三人目 下半身麻痺の佐藤よし子さん その1
今回語り部として、佐藤さんが出てきます。なかなか不思議な感じの人で、人のことを見透かしたようなとこがありますが、凄くいい人です。佐藤さんからは、飯田義人のルーツにまつわる重要な話が出てきます。
右近さんの初家事援助が終わって、目をつぶりながらベッドへ横たわり…ふと昔の事を思い出しながら眠っていた。それは今の介護事業所に入る前、ヘルパーの資格をとり直ぐに入ったとあるの訪問ヘルパーの事業所で働いていたときの事だ。
遡ること二年ほど前…そこは女性ばかりが活躍する職場で、主に主婦をされている方が大半を占めている。男が働いてるとなるとそれはそれは、嫌でも悪目立ちしてしまうような…そんな現場だった。
飯田「さあ頑張って働くぞっ!」
ここでは、契約社員という形で働くことになった。
飯田は、ヘルパーの資格を取得し3週間ほどたってやる気に満ち溢れていた。
「あぁっ!おはよう。早いね。」
サービス責任者の岸さんだ。サービス責任者とは、登録ヘルパーさんの…まあリーダー的存在で纏め役。シフトとかも管理していたりする。
飯田「おはようございます。」
岸さん「タイムカード一緒に押しとくね。」
飯田「あぁ、ありがとうございます。」
ここはE病院附属ヘルパーステーションで建物は、エレベーター付きの5階建てで結構大きなところ。
二階がヘルパー事業所だったりする。朝来たらこうして三階にあるタイムカードを押してから、四階の更衣室でヘルパー用の作業着を着て二階のヘルパーステーションへ向かいヘルパーステーションに入る。
岸さん「あぁ、飯田くんおはよう。…近いうちに行ってもらいたいとこがあんねんけど。」
飯田「おはようございます。どんなところですか?」
岸さん「半身麻痺の残ってる人で、移動は車イスなんよ。」
飯田「そうなんですね。何か他に持病とかはあったりしますか?」
岸さん「坐骨神経痛…てわかる?尾骨周辺に慢性的な痛みが出る病気があるねん。」
飯田「大変なんですね(´・д・`)」
岸さん「それで飯田くんには、佐藤さんの病院から自宅の往復移動と病院内介助をお願いしたいねん。今日朝の送迎が終わったら一緒に面談行くから。よろしくね。」
飯田「わかりました。じゃあ送迎7:30からの人迎えに行ってきます。」
朝は主に車で利用者さん自宅へ向かいE病院までの送迎をしていた。E病院は透析をしているところで、僕の通勤しているEヘルパーステーションと繋がりが深い。なにせ、E病院附属Eヘルパーステーションて言う名前だからな…。
場所もヘルパーステーションから歩いて5分ほどの場所にあるところだ。送迎する人は、いわゆる透析患者さんなのだが、数人僕が受け持っている。また後の話で語ることにしよう。
3時間後、佐藤さん自宅前
サ責(サービス責任者)の岸さんと一緒に佐藤さん宅までやって来た。
「ピーンポーン♪」
佐藤さん「はーい…どうぞぉ…」
佐藤さんの声が部屋の奥から聞こえてきた。
岸さん「お邪魔しまぁす。」
飯田「お邪魔しまっす」
「ガラガラガラァ」
「ドッドッドッ…」
「すーーー…」
横引き扉で中は、昔懐かしい和室の作りの自宅だった。玄関先に外出用の車イスが置いてある…電動式の、レバーで自走出来るタイプのようだ。初めて見た。
佐藤さん「あぁ、いらっしゃい。新人さん?」
岸さん「はい。電話してた新人の子です。」
飯田「飯田と申します。よろしくお願いいたします。」
佐藤さんは、家の中でも車イスに乗っている。
佐藤さん「いやあ~凄く丁寧に。こちらこそよろしくね(´ω`)」
飯田「はい(´ω`)」
佐藤さん「出身はどちら?」
飯田「九州の方の佐賀県になります。」
佐藤さん「へー( ´・∀・`)佐賀県!!そういえば足音が静かやね。猿飛サスケの末裔やったりして(*^^*)」
飯田「そうかもしれませんね…なんちゃって( ̄▽ ̄;)(この人細かいとこ良く気がつくな)」
佐藤さん「はっはっは。面白い人やな。」
岸さん「早速やけど飯田くん、家事援助で一時間掃除とか皿洗いしてくれる?(゜o゜)」
飯田「えっ!!」
岸さん「私用事あったの思い出してん。さっきメール来てて、ヘルプ行かなあかんから。いける?」
飯田「まあ大丈夫と思いますが…」
岸さん「わからんとこは、佐藤さんに聞いたらいいから。」
飯田「わっかりました。(ざっくりしてんな)」
岸さん「そう言うわけで佐藤さん、もう行くね。」
佐藤さん「忙しそうやな岸さん。」
岸さん「ほんとそうなんよ(゜ロ゜;じゃあねっ、バイバイ。」
佐藤さん「気を付けてね。」
飯田「行ってらっしゃい。お気をつけて。」
岸さんは、早々に立ち去った。ヘルパーからの救援要請がショートメールで入ったようで、助けに行くようだ。こんなことがしょっちゅうあるみたいで、ヘルパーステーションでも、電話を貰って行く急な要請も利用者から良く入る。それだけ岸さんを頼る利用者さんやヘルパーさんが多いみたいだ。
飯田「さあ…掃除しますね。どこしましょうか?」
佐藤さん「じゃあ、台所に皿置いてるから洗っといてくれる?終わったら畳に軽く掃除機かけてくれたらそれでいいよ。」
飯田「わかりました。」
皿洗いといっても大した数はなくて、5分ほどで終わった。畳やそれ以外の床下も掃除機で軽く吸って、その上から水拭きシートをかけていく。それも10分ほどで終わった。
飯田「佐藤さん終わりました。そんなに汚れてなかったから早く終わった( ̄▽ ̄;)」
そんな作業の合間に佐藤さんは、茶菓子の用意をしてくれていた。
佐藤さん「お疲れさん、早かったね。お菓子食べる?お茶も入れたよ。一緒に食べよう。」
飯田「あっ…でも…(規則で何か貰ったりするのあかんねんけどなあ)」
佐藤さん「岸さんも気にしてたけど、食べてくれてたよ。」
飯田「えっ?!…うーん…(゜ロ゜;じゃあ、少しもらいます(´ω`)いただきます。(寂しいんやろうなあ。お腹も空いてるし頂くことにしよう)」
佐藤さん「ヘルパーさんて大変やね。あっちこちいって手伝いしてきて。」
飯田「?…ん?…あぁ、そうですね。最近は僕も自転車であちこち行くんでなかなか大変な部分もありまして。」
佐藤さん「利用者の要望にも嫌な顔せんときく…耐え忍ぶ者…ってことやもんね(´ω`)」
飯田「ええ…そうかもしれませんね。でも佐藤さんみたいな人がおるから、有りがたいし勉強になります…」
佐藤さん「こんな話知ってる?むかーしむかし…物凄く物作りの得意な一族の集落がありました。人々は、様々な物を作り生計をたて暮らしていました。農作物や衣類や調理に使う包丁やまな板と様々な物を器用に作り上げる、そんな一族の町があったそうな。となり町や城のある城下町にまで卸売りに行くこともありました。ある時、1人の男がその一族の品々の噂を聞きつけ、村にやって来ました。 その男はどういう訳か戦に使う武器を作ってくれと一族の長に頼み込んできたという。だが一族の長は戦を嫌い断ったそうな。頼み込んできた者は、一度城に戻り城主に報告。すると今度は城主自ら部下数名を引き連れやって来た。」 続く
一話に纏めきれず書ききれませんでした。後編楽しみに待っていてください。