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神楽  作者: 黒紫
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第1話

第1話


<1章>


8月1日。東京。快晴。

美術館から『女の人』と『女の子』が出てくる。


女の人「どうだった?」

女の子「うーん。今回は最後に展示してあった絵だけかな・・」

女の人「そう?」「私は、何か、足りない物を感じるんだけどね」


二人は駐車場に向かい、

止めてある乗用車の運転席に女の人、助手席に女の子が乗り込み、車を発進させた。


<自己紹介>

私は、もうすぐ二十歳(はたち)になる大学生。

今日は妹(高校1年生)と、美術館に お勉強しにやって来た。

私の家は都内にある一戸建。

父親は大きな不動産会社を経営していて、父親の趣味で美術品や骨董品を集めてる。

そのせいか私は小さい頃から美術品に興味があって、将来は美術商をやりたいと思ってる。


妹 「あれぇ、今日は、信号が『赤』ばっかりだね」

女の人「そうだね。そんな時もあるよ」

〈交差点の信号が青に変わる。前方には今し方 右折して来た『赤い車』が見える〉

妹 「何だろう?」「前の車、何か変だよ?」

女の人「そう?」

〈前方の赤い車が左折の指示器を出す〉

〈姉も左に曲がるので左折の指示器を出した〉

【・・何だろう、何かの予感がする・・】


程無く交差点に入ると、横断歩道をお爺さん(70歳位)がゆっくりと此方(こちら)へ渡り始めた。

赤い車は止まり、姉も その間待つ。

左折後、遠くの信号を見ると『赤』なのが確認できる。(2車線、右折レーン有)

次の交差点まで、視界には赤い車しか走っておらず、姉は赤い車のすぐ後ろを走る。

やがて、交差点の40メートル手前に来た時、信号が『青』に変わった。

(この時、赤い車との距離が少し開いたので、姉は感覚的にアクセルを踏む)


妹 「あっ!」


交差点の20メートル手前まで来ると、

左方向の歩道から、自転車に乗った男子高校生(制服姿)が猛スピードで突っ込んできた。

前方の赤い車は減速する事なく直進。高校生は横断歩道の手前で急ブレーキを掛ける。

すると、自転車の前輪がロックされた状態になり、高校生はハンドルを支点に1回転。

赤い車はそのまま走り去るが、姉はブレーキを踏み、運良く高校生の手前で止まる。

幸い、高校生はハンドルから手を離さず、足から着地できたので、

何事も無かったかのように立ち上がり、(高校生が手を放して自転車が横になる)

倒れた自転車を起こして、車の後方へ走り去ってしまった。


妹 「今、危なかったね」

女の人「・・うん。気を付ける」


………姉妹の家:車をガレージ(屋根付)に止めて、姉妹がドアを開けて降りてくる………

妹 「お姉ちゃん」

「最近荷物がよく届くけど、オークションで熱くなり過ぎてるんじゃない?」

女の人「そうなのかなぁ?」

「別に高くしてる訳じゃないんだけど、不思議と落札できる時もあるんだよ」


………姉の部屋………

「さてと、またチェックしないとね」


姉はパソコンの電源を入れ、オークションサイトに接続。

そして、画面の中から ある絵画の出品物をクリックした。


「あれっ、これ本物かなぁ?」

【しかも、こんな値段で即決だなんて】

【それに、出品されたのが今から5分前だ】

〈姉は少し悩みながらも、『落札』ボタンを押した〉

「出品者の評価は悪くないし、私って、ツイてるのかな?」


<5分後:出品者からメッセージが届く>

「初めまして、出品者の西川と申します。」

「この度は、落札して頂いて誠にありがとうございます。」

「お役に立てば幸いです。」

(以下略)


〈姉は内容を確認すると、すぐに住所と名前を書いて送信〉

「一応、お父さんにも知らせておこう」


………2日後(8月3日)落札した絵画が届き、室内で梱包を解く姉妹………

妹 「とっても綺麗な絵だね」「これは一番良い所に飾ろうよ」

女の人「そうしよっか」

妹 「それにしても、よく手に入ったね」

「これはきっと、お金じゃ買えない物だと思う」

女の人「そうだね。偶然ってあるんだ」

妹 「偶然?」「私は偶然なんて信じないよ。運命なんだよっ」


………次の日(8月4日)午前8時20分:玄関で靴を履く姉………

妹 「お姉ちゃん、今日も出掛けるの?」

女の人「うん。今日は電車に乗って、お店を見て回ろうと思うんだぁ」


姉は近くのバス停からバスに乗り、駅の中へ。

そして電車に揺られること25分。

目的地のホームで電車から降りると、階段で改札へ向かった。


………改札………

姉が歩きながらカードを用意していると、

女子中学生(14歳位)が自動改札機に引っ掛かっているのが目に入った。

中学生は後ろ向きに歩いて、もう一度右手に持ったカードを改札機に当てている。

でも、開かない。

中学生は体を反転させると、不機嫌な顔をして戻り、

八つ当たりで左手に持ち替えたカードを改札機に当てて駅員が居る方向へ行ってしまう。

すると今度は改札が開いたが、中学生(改札の左端へ移動中)は全く気付く様子が無い。


【・・これって、言った方が・・】

〈姉が一瞬迷っていると、すぐに別の人が改札を通ってしまった〉

【あっ】


姉は少し不審に思いながらも、同じ改札機にカードを当て、駅を出た。


………5分後:美術店:店の前に赤い車………

店に入ると、綺麗な女性が独り、

壁に掛けてある 絵画を見ていた。(背が高く、外見は25歳位)


女の人「初めまして。此の間は助かりました」

女性 「はい。初めまして」

「私は『神楽(かぐら)』と申します」

「立ち話も何ですので、場所を変えませんか?」

女の人「ええ。そうしましょう」


………赤い車(姉は助手席):神楽がギアを入れ発進………

神楽 「私達は、この世界に吹く目に見えない『(かぜ)』をコントロールして、」

「災いを減らす努力をしています」

女の人「目に見えない『風』・・ですか?」

神楽 「世界は『変化する物』で溢れています。それは私達自身も例外ではありません」

「『人と人』『人と物』『物と物』が出会う時、『風』が起きます」

「良い風が吹けば世界は発展しますし、悪い風が吹けば逆に不幸が訪れます」

「故に、私達は其々(それぞれ)の関係に関与して、」

「悪意の無い『あるべき姿』に導こうとしているのです」

女の人「でも、偶然出会う事ってありますよね」

神楽 「はい。『偶然』と『必然』の区別を付けるのは難しいですね」

「多くの人は、偶然起きる事に規則性や関連を付けて考えがちですし、」

「逆に誰かが悪意で仕組んだ事なのに、」

「偶然だと思って、そのままにしている場合もある」

「特に後者は、悪い風を起こし、その風がまた新たな風を起こす悪循環となります」

女の人「うーん。言われてみれば、そうかも知れませんね」

神楽 「ですから、私達は あるルールを決めて行動しています」

「何だか分かりますか?」

女の人「えっ?」「何だろう・・」

〈喫茶店に着く〉

神楽 「続きは中で お話しましょう」


………店内………

神楽 「場所は何処(どこ)()いですか?」

女の人「じゃあ、ここで」


空いているテーブルは幾つかあるが、その中の1つに向かい合って座る。

(通路を隔てた隣のテーブルには20歳位の女性が2人、向かい合って座っている)

姉が神楽に何を話そうか考えていると、すぐにウェイトレスが氷水を運んで来た。


神楽 「アイスコーヒーをお願いします」

女の人「私もそれで」


ウェイトレスが席を離れ、姉と神楽が御絞(おしぼ)り で手を拭いていると、

突然、隣のテーブルの女性が手を滑らせて、氷水が入ったコップを転倒させた。

しかもコップは此方(こちら)の方向に倒れ、氷が靴の(そば)まで転がってくる。

幸い、それに気付いた店員が素早くタオルを持って現れたので、特に被害は無かったが、


女の人「何か変」

「さっき、駅でも似たような事があったばかりだし」

神楽 「最近、何か入手された物とかありますか?」

女の人「昨日送られてきた、オークションで落札した絵ならありますけど・・」

「まさか、アレ?」

神楽 「いいえ。もう少し前だと思います」

女の人「すると、アレかなぁ・・」

神楽 「恐らく、『(ちから)』を付加された作品を持たされたのでしょう」

「人に対して影響を及ぼす力には幾つか種類がありますが、」

「その中の『蹉跌(さてつ)』と呼ばれる能力です」

「あなたの『目利き』を逆に利用されたんですね」

女の人「・・私、どうしたら良いんですか?」

神楽 「大抵は時間と共に効力が低下しますから、特に大きな問題にはならないでしょう」

「ただ、これは あなたに対しての警告の可能性もあります」

「ご心配でしたら、家までお送りしますよ?」

〈ウェイトレスがアイスコーヒーを運んで来る〉

女の人「ところで、さっき言ってたルールって何ですか?」

神楽 「何だと思います?」

女の人「もしかして、私が答えないといけないんですか?」

神楽 「はい」

女の人「・・・」

「すいません、時間を貰ってもいいですか?」

神楽 「いいですよ。何時(いつ)になっても構いませんから」


………赤い車(走行中)………

女の人「『力』を付加された作品って、一般の人でも見れば分かるんですか?」

神楽 「いいえ」

「ごく限られた人にしか分かりませんし、『力』を付加できる人も少数です」

女の人「それは神楽さんも?」

神楽 「はい」

「私達は、『人の想い』を守る為、沢山の『人の想い』と戦っています」

女の人「なるほど・・」「私が知らない事って、沢山あるんですね」

神楽 「では、あなたの家に着くまで世間話でもしましょうか?」

女の人「そうですね」


………姉妹の家:姉が玄関の戸を開ける(後ろに神楽)………

妹 「お姉ちゃん、待ってたよっ!」「これ、見て!」

(一枚の絵画を抱えた妹が待ち構えていた)

神楽 「あっ、これですね」

女の人「これは、一週間前にオークションで落札した絵です」「4日前に届きました」

〈神楽が妹の前へ行く〉

神楽 「ねえ、私達の仲間にならない?」

妹 「お姉ちゃん、この人、誰?」



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