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9話 ≪転写≫の魔法陣 航side

~航視点~




魔法陣のレクチャーをクォートさんから受けていると、外がだんだん暗くなってきた。


肩に泊まっていたライネは2回くらい外に出て行って、今は僕の頭の上でおとなしくしている。

頭にフンをされるかもと思うと、少し不安だけど、トイレはしっかりできる鳥ということだから好きにさせるようにした。



休憩なしでずっと魔法陣を紙に書き写して、もう10枚を超えたけど、さすがにちょっと疲れてきた。


それでも、だんだんと上達して、書くスピードも上がり、魔法陣の細かい構成が分かってきた。


「クォートさん、できました。今度はどうですか?」


新しく描きあがった魔法陣を向かいに座っているクォートさんに見せる。

丁寧に描いたのでこれまでで一番見本通りにかけていると思う。



「えぇ、だいぶ上達しましたね。次は空中に魔法陣を描いてみましょう。指先に意識を集中させて、薄く、漠然と願いを込めます」



クォートさんは結構スパルタだ。

休憩もなく続いているから昔に受けた学校の授業より大変。


丁寧に教えてくれるけど、感覚派っぽく、サラッとやり方を伝えてくる。


「う、薄く漠然と、ですね?」


教わった通りに指先に意識を集中させて、指先でクォートさんの見本をイメージしてみる。

薄く、漠然と、と心の中で唱えながら指に集中していると、指先に意識が引っ張られる感覚があり、指先がかすかに光だした。


「お、光った!」


「いいですね。そのまま手元の紙を見本に空中に描いてください」


クォートさんは満足そうにしながら、次を勧めてくる。



手元にある自分で描いた魔法陣を見本に外側の大きな円を空中に描きだす。

空中には光が残り、明るい藍色みたいな円ができた。


続いて、円の内側に魔法陣の呪文を描いていこうとするとクォートさんからの待ったがかかった。


「ペンで書くのと指では太さが変わってしまうので、このままではおそらく書ききることができません。

もう一度、今度は少し大きく書いてみましょう」



「あ、そっか。はい!」


確かに、手元の魔法陣と同じサイズで描いていったら、指先の光の太さでは描くことが厳しい。



クォートさんは、ミスは怒らないけど、それでも淡々と伝えられるので少しプレッシャーを感じてしまう。


今度はさっきの2倍くらいの円を空中に描いて、手元の見本を見ながら間違えの内容に描いていく。


クォートさんは向かいにいるので、反対になった魔法陣を見ているはずだけど見にくくはないんだろうか。


集中して描いているとこれまでで一番きれいに描けたと思う。

間違いがないかチェックしてクォートさんに声をかける。


「できました!」


「よく描けましたね。それでは≪転写≫を使って頭に≪転写≫を焼き付けましょう」


クォートさんはそう言って褒めてくれ、説明は続く。



「それからゆっくりと描いた魔法陣に願いを乗せてください。ゆっくりですよ」



ゆっくりということなので、さっき指先に集中した時のように、ゆっくり魔法陣に意識を集中させる。


さっきと同じように魔法陣になにかが引っ張られる感覚があると魔法陣がさらに光って消えた。



「成功ですね。では、さっそく覚えた≪転写≫のテストをしてみましょう。やはり≪魔法操作≫がいいですね」


そう言いながらクォートさんは椅子から立ち上がって、僕の後ろに立って肩の上から手を伸ばしてきた。



そうされると長い袖から普通より一本多い手の甲が見える。


次の瞬間には、クォートさんの手の甲から向こうにクリーム色の魔法陣が空中に現れる。

それと同時に、クォートさんは僕の背中により近づく。





つまり、クォートさんの胸が僕の肩に当たっている。



正直、クォートさんはすごい美形なんだけど中世的だし、天使は性別が男でも女でもないって思っていたし、胸は布がふわっと何枚も重なっているような服のデザインのせいであるようには見えなかった。



それでも、今僕の肩に当たっているのは、控えめながら、たしかな柔らかさをもった何かだった。




これまで中学生時代はほとんど身動きもできない環境だったけど、中学生並みにそういうことに興味があったから、この状況は心臓に悪い。


とはいえ、クォートさんにいうこともできないので、目の前の魔法陣に集中するように気を付ける。



「それでは、覚えた≪転写≫を思い浮かべて、魔力を流してください」



集中することはそれなりに困難だったけれど、さっき覚えたばかりの≪転写≫を思い浮かべて、大体コツの分かってきた魔力を、思い浮かべた魔法陣に流す。



すると、思い浮かべていた魔法陣が≪転写≫の時のように光ったので、それを伝える。


「は、はい。あ、できたみたいです!」


「おめでとう。これであなたは好きな魔法を覚えて、カスタムすることができるようになりました。もう暗くなってきているので、まずはご飯にしましょう」



そう言いながら、クォートさんは僕から身体を離す。




少し残念に思いながら、僕はクォートさんにお礼を告げた。




◇◆◇◆◇◆




食事は、お昼同様クォートさんが作ってくれている。

料理はご飯を炊いたり、といった小学校の頃の家庭科で習ったくらいしかできないからありがたいな。



昼に食事を取った部屋で料理ができるのを待ちながら休んでいると、ずっと頭の上にいたライネがクチバシと足で器用に掴みながら肩まで降りてきた。


「プピッ、ピピッ」


何かをアピールするように鳴いているので、調理中のクォートさんの所に行き聞いてみる。


「あぁ、お腹が空いているんですよ。ライネ、いつものところで食べてもいいですよ。航と一緒に食べたいのなら少し待っていてください」


ピ、とだけ短く鳴いてライネはクォートさんの肩に留まる。




「航、すぐ用意できるのでもう少し待っていてください。といっても、お昼のメニューとあまり変わりませんが」



「はい、向こうで待ってます。ライネ、こっちおいで。」



そういうと、ライネはまた僕の肩まで飛んできて、ピ、と鳴く。





それから5分くらいで料理を持ってきてくれるクォートさん。

さっきの一件で少し意識してしまう。


出てきた料理は、パンとチーズとサラミ、それから干した野菜と豆のスープだった。


「こんなものですみません。地上に降りれば新鮮な食材が食べられると思うので少し辛抱してくださいね」


「ありがとうございます。やっぱりクォートさんは食べないんですね」



「えぇ、私は水で。ライネ。こちらへ」


そう言って、止まり木と雑穀の入った容器、水の入った容器をクォートさんの前に置いた。

肩のライネは一度クォートさんの指に留まって、止まり木の前まで近づけてもらっていた。



「それでは、どうぞ食べてください。おかわりもありますから足りなかったら言ってくださいね」


「はい、いただきます」


そうして僕は手を合わせてからスプーンを取るのだった。

10話まで1週間でたどり着くことができました。

これからも余裕があるときは複数投稿していければと思います。

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