表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
外伝 最強のお嫁さんの義娘なので、世界最高の魔術学院で余裕でトップになります!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

449/463

進化の先

 レアが両手の拳を突き合わせ、戦闘態勢のまま背後に話しかける。


「ベア! 作戦ある!?」

「彼の結界がある限り脱出は叶わぬようです! ならば私たちに残された選択肢は一つ!」

「あの人を倒すこと……ですね!」


 あのクロエの好戦的な発言に、レナは微笑した。


「それ、わかりやすいね!」


 そのまま地面を強く踏みしめ、勢いよくパトリックへと飛びかかるレナ。


「レナ、もう負けないからっ!!」


 繰り出される魔拳の一撃を竜腕によってガードしようとしたパトリックだが──その動きは映像を停止したように止まり、隙だらけの状態でレナの拳を顔面に受ける。凄まじい衝撃に吹き飛んだパトリックは壁に激突するも、まったく堪えた様子もなく笑っていた。


「くっくっく……手も足も出ないとはこのことか……」


 前を向くレナの背後から、小さな影が迫る。

 それは、ナイフを持った虚ろな瞳の少女。クロエの時計を破壊し、一度はレナの命を奪ったあの不死者であった。


「レナさんっ!!」


 と、危険を知らせたのはベアトリス。


 しかしレナは振り向かない。



「──《停止まれ》!」



 ナイフを握る不死者の少女は、その場に縫い付けられたようにぴたりと動きを止める。



「もう誰も傷つけさせません。みんな私が守ります!」



 クロエの瞳は美しい魔力を纏って輝く。その場は既に彼女が支配していた。


「ふふ……そうだ、その力だ……!」


 微笑するパトリックの眼に映るのは――ただ一人だった。


「君のその魔術こそが人をさらなる高みへ……世界を発展へと導く……! ああ、礼を言わせてもらおうベアトリス! 君は! 私が望むすべてを用意してくれた!」


「申し訳ありませんが……私の身体も、大切な友人たちも、何一つ貴方に捧げるつもりはございませんわ」


 ベアトリスがレベッカの身体をミュウへと預けると、ミュウはこくんと一度うなずく。

 そして魔力を解放するベアトリス。その身より溢れる魔力のオーラは、今までにない強大で巨大な竜を形作った。


「このままでは停滞……私が目指すのは、この先……!」


 そして──オーラの竜はベアトリスの身体と同化するように重なり、完全にベアトリスと一つになった。


 瞬間、ベアトリスの魔力が爆発的に増大し、その身に変化が起こる。


「ヴィオールのこの私だけが置いていかれるなど我慢なりません。私もまた、ここで進化しなくてはならないのです!」


 彼女の頭部に出現したのは猛々しい角、背には翼、爪は鋭く光り、腕部や脚部には竜の肉体を思わせる巨大で硬質な装甲が生まれていた。レナの魔族モードにも似た異質な姿は、しかしそれとはまた別種の圧を放った。


「──《竜焔魔装体ドラゴニア・エフェメイル・ファクタ》!!」


 魔力による竜のオーラを操るだけでなく、そのものを自らの力として取り込み融合する《竜焔気》の進化系。それはベアトリスが彼女自身の力でたどり着いた技であった。


「私たちはこの力で今を! 未来を生きます! 貴方は──ここでお眠りなさい!!」


 素早く飛び出すベアトリス。開かれた口腔から熱線が放たれ、パトリックを壁際に焼き付けたまま両腕の爪を振るう。その威力はパトリックの身体を布のように引き裂いた。以前とは比較にならない魔力量と破壊力に、パトリックは驚愕する。


 そしてレナは目を輝かせた。


「ベア! なにそれカッコイイっ!!」

「なにぶん初めて成功したものですから、私も驚くばかりです。入念な準備こそ……と思っておりましたが、ぶっつけ本番、上等ですわね」

「すごいですベアトリスさん! やっぱりお二人は、中等部のエースですっ!」


 友人二人の活躍に喜ぶクロエ。

 そんな友人二人に向かって、不死者たちが押し寄せる。


「動かないでください。私の友達に近づくのは許しません」


 魔方陣の光るその瞳に映っただけで、その不死者たちも全員が停止した。

 レナ、ベアトリス、クロエ。それぞれに進化した魔術はしかし大量の魔力を消費し続ける。本来ならその力は、今のレナたちには扱い切れず、使えたとてすぐに消失してしまうものであった。


 そんなレナたちそれぞれの背に──一本の太い植物が吸着している。


 発生源は、ミュウ。ミュウが日頃からアイミーによって蓄え続けた膨大な魔力を、植物を通すことでレナたちへ供給していた。

 協力して困難へと立ち向かうレナたちの姿に、パトリックはずっと興奮を隠せないでいた。


「素晴らしい……君たちはすべて私の予想を超えていく……! ──だが、それでもまた足りないのだよ。それでは私は倒せない」


 レナとベアトリスの攻撃で顔を破壊され、身体を裂かれたパトリックは、しかし既に回復を果たしている。


「君たちの素晴らしい力は、君たちには扱い切れないのだ。ゆえに、ここで私が頂くことになろう!」


 パトリックの身体から放出された黒き魔力は、再び竜の形となって膨れあがる。そしてその竜腕で停止された不死者たちをまとめて掴み取ると──


「うぇっ! た、食べちゃった!」


 驚くレナたちの前で、竜の大口に飲み込まれていく不死者たち。パトリックは次々に不死者たちを掴んでは捕食し、取り込んでいく。


「! と、停止まれ!!」


 パトリックの思惑に気付いたのか、すぐにパトリックの動きを止めようとするクロエ。


 だが、その瞬間にパトリックは竜腕で掴んでいた不死者を盾のようにして自身の姿を隠す。


「ふむ、どうやら君の魔術は対象をその瞳に映さなくてはならないらしい」

「……!」


 悟られた事で動揺を見せてしまうクロエ。

 その間にも、パトリックの竜はその場にいた多くの不死者を食べ尽くしてしまっていた。


「もはや食料も必要なしと思ったが……少し数を残しておくとしよう。まだ有用な盾としては使えそうだ」


 濃密な魔力の波動。

 パトリックの纏う魔力の量は、レナたちのそれを悠々と上回っている。ただでさえレベル差のあった魔力は、比べるべくもない遥か高みにある。


 それでも、レナたちは怯まなかった。


「ベア! クロエ! ミュウ! ここで終わらせるよ!」

「ええ! ヴィオールの子孫として、必ず決着をつけます!」

「はい! サポートは私とミュウさんに任せてください!」

「いけいけごーごー」


 レナたちの強い意志と魔力を前に、パトリックは両手を広げてとても満足げに言う。


「すべて受け入れよう。さぁ、進化のその先を見せてくれたまえ──!」


 レナとベアトリスが同時に攻撃を開始する。

 左右から交互に。順番を入れ替えて。時にはタイミングをずらし、敵の隙を狙う。


「くらええっ!」

「はあああっ!」


 学院で何度も競い合い、そして拳を交えたライバル同士だからこそ出来る息の合ったコンビネーションでパトリックを追い詰めていく二人。

 さらにはクロエの時の魔術によって自由を著しく制限されるパトリックは、もはや防戦一方となっていた。残っていた不死者たちもレナらを狙って動くものの、クロエの存在によって何もさせてはもらえない。流れは完全にレナたちにあった。


 ベアトリスが前に立つ間に、レナは右手に魔力を集中させる。

 そしてベアトリスと入れ替わりに、レナは叫ぶ。


「そういえばアナタに伝言! ──『絶対に許さない』!!」


 その言葉を聞いたパトリックは、何かに気付いたようにハッとして動きを止める。その隙にレナの強力な一撃が顔面へと入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ