御影 「すみません」「私は人と会う約束をしているのです」
女の人「そうですか。では、食事は次の機会にしましょう」
御影 「はい」
妹 「仕方ないね、2人で行こうよ」
女の人「そうだね」
………10分後:とある駅の近く:駐車場(第7話の場所)………
〈御影は再び目を閉じて何かを探っている〉
御影 「私の相手は、まだ来ていないようです」
「それから、そのお店で食事をするには、かなり待たないといけません」
妹 「えっ?」
………駅:通路を3人で歩く………
女の人「あっ、ちょっと待って」
〈姉は目の前の宝くじ売り場に行く〉
「スクラッチ2枚下さい」
妹 「ちょっと、お姉ちゃん」
〈スクラッチを受け取って〉
女の人「普段は買わないんだけどね」
〈姉はスクラッチを削らずに歩き出す:3人は下りのエスカレーターへ〉
妹 「お姉ちゃん削らないの?」「それなら、私が削ってあげるね」
………地下鉄の改札付近………
椀を持った托鉢僧が2人。此の間の人が、もう一人に何かを指導している。
姉は一瞬 托鉢僧を見るが、3人は そのまま通り過ぎた。
妹 「お姉ちゃん、当たってたよっ!」(絵柄が3つ揃った状態)
女の人「そう?」
妹 「なんと5万円!」
「そこの宝くじ売り場なら、5万円まで換金してくれる筈だよっ」
女の人「じゃあ、換えてくるね」
姉は、目の前の売り場に行く。(さっきの売り場には『5万円マーク』が無い)
妹と御影が少し離れた所から様子を見ていると、
「これ、お願いします」
売り場の小母さん(50歳位)はスクラッチを受け取って絵柄を2秒程 見つめる。
そして、机の下からA4サイズの分厚いファイルを取り出して絵柄の確認をし始めた。
(ファイルには様々な種類の当選絵柄が記されている)
20秒後。小母さんはスクラッチの下の部分を削り、バーコードリーダーを当て、
「どちらで買われました?」
「駅の改札前にある 宝くじ売り場です」
「おめでとうございます」
姉は5万円を受け取った。
〈姉は表情を一切変えずに、2人の所へ〉
女の人「こういう時、御影さんならどうします?」
御影 「私なら、まず、そのお金がどの状態に属しているのかを考えます」
「例えば、何かを『繋ぐ物』であるなら、その様に致します」
女の人「なるほど、参考になりました」
妹 「二人とも、何言ってるの?」
3人は再び歩き出す。
1分後。前方にパスタ屋と、10メートル以上の行列が見える。
女の人「・・帰ろっか」
妹 「うん」
「御影さん、これもテレパシーで分かるんですよね?」
御影 「はい」「詳しくお知りになりたいのでしたら、明日お話します」
妹 「じゃあ、また明日」「御影さん、さようなら」
女の人「さようなら」
御影 「さようなら」
御影は そのまま真っ直ぐ歩き、姉妹は引き返す。
………5分後:地下の通路………
御影は人通りの少ない通路で、
やって来た 閃緑と女性(御影の車を運転していた人)に会う。
閃緑 「忘れ物だよ」
女性 「御影様」
「霹靂神様より お許しを頂きましたので、今まで通り御影様にお仕えします」
御影 「はい」「これからも宜しくお願いします」
「姉さん」「今までありがとうございました」「体にお気を付け下さい」
閃緑 「じゃあね」「気が向いたら、本部に遊びにおいで」
………神楽の支部(第5話の場所)………
黒い車が地下の駐車場に止まる。(さっきの女性が運転し、御影は後ろの席)
………10階………
御影(独り)が応接室に入ると、中央のテーブル横で神楽が独り立っていた。
御影 「只今戻りました」
神楽 「ご苦労様です」「如何でした?」
御影 「神楽様は、あの二人を候補にと考えておられるのですか?」
神楽 「はい。勿論です」「いずれ、神楽の名を継ぐでしょう」
御影 「・・はい」「承知致しました」




