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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
外伝 最強のお嫁さんの義娘なので、世界最高の魔術学院で余裕でトップになります!

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崩壊


「さぁ、追いかけてごらんよベアトリス。見事私を捕まえられたなら、お友達を解放しようじゃないか」

「初めからそのつもりですわ!!」

「はははは。このような形で願いが叶うとは。遊んでやれなかった娘にもしてやりたかったものだ」


 リィンベルパレスを飛び出し、パトリックを追って夕闇のような薄暗い古代都市を駆けるレナたち。

 あのときは隠れ、潜みながら通り過ぎたメインの大通りも今回は遠慮なく走り抜け、襲いかかる不死者たちをなぎ払いながら進む。


「あっちいけっ! もうっ、倒しても倒しても減らないじゃん!」

「す、すごい数です……まるで街中の不死者が全員集まってきたような……!」


 三人の視界を塞ぎ、パトリックの姿も隠すほどの圧倒的な数の武力にさすがのレナも辟易とし、周囲を警戒するクロエも動揺を隠せない。だが先頭に立つベアトリスだけは違った。


「お退きなさいませっ!!」


 オーラの竜が振るった尻尾でもって迫り来る敵を退け、広範囲へのブレス攻撃で不死者たちをまとめて焼き尽くす。不死者たちはやがて起き上がってはくるものの、強烈なダメージにしばらく倒れ込み身動きがとれなくなっていた。道を作るには十分な威力である。


「素晴らしいよベアトリス。ほらおいで。もうすぐ手が届くかもしれないよ」


 感嘆とした声で拍手をうち、こちらへと手を伸ばすパトリック。ベアトリスはそちらをキッと睨み付け、肥大化させた竜の前腕でもってパトリックを引き裂くように襲う。だがパトリックの竜はそれを容易く受け止め、弾き返した。


「よい攻撃だ。さぁ、もっと力を見せてみたまえ」

「くっ……お待ちなさい!」

「ベア落ち着いて! クロエ! レナの後ろ隠れてて!」

「大丈夫です! お、襲ってきたら叩きますからっ!」


 そうして逸るベアトリスをサポートしつつ、レナとクロエも止まらずに進み続けた。


 やがてパトリックが足を止めたのは──街の中心部たる大広場。ボロボロに朽ちた大噴水がかつての賑わう面影を残すような場所だった。


「ハァァァァァッ!!」


 パトリックが足を止めたことをチャンスと見て、さらに魔力を解放して攻撃に転じようと踏み出すベアトリス。



 だが次の瞬間──ベアトリスの竜がブゥンと揺らいでかき消える。



「──っ!?」


 ハッと目を見開くベアトリス。


 ──魔力の枯渇。


 そのタイミングを待っていたかのように、不死者たちが一斉にベアトリスへと襲いかかった。


「ベアトリスさんっ!!」


 叫ぶクロエ。


 レナは既に動いていた。



「うあああああああっ!!」



 漆黒のマナリングを3つ重ねた魔拳を地面へと叩きつけるレナ。ズゥンッ!! と一撃目の衝撃で地が震え、その反動でベアトリスや不死者たちが宙へ跳ねた。


 続けて、ドォン!! ドォン!! ドォン!!


 地中へ潜ったマナリングが連続で爆発を起こし、その凄まじい衝撃で広場全体がひび割れ、陥没するように崩壊。レナやクロエ、ベアトリスはもちろん、パトリックや不死者たちもまとめて地の底へと落下を始める。


「クロエ!! ベアっ!!」


 レナの叫び。


 すぐにハッと気付いたクロエとベアトリス。


 クロエは懐の懐中時計を手に魔力を集中させ、現れた時計盤の魔方陣によって練り上げた魔力を素早く解放。瞬時に“時”が止まり、レナ、クロエ、ベアトリス三人の落下だけが停止する。


 同時にベアトリスは残りわずかな魔力を振り絞ってオーラの竜を顕現し、伸ばした片方の竜腕で残った地表部分を掴む。そして竜の尾を伸ばしてレナとクロエの身体を巻くように包み込んだ。


「ほう」


 と目を見開き、感心したような声を上げながら落ちていくパトリック。大量の不死者たちも為す術なく暗闇の底へと消えていった。


 そのタイミングでクロエの魔術が解け、疲労からか力の抜けた彼女をレナがギュッと抱きしめる。


「クロエ!」

「大丈夫、です……」

「くっ……まとめて引き上げます……わっ!」


 苦しげな表情を滲ませながら、竜腕に力を込めて三人分の身体を持ち上げるベアトリス。なんとか地上へと戻れた三人はそれぞれに呼吸を整えた。


 その直後にはさらなる崩落によって穴が広がり、かつて広場だった場所にはまるで巨大な隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来上がっていた。


「はぁ……ふぅ……た、助かりましたぁ……。レナさん、ベアトリスさん、あ、ありがとうございます……」

「お礼を言うのはこちらですわ……。それにしてもレナさん……まったく、貴方という人は……なんて無茶を……」

「ごめん。他に思いつかなくて。でも、二人なら絶対なんとかしてくれるって思ったから」


 そう断言するレナに、クロエとベアトリスは顔を見合わせて苦笑した。


「豪快な機転の利かせ方でしたが……おかげで落ち着きましたわ。少しは考える時間が持てそうです」

「それにしても……レ、レナさんの魔拳ってやっぱりすごい威力ですね。どこまで続いてるのかな……」


 穴のへりに近づき、そっと穴の中を覗くクロエ。そこにはただ暗闇のみが広がっており、ヒュウウ……と深くから風の吹く音がする。


「地下……古代のリィンベルにも、何かあるんでしょうか……?」

「ヴィオールの隠し通路などもありますし……おそらくは、都市機能の一環として様々利用されていたかと思います。お祖父様がそのような話をしてくださったことがあるのです」

「ん。とりあえず少し時間稼ぎ。作戦、考えよう!」


 レナが取り出した懐中時計を二人に見せ、クロエとベアトリスはうなずいた。長居出来るような猶予はない。


「今の私たちの力では、やはり正面突破は不可能……。なんとか戦いを避け、レベッカさんを救出しリミットまでにここを離れ──」


 そのときだった。


 大穴の奥から──ズゥン! ズゥン! と響くような音が聞こえてくる。


 レナたちが嫌な予感に背筋を冷やす間もなく、彼は現れた。


「くっくっく」


 ──ズゥン! ズゥン! ズゥン!


 その重たい振動と音は、パトリックの竜腕が地壁に突き刺さるモノだった。


 片手を交互に突き刺しながら、軽々と穴を登ってきたパトリック。気付けば彼は三人の前に立っていた。


「本当に面白い子たちだ。あの破壊力……魔族の血か。くっくっく。どうやら現代の魔術は大いに進化しているようだね。素晴らしい!」


 三人を見下ろしながら笑うパトリック。

 レナたちは、呆然とする他なかった──。

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