プロローグ
初投稿です。
流行りのVRゲーム小説を書きました。
不快な金属音によって目が覚める。眠い。
目覚まし時計を止めては寝坊してしまう。しかし時計の音は耳を劈くようで、とてもではないが耐えられない。
仕方なく俺は時計を止め、朝食の支度をする。支度と言っても、ご飯を炊くだけだ。
納豆の蓋をビリビリと剥がす。納豆特有のねばねばがビニールにくっつき、取るのが億劫になってしまった俺は、それを気にせずごみ箱に捨てた。
これではねばねばが少しついてしまうが、そんなことを気にしていては納豆は食べられまい。
納豆にたれをかける。俺はこのたれをかけるのが苦手だ。上手く封を切ることができずに、手にたれがついてしまった。
よく混ぜ、その後に切ったネギを乗せる。そして混ぜる。
丁度良く炊けたご飯を茶碗に盛り、それに納豆をかけ、俺は頬張る。
決して不味いわけではないが、食の幸せを感じられるほど贅沢ではない。
特に何もなく朝食を食べ終えた俺は、皿を洗う。この冬の時期では、ただでさえ面倒な皿洗いが大きな苦痛を伴う。
茶碗を食器棚に戻した後、俺は着替えをしなければならなかった。なぜなら、働いているからだ。
冬になると厚着にしなければならない。それだけ、時間も手間もかかり面倒なのだ。
俺は鞄を持ち玄関近くの洗面所で顔を洗うと、鍵を閉めたことを一度確認して家を出た。
……不快だ。
通勤中、俺は考えていた。人間しなければならないことが多すぎる。まるで天国のような、のんびり暮らせる場所は無いものか。
ネットで現実逃避などできるわけない。それは一時的なもので、結局は人間の身体に依存してる以上は食べなければならない。働かなければならない。
むしろ、現実逃避することは人間にとって不利益である。それだけ、余裕が失われていく。
だが、この通勤という本来なら苦痛の時間を、考え事をすることでやり過ごしていることは確かである。天国について自分の勝手な妄想を考えるだけでも、気が紛れた。
突然、額に痛みが走る。
どうやらあまりにも考え事をし過ぎて、電柱にぶつかってしまったようだ。
恥などなかった。それよりも、この額の痛みがこの現実をはっきりさせ、日課を邪魔されたことが不快だった。
自動ドアが開き、そこにある機械にカードをかざすと、電子音が鳴る。俺は出勤した。
昔では一部の大企業だけだったが、今は零細企業にもベンチャーにもある。
俺は自分のパソコンを立ち上げると、「被験者データ」という名前の表を開いた。
俺はそれを見比べ、データの法則性を見つけると、それを"実装"する。
この会社では他人の役に立つことはほとんどしていない。この会社に客が来ることもほとんどない。たまに物好きな研究者がやってくるのみ。
それでも、この会社では月に五千円の給料が出る。
毎月貰う18万円の国民配当と比べれば雀の涙ではあるが、好きなことをやってわずかでもお金がもらえるのは嬉しい事だ。
人工知能の研究は、本来は大人数でやるべきものである。
従業員が4人のこの会社がやるべきことではない。しかし、こうやって人数が少ないからこそ、仲間として楽しく研究ができるのだ。
俺が17歳の時、人工知能の大きな進歩が始まった。人工知能によって可能になった国民配当制度によって。
昼食の時間。俺はこの昼食をとる時間がたまらなく楽しい。仲間たちと頭の良さそうな理系風の話をするのが好きだった。
朝と変わらない質素さは、今の俺たちにとってはむしろ好都合である。
「なあ、面白いこと思いついたんだけど」
俺は自分の妄想を披露することにした。
卒業論文を書かなければならないのでしばらく投稿できません。