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理由

一体、この一連の騒動はなんだったのか。

動機が謎で、本人に聞いてみなければ分からないと思った。


だけど、聞いたところで僕には全く理解することはできなかった。


モニカは、ローレンヌの持ち物を盗むということに関しては、日頃の鬱憤ばらしを兼ねた善行だと言った。


ローレンヌは私に対して、いつもいつも偉そうに振る舞ってきた。

少しくらい困ればいい。

そう思ったのが始まりだった。


親衛隊にも苛ついていた。

「自分が見ていない時のローレンヌ嬢の様子を教えてくれ。常に一緒にいるのだから、何かとっておきがあるだろう?」と毎日のように聞かれた。

私を彼女の使用人か何かだと思っているのだろうか。

私だって、それなりの家に生まれた令嬢なのに。


だから私は親衛隊のためにやってあげたのだ。

ローレンヌの些細な情報さえ欲しい彼らだ。

それが私物を手に入れられるなんて、夢のような出来事に違いない。

彼らのうちの誰かが毎日自分のところに来ることも、都合がよかった。


ただローレンヌは困るだろうと思っていたし、それでいいと思っていたが、違った。

それほどまでに自分を欲しているのかと考えたようで、どこか誇らしげに私に言うのだった。


「こんなに愛されて。私が美しいからだわ。美しさも罪になるのね」


結果的に、私物を盗まれることがローレンヌの自尊心も満足させることになったようだった。


そして、ローレンヌは周囲に事件のことを何かにつけて語った。

最近持ち物がなくなること、それは親衛隊の暴走によるらしいとのこと、生徒会に相談に行っていること、生徒会長のフィリオ様はそれはそれは親身に話を聞いてくれる、(それもこれも私が美しいからだわ)と。


話を聞いた生徒たちが、また別の生徒にこの話をしていく。

そうするうちに段々と話が変化していって、フィリオ様とローレンヌのあの噂話になった。


ローレンヌはこのことにも気を良くしたようだった。


所詮、私は誰かの引き立て役にしかなれないのね。

そう思った。


では、リリアへのことはどういうことなのか。


あの瞬間、モニカがリリアに対して明確な悪意を持っていることは分かったが、何故なのだろうか。

2人の間には何の関係性もないはず。

あるとすれば、同じ学校に通う生徒だということくらいだ。

学年も違うし、モニカは本来魔力を持っていないから、魔法学の授業で会うこともない。

おそらくこれまでに話したこともないと思う。

それなのに、どうしてあそこまで。

ローレンヌの騒動との繋がりも見えない。


モニカは「リリアは“地味だから”、彼女が手にしているあらゆる事柄に相応しくない」と言った。

だから、正してあげるために行動を起こしてあげたのだと言ったのだった。


フィリオ様の婚約者として、地味な彼女は相応しくない。

リック様の妹として、地味な彼女は相応しくない。

公爵家の令嬢として、地味な彼女は相応しくない。

地味な人間は愛されるわけがない。

地味な人間は華のある人間の引き立て役としてのみ、価値がある。

地味な人間はひっそりと地味に生きるべきだ。

私だってそうしている。


だから私は、リリアを正しい立ち位置にしてあげなければと思った。


みんなの信頼を裏切るようなことをすれば、見離されるだろう。

本人も居た堪れない気持ちになるだろう。


最初は親衛隊達のように、リリア本人にやらせようと考えた。

だけど、リリアには人心を操る魔法が効かなかった。

それならば私が事を起こして、それをリリアのせいにすればいいと思い付いた。

ただ、リリアの周りにはいつも必ず誰かがいる。

1人にさせなければ、リリアがやっていないことがすぐに証明されてしまう。

どうにかして、1人にさせられないだろうか。


全員に暗示をかけられれば簡単だけど、フィリオ様とリック様には私の魔法が効かない可能性が高い。

リリア程度の魔力量でもかからないなら、魔法学クラスの学生には誰1人効かないだろうと判断した。


リリアの周りだけがみんな休めばいいのに。

そこで、リック様が学校を休んで王宮に行く日が月に一度あることを思い出した。

この日に合わせればいい。


まずリリアの友人達に学校に来たくなくなるよう暗示をかけた。

不自然に見えないように1人ずつ。


次にフィリオ様。

暗示をかけられないから難しいかと思っていたが、これは割と簡単なことだと気が付いた。

あのローレンヌの毎回の鬱陶しいくらいの訴えを、嫌な顔もせず聞けるほどに責任感があるのだ。

だから緊急で生徒会を招集するようなことがあれば、会長であるフィリオ様はリリアの側を離れるだろう。

リック様が休んでいる以上、尚更だ。


私の狙いは的中して状況は整った。

言い逃れできないよう、大勢の生徒の前という舞台も用意した。

何をリリアに“させるか”は決めていた。


ローレンヌの事件の影の首謀者。

私がこれまでやってきたことの全てをリリアの手柄にしてあげる。

嫌がらせだけじゃ弱いかしら。

じゃあ、ローレンヌを階段から突き落とすのもサービスで付けてあげる。

私が突き落として、ラルゴにリリアの幻影を見せた。

ローレンヌが怪我をしなかったのが残念だったわ。


その美しさを妬み、ローレンヌに嫌がらせをするだけでは飽き足らず、ついには直接手を下した心まで醜い女。

それが分不相応な場所に居続けた、お前への罰だよ。


リリアを徹底的に潰す。

今いる地位から引き摺り下ろす。

許さない。

私と同じように地味な癖に、あんなところにいるなんて。


彼女はどうしてこんな考えを持つようになったのだろう。

リリアは地味ではないが、仮にそうだとして何が悪いのか。

僕にとって、かけがえのない大切な婚約者だ。

リックにとって、かけがえのない大切な妹だ。

マーベル公爵夫妻にとって、かけがえのない大切な娘だ。

あんなにも愛らしいあの子を、愛さずにはいられない。

人の引き立て役としてのみ価値がある、そんなわけがない。

みんな自分の人生を生きているのだから。

ひっそりと生きるべき、そんなわけもない。

それぞれが思うようにしていいのだから、他人に決められることではない。


狂っている、そう思わずにはいられなかった。

おそらく黒の丸薬の影響が出ているのだろうと思う。

黒の丸薬はその使用者を内に外に蝕む。

モニカの場合は、精神に影響が出ているのだろう。

自身のコンプレックスが、黒の丸薬により増幅してしまったのだ。


だからと言って、モニカを許すことはできないが。


リリアに危害を加えようとしたこと

禁忌の魔法を使ったこと

黒の丸薬を手にして使ったこと


どれも重い罪だ。

毎日更新を目指しているのですが…。難しい。

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