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万感ホームヘルパー  作者: 鉄ろくろ
2/11

二人目 左片麻痺アルコール中毒の右近さん その1

この話は、僕がまだヘルパーとして間もない頃に体験したことが含まれています。

森さんの介助をはじめて1ヶ月たったころ、朝方10:00過ぎ頃に連絡が入った。


「ブーン、ブーン……ブーン、ブーン……

ブーン、ブーン……」


飯田「ん…イタタタタァ…飲みすぎた…か…(~_~;)……ん?!何時?」


目覚ましが鳴ってるなあとスマホをみると、目覚ましのバイブレーションじゃなくて、ケアマネの砂押(すなお)さんからの着信電話だった。奇しくもモーニングコールになってしまった。




「ブーンブーン……ブーンブーン……


ブーンブーン……」


スマホの着信に出る。




飯田「はいもしもし、何でしょうか?」


砂押「あ、飯田くんおはよう」


飯田「おはようございます。」


砂押「入ってほしいとこあんねんけど…今時間大丈夫かな?」


飯田「はい…大丈夫です( ´・ω⊂ヽ゛どんなとこでしょうか?」


砂押「実はー……(~_~;)急に空いたとこがあんねんけど…」




砂押さんにしては、珍しく歯切れの悪いしゃべり方やな、これ面倒臭いやつや( ̄▽ ̄;)




砂押「家事援助で1.5時間なんやけど、詳しく話したいんで今日事務所寄れるかな?」


飯田「昼過ぎの15:00頃でもいいですか?」


砂押「はい15:00頃ですね待ってます。……じゃあまた後で」


飯田「はい後で。」


「プッ」




スマホの着信が切れた。


なんとなくやな予感がするなあ( ̄▽ ̄;)そう言いながらコップにインスタントコーヒーの粉をいれ、瞬間湯沸し器で沸かしたお湯を注ぐ。砂糖はスプーン一杯、牛乳を少し入れてスプーンでかき混ぜる。


「カキン、カキンキン♪」


混ぜ終わったら、軽くススル。


飯田「はぁ……ウマイな。コーヒーはやっぱり酸味の無いものに限る。このエスプレッソ感が最高(´ω`)」


飲み干した後、軽くシャワーで寝汗を流す。


「シャーーーー!!」


飯田「ふぅーーー……」


10分くらいでシャワーを終え、体をタオルでまんべんなく拭く。着替えたらテレビをつけてみた。今日もいい天気だなあと、空を眺める。


日々のこうした時間が、精神的に脆い飯田ヘルパーにとって、とても大切なひと時なのである。


飯田「さあ…行くか。」


ホームヘルパー…訪問ヘルパーともいうが、人力で動くチャリンコ(自転車)移動が基本的な移動手段になってくる。ヘルパー事務所へも当然チャリンコで移動するのだ。


自宅から15分くらいチャリンコを漕ぐと、僕の所属する介護事務所に着く。


「キキィーーーィィ」


飯田「はい、とうちゃーく」




事務所はとあるマンションの一室にあり

、そこに事務所を構えている。




飯田「こんにちはー、来ました。」


砂押「こんにちは。少し待ってくださいね。」


室内には張り紙が凄くあって、ファックスや複数の電話機、ノートパソコンも五台ほどデスクに置いてある。カレンダーには予定がびっしり敷き詰められていて、付箋が張りまくられていた。


砂押「今さっき帰ってきたばっかりなんですよ。中井さんも、もうすぐ帰ってくるんで、そこのソファに座って待っててください。」




中井さんとは、この介護事務所の管理責任者兼サービス責任者で、中井社長と呼ぶ人もいる。まあこの介護事務所の社長さんだ。話を聞いておいた方がいいということかな?


10分後


中井「ただいま、ふー…(;´д`)」


砂押「お帰りなさい、大変でしたね。あ、飯田くん来てます」


飯田「お帰りなさい、右近さんの件で来ました。」


中井「あ(;゜0゜)!そうそう右近さんや、あのねー入ってた人が急にやめてしまって、…来なくなったんですよ。電話もれんらくとれなくなって…」


飯田「え?なんでなんすかね?」


砂押「右近さん普段は凄く好い人なんですけどね、お酒を飲むと性格が180度変わっちゃうんです。だからお酒買うように言われたら、一度事務所の人に相談しますねって言って、事務所に連絡してください」




飯田「実際そんな人いるんですね…


(えー…(;´д`)そんなとこに入るんか俺…)わかりました。そのときは連絡いれます。そのときは


砂押「右近さんとこは、うちの事務所でもいろんな人が入ってんねんけど、皆共通した苦情をゆってくるんですよ」


飯田「え?そ、それはなんですか?(゜A゜;)ゴクリンコ」




砂押「お酒を飲むとすぐ『お金貸してくれんか』って、せびってくるって。それで皆右近さんは、はずしてほしいって。 」




飯田「まーじですか?Σ(゜◇゜;)」




中井「ほんとなんですよ。私もホーンとに困ってて、抜けたシフトのとこ行ってたんですよ。(;´д`)」


飯田「ハッハハ…( ̄▽ ̄;)…」


砂押「私も金貸してくれって言われた事有りますよ、ほんまあのおっさん(-_-#)」


飯田「ハハハ( ̄▽ ̄;)(あのやさしい砂押さんにそこまで言わせる右近さん、要注意やな)」


中井「もしもう無理ってなったら言って貰ってもいいんで、行って貰えますか?」


飯田「まあ…行ってみます。」


中井「ありがとうございます。じゃあ早速あさって水曜日の10:00から1.5時間で。明日昼過ぎの14時から面会しますね。」


飯田「わかりました。よろしくお願いします。明日は直接右近さん自宅前まで行っていいですか?」


砂押「いいですよ、後で住所メールしますね。」


飯田「ありがとうございます。それじゃ、これで一旦失礼して良いですか?」


砂押「はい、お疲れ様です。また明日お願いします。」


飯田「お疲れです。また明日。」


エレベーターに乗り一階に着く頃に、早速右近さん自宅の住所が記されたものがメールで来た。


ついでやし、右近さん自宅見ていこうかな…帰り道にあるみたいやし。ちょっと見てみよう。


右近さん自宅付近


ここは懐かしの○○中学、わが母校やんけー(´ω`)なんか外側は余り変わらんな。中は、かなり改修されてる。色んな思い出がある…その道沿いか( ̄▽ ̄;)あー!あったあった。


飯田「こっ…れは…( ̄□ ̄;)!!」


忘れもしない小さい頃に見た、赤色と紫の霧が黒いもやのカーテンで覆った感じ…今飲んでるな(´・д・`)真っ昼間やぞ。


赤と紫と黒の霧を同時に見たら、近づいちゃいけないと、小さい頃からそんな場所には近づかないようにしていたが…仕事やから仕方がないよな(;´д`)うーん…まあ要注意なんは、間違いないな…この辺て確か居酒屋が~?あるーーーーー!!!ね( ̄▽ ̄;)


なんかオチが見えたようなそうじゃないような…。まじかよ。はぁ( ´Д`)…帰るか。特に何か寄り道もしないでまっすぐ自宅へ戻った。


とにかくなんか疲れた。


自宅について直ぐベットへ横になり少し寝ながら色々考えた。最近よく濃い色の霧を見るせいか、それともその先の事を考えて疲れるのか…いや両方か。この仕事気苦労が絶えない。こんなものが見えるせいで余計に。


その夜


もう何年も夢なんか見なくなってたのに、この夜は鮮明な夢を見た。


夢の中


「義人………だから良く聞きやあ。…」


男性が呼ぶ声が聞こえる。何となく聞き覚えのあるような声だ。


名前呼ばれたみたいやけど、義人て呼ぶのは親か…もしかしてお爺ちゃん?と思ってると顔が見えてきた。なんか目が覚めてきた。夢の中なのに目が覚めるって変な感じなんだが。


爺ちゃん「よお、久しぶり。元気しとったんかいな?わかるか?」


義人「お爺ちゃん?!どうなってんのこれ?俺死んだんか?」


俺の爺ちゃん。もう亡くなってこの世にはいない。一番会いたかった人。


爺ちゃん「そうじゃなか(´・д・`)義人の夢枕にたっとるばい。(´ω`)」


義人「まじかよ。Σ(゜◇゜;)これが噂の夢枕か。てか、死に際と墓参り行けてなくてごめん…俺が一番家族の中で出来が悪くて…最近までニートやってて、引きこもってたから…(つд;*)ずっと謝りたかったんや」


爺ちゃん「よかばい、よかよか。義人は家族の中で一番やさしか孫たい。わしが良ぉ~くわかっとぉと(´ω`)」


三歳くらいの時に九州の田舎に行ったときや、関西の実家に遊びに来てくれたときに凄く優しくしてくれたじいちゃん。やっぱり優しいな。


義人「お爺ちゃん(T-T)…もう少ししたら、色々余裕できるからお墓参り行くね。お婆ちゃんにもよろしく。」


爺ちゃん「婆さんも義人のこと大好きったい。わしと向こうで元気にしとるよ。義人んこと話しとくばい。」


義人「ありがとう…で、お爺ちゃんなんで俺の夢枕に立ってんの?」


爺ちゃん「あっ!そうそう。」


そう言うと両手をスッと見せてきた。手のひらは、ポーッと白く光っている


爺ちゃん「雲散霧消(うんさんむしょう)この両手の力はのう、代々我が家系の血筋に受け継がれて、蓄えられてきた力。何世代もわたってから、使える者が出ることもある。」


義人「?!…ん…爺ちゃんもこの力があったの?受け継ぐ?あの霧見えてたの?その手のひらは何??え?俺の力のこと解ってたん?なんで教えてくれへんかったんや?」


爺ちゃん「まあ急くな。ゆっくり説明する。この力の名前は、『万感雲散霧消(ばんかんうんさんむしょう)』ゆうてな…遥か昔から血筋のものが引き継いできた。


目で色んな感情を理解し、手の平で邪気を払う…色んな人を引き付けがちやけどな…災いも呼び寄せがちや。」


義人「でも爺ちゃん幸せに静かに暮らしてたんちゃうんか?そんな災いとかあったんか?」


爺ちゃん「だから静かな田舎に住んでたんや(´ω`)使わなんだら、何も起こることもない。義人に会って、すぐに能力の事気付いとったばい…可愛い孫やけんね。意識せなんだら自然と消えていきよぉこともある。だから言わんようにしとったんよ…義人すまんな(´・д・`)」


義人「そうやったんか( ̄□ ̄;)!!でも俺、ずっと見えとったよ霧が。消えんかったよ。」


爺ちゃん「見えるだけやったら災いは向こうから来ることはないんや。この、雲散霧消を使い続けると、その力に怯えるもんやすがる人が出始める。そうなると大変や。最近その力が強うなってきたみたいやな…使ったんか?」


義人「イヤイヤイヤ…(・・;)使って無い筈やけど。」


爺ちゃん「どうやら、潜在的な力はわしより上みたいやのう。わしの小さい頃は見えんかった…直接手で触れることで邪気を払うこともできるしそうしないことも出来る。決めるのは、自分の心次第。もし黒い霧に覆われて豹変した人おったらこの手を使うんや、わかったな?義人」


義人「教えてくれてありがとうな、爺ちゃん。手で触れる…あっ!そういえば森さんの介護してたときに、背中を何回もタップしたな( ̄□ ̄;)!!あれ首閉めてきたからついギブアップのつもりでやったんやけど、…てかカレー作ったからあの闇の衣消えたんちゃうかったんか?(・・;)」



じいちゃん「そうか、ヘルパーさんなったんか。あない小さかった義人が…立派や…偉いな。ヘルパーやったら、この力正しく使えるかもなぁ。義人両手を出してみい(´ω`)」


義人「こう?」


そう言って手のひらを前に出すと爺ちゃんは、俺の手の平にあの白く光る手の平を重ねた。


義人「あれ?!」


その瞬間その白い光は、俺の両手にゆっくりと移った。暖かくて優しいそんな感じの温度が手に移った。


爺ちゃん「雲散霧消…確かに渡したぞ。またくるよぉ……」


爺ちゃんが徐々に消えていく。


義人「え?雲散霧消?またくるの?!いつくるの?ちょっと…ちょっと待って( ̄□ ̄;)!!…」


義人「ちょっと待って、まだ聞きたいことが(=_=)!…ん??」


気がつけば朝になっていた。


ほんとに鮮明な夢だった。夢枕か…内容も良く覚えている。手のひらを見てみると、今まで何ともなかったのにうっすらと白く輝く光が放出されていた。


義人「夢じゃ無かったのか!」


この白い光、どうやら自分の意思でONとOFFの切り替えが出来るらしい。両手のこの感触…万感雲散霧消(ばんかんうんさんむしょう)てやつか?爺ちゃんて何者やったんや?


こんなこと誰も信じへんやろうな(・・;)何のためにあんなこと伝えてきたんやろうか?まだまだ謎が深まるばかりだった。


さあ気を取り直し…今日は右近さん初面会に入る。いつものように寝汗を流すためにシャワーで流し、体を拭いたらブラックコーヒーをいつも通りに飲み干す。私服の一時だ。気持ちもシャキッと切り替わる。


そして14:00の5分前右近さん自宅扉前


………霧が黒いだけ。前に比べたら大分落ち着いて静かだ。それほど怖く感じない。あの夢の中の出来事…爺ちゃんの白く光る手…受け継いだから…?その影響…?今日は右近さんの面会だ。そろそろ砂押さんも来る頃だ。


砂押「飯田くんこんにちは。待ちましたか?」


飯田「来たばっかりです。右近さん今大人しいですか?」


砂押「昨日入ってたヘルパーさんによると、酒も買ってないし普通やったって。」


飯田「じゃあ行きましょうか。」


いよいよ右近さんとの初対面。ドア前のインターホンを押す。


「ピンポーン♪」


右近さんの足音がドア前から聞こえて来る。


「ガチャッ」


扉の鍵が開いた音だ。


右近さん「はいよぉ。いらっしゃい。」


うおっ!!!スッゴいアフロヘアーの人来た!!ロッキーに出てくるアポロをリスペクトしてる年代の人なんかな?左片麻痺やから杖つきながら立っている。


砂押「どうもこんにちは。新しいヘルパーさん連れて面会に来ました。」


飯田「こんにちは、飯田と言います。よろしくお願いします。」


軽く挨拶を済ませて、部屋の中へ入る。部屋の中は、電気がついていなくて薄暗い。工事か何かで使う工具が通路脇や部屋の中に積み上がって、敷き詰められている。そのせいで通路は通るのがやっとだ。


右近さん「好きなとこに座って」


介護ベットへ座る右近さん、その脇にワンカップや、酒瓶が並んでいた。


砂押「右近さんまたこんなに飲んだんですか?」


右近さん「これはもう何週間も前のや。中に入ってるのは水。」


髪の毛をワサワサっとかきはじめた。


砂押「確かめさせてもらいますよ。」


そう言うと砂押さんは酒瓶や、缶をひとつずつ臭いを嗅いで確認していた。


砂押「本当に水みたいですね…」


凄い警戒してる。隠してたりしてるのか、探っているようだった。


砂押「明日から毎週水曜日に入ってもらうことになった飯田くんです。家事援助で10:00から1時間半やってもらいます」


右近さん「よろしくね(´ω`)」


飯田「あ、よろしくお願いします(・・;)」


ほんとにアルコール中毒何かなってくらい、いい人そうに見えた。


右近さん「軽く買い物行って、余った時間でインスタントの焼きそばとかラーメンを作ってくれたらそれでええよ。」


飯田「わかりました。」


砂押「右近さん財布の中のお金大丈夫ですか?」


右近さん「前もって来た分がまだあるから当分持つよ」


どうやらお金の管理はケアマネの砂押さんに任されてるらしい。


右近さんは、仕事が出来ないのでお姉さん夫婦からのお金で生活している。でも個人で所有していると一気に使ってしまうので、事業所で一旦預かり一週間に一回の分割で渡すようにしている。お姉さん夫婦にもそうするよう言われている。


砂押「右近さんが食べ物とか飲み物ほしい物有るときは、飯田くんが右近さんからお金預かって買ってきて下さいね。お金無くなったら知らせてください。出しますので。」


飯田「わかりました。」


砂押「それじゃあこんな感じで明日からよろしくお願いします。それじゃこれでおいとまさせてもらいます。」


飯田「右近さんまた明日来ます。さようなら。」


右近さん「おう、気ぃつけておいでよ。」


二人とも会釈してドアをゆっくり閉めて外に出る。


飯田「凄いアフロヘアーでしたね。右近さん何ヵ月かに一回パーマ当ててるんですか( ̄□ ̄;)!!ロッキーのアポロみたい」


砂押「私にはちょっとわかんないですね。確かに凄いアフロの高さ…30センチくらい有りますよね。前見た時よりふっくら厚みが出てきたと言うか…( ̄▽ ̄;)明日からよろしくお願いします。じゃあ行きます。お疲れ様。」


飯田「お疲れ様でした(´ω`)」


その後で扉の方を見てみるとうっすらとした灰色。たださっきよりも若干ダーク感が増してるかな?あと右近さんの自宅近くにある居酒屋が気になる…何だろうな?


飯田「…さあ帰ろか」


途中軽く買い物したりしてそのまま自宅へ帰る。


自宅にて


飯田「……さぁてとぉ…(´・д・`)鎖かたびら用意するか…何処置いたかなあ?あと…伸縮式の棍棒あったな…備えあれば憂いなし…」


鎖かたびら…刃物や槍を通さないといったもので、チェーンメイルとも言う。アルミと銅の合金製で小さなくさりで編み込まれており昔の物に比べ凄く軽く薄い。某ゲームでお馴染みのあれだが、これは現代の最新版。上からジャージの上着でも被せれば目立たないだろう。


伸縮式三節棍…折り畳み式の棍棒。携帯するときは縮めてコンパクトに収納でき、丈夫で軽い素材で出来ている。ボタンを押すと1節ごとに伸びて、チェーンを緩めてヌンチャクのように使うことも出来るが、チェーンを引き真っ直ぐな長い棍棒にして使うのが一般的になる。


どちらも飯田が過去使用していた護身用アイテムである。


飯田「備えはこんなとこか。」


翌朝


「シャァァァァァ…」


飯田「さあ着替えるか。」


いつものように寝汗をシャワーで流すと髪を乾かし、着替えていった。肌着の上から鎖かたびら、その上からジャージ上着を来た。


飯田「これでよしっ…と」


それが済むと、コップにインスタントコーヒーをスプーン一杯入れ、お湯を注ぎブラックのままゆっくり飲み干しそのコップをテーブルの上に叩きつけた。


「タンッ!!!」


飯田「よし、行くか( ̄^ ̄)」


右近さんの自宅までチャリンコでおよそ20分程漕ぐと着いた。


「キキィーー!!」


ブレーキをかけ、自転車を駐輪場へ入れると鍵をかけてとめた。


9:55 右近さん自宅前


「ピンポーン♪」


インターホンをならした。………出ない。


飯田「あれ??!も一回鳴らそうか。」


「ピンポーン♪」


右近さん「…はぁー……ぃ…」


飯田「あ!声したな。杖をつく音がする。」


少しずつドアに近づく音が大きくなってきた。


「ガチャッ」


右近さん「よう来たね…どうぞ(~_~)」


飯田「失礼しまーす。」


凄く眠そうな顔で、さっきまで寝ていたようだ。声も気のせいか、かすれた感じになっている。部屋に入って直ぐにアルコールの臭いがした。昨日飲んでて二日酔いかな?昨日は無かった500ml缶ビールが3缶転がってる。自分で買ってきたのか…


飯田「えー…とじゃあ、買い物から行きますね。なに買ってきましょうか?」


酒は絶対連絡してと言われてるから気を付けないとな。


右近さん「味噌ラーメン、あと焼きそば買ってきてくれんかね。」


飯田「それは…インスタント麺ですか?」


右近さん「そうそうそう。あとぉ…缶ビール500ミリの2缶と、焼酎1パック買って来てくれんかね?」


飯田「お酒買うときは、事務所に連絡するように言われてるんですよ。ケアマネさんに電話させてもらいますね。(来たよ早速( ̄▽ ̄;)」


右近さん「ん…あぁ…どうぞどうぞ( ̄ー ̄)」


「トゥルルルル♪トゥルルルル♪トゥルルルル♪」


砂押「お疲れ様です。飯田くん何かあったの?」


飯田「お疲れ様です。右近さんに缶ビール500ml2本と焼酎1パック買うように言われたんですが、どうしましょうか?」


砂押「この前飲んだばっかりやのになあ…最近飲みすぎなんですよね。焼酎は絶対ダメ却下です。度数があれ20以上有るから…体に障るし…だから缶ビール350ml2本だけで我慢してもらってください。残りは後日別のヘルパーさんが入った時に買いに行くようにしますと行ってください。」




飯田「右近さん今電話してるんですけど、焼酎は右近さんの体に障るんで買えるお酒はビール350ml2本だけなんですが…残りのお酒はまた別のヘルパーさん入ってるときにゆって下さいって事ですが…」


右近さん「…じゃあそれでええよ…焼きそばと味噌ラーメンもね。」


飯田「わかりました。じゃあスーパーまで買ってきます。」


30分後


飯田「買ってきました。味噌ラーメンと焼きそば、それと缶ビール2本です。」


右近さん「あぁ( ̄▽ ̄)そこ置いとってぇくれるぅ?そんで、焼きそば作ってくれんね?」


飯田「わかりました。…右近さんて九州の出身ですか?」


右近さん「そうやぁ。よぉわかったね?」


飯田「僕も博多生まれなんで、お爺ちゃんの方言とかよく聞いてました。でも育ちは関西なんですけどね…」


右近さん「あぁそう(´・д・`)?じゃあ…ほら」


さっき買った缶ビールを持って飲むように促してきた。


飯田「うち仕事中にお酒飲んだりとか禁止なんですよ。すみません。」


右近さん「俺ぇの酒は飲めへんてぇのか?」


飯田「クビになりますんで。」


「カッ!プシューッ」


缶ビールを開ける音がした。と同時に色具合もダークレッドな感じに包まれ飲みだした。


飯田「じゃあ焼きそばを今から作りますね。」


来た…これかと思った。みるみる表情が変わるのがわかったが、言われていた焼きそばを作ることにした。


右近さん「出来たらこの皿に入れて持ってきてよ…」


飯田「はい、わかりました…」


袋麺の焼きそばで、5個入りの内1つを取り出し開けた。


飯田「水をフライパンにいれて、麺も同時に入れて煮込む…か。ある程度柔らかくなったら、焼きそばソースの粉を入れて混ぜながら水気を飛ばす…か。オッケーわかった。」


数分後


もうすぐできるな。


「プシュッ!!!」


飯田「えっ?!やっぱりか…」


右近さん2本目の缶ビールいってるやんけ(´・д・`)


右近さん「出来た?つまみにするから持ってきて。」


飯田「今持っていきます。」


出来上がった焼きそばの皿を右近さんの前に置いた。ぱっと見たら顔も赤くないし酔ったように見えへんけど。


飯田「どうぞ」


皿と同時に箸も添えて右近さん前に置いた。すると直ぐに箸を取り食べだした。お腹空いてたんかな?


右近さん「ズゾゾゾォー…うん、美味いなあ(´ω`)」


食べてる間は凄く大人しい右近さん。リラックスしてるように見える。好きなんやな、インスタント焼きそば。


右近さん「はあぁー…ごっそさん、はいっ!」


飯田「あ、皿洗いますね。」


洗ってる間右近さんは、残りのビールを飲み干して眠くなったのか、目が閉じ始めていた。しばらく洗っていると、背後から気配が…


右近さん「…トイレ…」


飯田「あ…通るんすね。どうぞ」


通路が狭いので、調理台側に体を寄せた。その後ろを右近さんが通った…。


飯田「さっきと目付き変わってない?」


気にせずに後片付けの皿洗いをした。


「ガチャ、キー~…バタン。じょろろろろ~…」


トイレから用を足す音がする。


「…臭ってきたなあ( ̄▽ ̄;)酒飲みすぎで尿がキツイ臭いなんかな?」


飯田「さあ次は部屋の掃除やな。」


さっきまで右近さんが食べていた辺りをよく見ると、結構服が散乱していて、臭いも酸っぱい臭いがしていた。まずは散らかった服を拾い集めて洗濯機へ…


右近さん「よ~う…何してんねん…」


右近さんの表情がさっきまでと明らかに違った。表情はみるみる変わり、険しくなってきた。


飯田「いやぁ…掃除ついでに服洗おうかと思ってまして…掃除するように事業所からも言われましたので。」


右近さん「だれが掃除しろっていったあ…あぁ?!」


飯田「右近さん?!ケアマネの砂押さんとケアマネの中井さんですけど…」


右近さん「佐々木さんじゃないんか?」


飯田「あ…もしかしてサ責の中井さんですか?」


右近さん「違うわい〇〇介護の佐々木や。」


飯田「佐々木さんはいないですよ。サ責の中井さんを聞き間違えたんじゃ…サ責を佐々木と聞き間違えたんじゃ…」


右近さん「違うわい…女の佐々木て言いようたよぉ……?」


右近さんの顔付きが変わった…目がおかしい…あんなに血走って座った目…


飯田「右近さん?!」


右近さんは、手に包丁を持っていた。どうもさっきから様子がおかしい…


右近さん「さァ~、さ、佐、ざ、さ、あ~~ー?!」


次の瞬間右近さんが背中に切りかかった。


「ジャキキーン!!!!!」


右近さん「んがぁ?!…」


飯田の背中から金属同士がぶつかる激しい音がした。

鎖かたびらで助かった。


「スーーーーー…ジャキンッ!」


背中に仕込んでいた三節昆をそーっと出した。そしてすぐそれは、真っ直ぐな棍棒へと変わった。


次の瞬間両手の平が白く光った。


飯田「手のひらが反応している。祓えちゅうんかじいちゃん…嫌な感じの正体…どうやらそれが右近さんの酒癖の悪さの正体か…。」


パート2へ続く

この話は、長くなり次でこの右近さんの話は終わります。少々変わった人で、でもなんか憎めない人の困った話です。自分なりにどう処理していいやらで、困った時期の話でもあります。

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勇者 戦い 敵 日常系 是非見てください。
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