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女湯sideⅡ

 ソフィアが言う。


「そんなに固くならなくて平気だよ~。それにさ、わたしからすればフィオナちゃんの方がスタイル抜群の美少女ちゃんなんだけどなー? 髪は綺麗な銀髪だし、肌もつるつる! それに、歳も同じくらいなのに、どうしてこんなに胸がおっきいのーっ!」

「ひゃわぁ!? せ、聖女さまっ!」


 ソフィアから湯の中であれこれと身体を触られ、妙な声を上げてしまうフィオナ。まるで姉妹のようにじゃれつく二人を見て、エステルたちも口を開く。


「聖女様の仰るとおりよ。正直なところ、私のような体型の女から見ればフィオナちゃんは羨望の固まりみたいなものよ」

「ニャ。フィオナはイイニオイだし、ふにふにしてるし、優しいから好き!」

「皆さまの仰る通りかと」

「え? え? わ、わたしが?」


 各々の発言に、フィオナは何度もまばたきをする。


密着していたソフィアがキリッとした目で話す。


「フィオナちゃんはさ、もっと自信を持っていーの! あのクレスくんを捕まえたくらいなんだし、こーんな魅力的な身体を持ってるんだから、それを自覚してクレスくんにどんどんアピールしないと!」

「ア、アピールですか?」

「そうだよ。男の人が外でおいたしないように、お嫁さんはちゃ~んと旦那様を魅了しておかなきゃ。この身体はもちろん、笑顔と涙も女の武器だよ!」

「女の……武器!」


 力説して拳を握るソフィアに、フィオナはごくんと息を呑む。

 ソフィアはそこでようやくフィオナから身を離し、ぐーっと背伸びをしてから言う。


「なんとなく想像できたけど、フィオナちゃんもクレスくんも真面目そうだからな~。きっとあんまりスキンシップしてないでしょ? ダメだよー、新婚さんなんてもっとラブラブしないと!」

「ら、らぶらぶですか?」

「結婚して精神的な繋がりは強まっているでしょうけれど……そうね。クーちゃんがあの野獣のようにフィオナちゃんを手込めにするとは思えないし、夫婦関係を良好に保つためにも、フィオナちゃんが積極的に誘うべきかしら。わたしは、あなたたちのプラトニックなところも好きだけれどね」

「ニャー。オスはメスが大好きだからねー。メスがいっぱい甘やかさないと、すぐ別のメスのところにいっちゃうかもしれないにゃ」

「私はそのようなことには知識がありませんが……私が知る限り、妻が優位に立っている家庭の方が上手くいく傾向にあるようです」


 さらにエステルとショコラ、メイドまで続き、フィオナは考え込む。


「そ、そういうものなんでしょうか? もっと、積極的になった方がいいのかな……。他の夫婦さんたちって……も、もっと大胆なんでしょうか……?」

「そうだよフィオナちゃん! 新婚さんはもっとこう、毎晩毎晩がんばりすぎちゃって、こっちが話を聞いていられないよーってくらいに大胆なコトしないと! そうやってラブラブを高めるの!」

「ラブラブを高める……!」


 ソフィアたちの助言に感心するフィオナ。

 結婚して、初夜を迎え、お互いの愛が最大限まで高まったと思っていたフィオナであったが、それでは足りないのかもしれない。

 クレスの性格から考えて、浮気などありえないと思い込んでいたフィオナではあるが、自分よりも魅力的に見える美女たちは近くにだってこんなにいるのだ。将来どうなるかはわからない。

 それに、クレスの命は自分の魔術が繋いでいる現実がある。もうクレスの身体に異変を起こしたくはないし、セシリアが言っていたように精神的な繋がりをさらに強めていく必要があるだろう。その方法もセシリアから教わっているし、幸い、セシリアから預かった『あの薬』もある。


 そう思ったとき、フィオナの中にやる気の炎が灯った。


「……うん、そうですよね。わたし、結婚してなんだか気が抜けてしまっていたような気がします。でも、クレスさんをもっと幸せにするためには、ここからまだまだ頑張らなきゃなんですよね! わかりました! わたし、もっとがんばってラブラブを高めます! 最高で最強なお嫁さんになるんです!」

「あははっ、フィオナちゃんにとっては自分よりクレスくんの方が優先なんだねー。相談ならわたしいつでも受けるからね! そういうときはお城に来て! 時間つくる!」

「二人なら大丈夫だとは思うけれど、何かあればまた連絡してちょうだい」

「フィオナがんばってねー! また薬が必要だったらウチがお店に送ったげる~」

「ご夫婦の良き関係を影ながら応援しております」

「聖女さま……エステルさん……ショコラちゃん……メイドさん……はい! ありがとうございます!」


 ソフィアたちの応援に、フィオナは嬉しくなって手を組み合わせる。

と、そこでソフィアがまたフィオナに密着してくる。


「ところでフィオナちゃんっ。“今のわたし”のときは、『ソフィア』って気軽に呼んでくれていいよー? 『聖女さま』なんて、壁を感じちゃうから寂しいし」

「え? で、ですけど」

「だいじょーぶ。ここにはわたしたちしかいないし、レミウスたちにバレなきゃ問題なしよ☆ わたしね、みんなとお友達になりたいの。こうやって、みんなと一緒に遊んだりするの初めてだから。なんかね、すっごい楽しくて、つい本当の自分になっちゃう」

「聖女さま……」

「それに、フィオナちゃんには特に気軽に呼んでほしいんだ。ダメかな?」


 フィオナの方を見つめるソフィアの美しい瞳に、フィオナは吸い寄せられる。


「……わ、わかりました。えっと、ソフィア……ちゃん」

「うん! ありがとうフィオナちゃん!」

「きゃっ。あ、あの、そ、そんなにくっつかれると!」

「あー! ソフィアずるいぞ! フィオナのイイニオイひとりじめするのダメ! ウチもおっぱいふにふにしたい!」

「わぁ! ショ、ショコラちゃんまで~? や、やめてください~~~!」


 二人にくっつかれて身動きが取れなくなるフィオナ。そんな光景にエステルがクールに微笑み、メイドも静かな顔で見守っていた――。


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