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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
外伝 最強のお嫁さんの義娘なので、世界最高の魔術学院で余裕でトップになります!

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魔王の一撃

 次の瞬間、レナの姿が景色に溶け込むようにゆらりと消えた。


「――っ!?」


 ハッと目を見開いたレベッカが素早く周囲を見渡す。


 いない。

 見えない。

 前後左右。上にも。どこにもレナの姿はない。


 それでもレベッカは確信していた。

 肌で。空気で。空間を埋め尽くすほどの魔力の圧で。


 すぐそばに、レナはいる――!



「――うるさい。うるさいうるさいうるさいッ! アンタは! うざいんだよおおおおおおおおおおおッ!! 《牙剥く女王の赤(クイーンズレッド)》ォ!!!!」



 赤い鞭を生み出したレベッカは全方位に無秩序な連続攻撃を繰り返し、破壊を始める。


「――レナさぁんっ!」


 叫ぶクロエ。しかしその凄まじさに近づくことも出来ず、吹き飛んでくる石片や瓦礫から見守り伏せることしか出来なかった。


 やがてレベッカの魔力が尽きていき――激しい攻撃は停止する。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!」


 土煙の中、レベッカは汗を拭って呼吸を整えた。


「ハハ……アハハッ! 手応えあった! 絶対当たってる! 夢魔だか吸血鬼だかの魔術か知らないけど、ただ周囲に同化して姿を消してるだけだろっ! これだけやればいくら見えなくたってアイツに致命傷を……!」


 そしてレベッカは、


「――ちゃんと魔力で防御してね」


 すぐそばから聞こえた声にハッと息を止め、視線だけをゆっくりと横に動かす。


 ぐにゃりと景色が歪み、そこから全身鞭に打たれて傷だらけになったボロボロな制服姿のレナが現れた。


 右腕に、闇色に輝く魔方陣(マナリング)を三重に纏って。


(こっち)に集中してて防御しきれなかったけど、一方的じゃあなたがかわいそうだからいいよ。ワガママな〝お得意さん〟と一緒に考えたレナのオリジナル魔術、まだ開発途中だけど見せてあげる」

「ハッ…………ちょ、まっ――っ!」

「悪い子には、おしおきしなきゃ!!」


 結集する魔力の高まりがキィィィィインと甲高い音を立てる。



「《魔王拳(メル・グラム)》――トリプルバースト!!!」



 レナが右の拳をレベッカの胸元に叩きつけた瞬間。


 闇色の魔方陣が三つ、レナの腕からレベッカの身体へと烙印され、それはすり抜けて後方へと移動し大きく広がる。

 そして殴り飛ばされたレベッカがファーストリングをくぐった瞬間――リングが爆発(バースト)してその体を吹き飛ばす!

 そのままセカンドリングをくぐりさらなる衝撃の爆発を引き起こすと、ラストリングでとびきりの大爆発を巻き起こし、レベッカは悲鳴すら上げられずにリィンベルパレス入り口脇の壁に激突して倒れた。


 爆炎はしばらく燃えさかり、そして粒子となって消えていく。強力な防壁魔術が掛かっているのか、塔の内部にはほとんど破損はなかった。


「いじめっこ成敗完了。魔王直伝の一撃、効いたでしょ。――実際は三撃だけど」


 仁王立ちのレナが「ふんっ」と鼻息を荒くする。一部始終を見ていたクロエがポカンと呆けたように口を開けたまま固まっていたが、やがてハッとして言う。


「レ、レナさんっ! レベッカさんは……!?」

「ん、ヘーキ。ちゃんと魔力で防御するまで待ってあげたし、威力も10%くらいに加減したから。でも相当痛かったと思うし、反省するかな」

「え……あ、あれで、10%……!?」

「どう?」

「え?」

「少しはスッキリした?」


 目をパチパチさせるクロエに、レナはぐっと握った右手を前に示してそう言った。


 するとクロエはしばし戸惑い――ふっと弱々しく笑うと、涙を拭って作った拳をレナと突き合わせる。


「……はい! いじめっこ、ざまあみろです!」


 すべてのしがらみを断ち切った二人は、ようやく本当の笑みで笑い合えた。



 こうしてレベッカとの騒動は一段落した――かと思ったとき。



「――あなたたち、このような場所で何をしているのです!」


「「!」」



 レナとクロエは驚愕してその声の主を見た。


 それは――入り口の扉から姿を見せたベアトリスであった。


「これは……一体どういうことですの? どうやってリィンベルパレスに立ち入ったのですか。いいえ、それよりもあなたたちの行為は規則違反となり、学院から厳正なる処罰がくだ――なっ!?」


 ベアトリスの声が途中で止まる。その視線が、扉のすぐそばで倒れていたレベッカに向けられたからだ。


「レベッカさん!? そ、その傷は……!」


 慌てて介抱しようと近づくベアトリス。レベッカは苦しげな声で話した。


「う……ア、アイツが……ここに、案内しろって…………アタシ、止めたん、だけど……そしたら、脅されて…………鍵……パパから、黙って…………」

「レベッカさん……なんてこと……!」

「一人じゃ、どうしようもなくて……ごめん、ベア……」


 涙を浮かべながら弱々しく語るレベッカに、ベアトリスの瞳が揺れる。

 そしてベアトリスはゆっくりと立ち上がり、レナたちの方へ歩み寄ってくる。


 クロエがすぐに声を挟んだ。


「な、なにを言って……! ち、違います! 待ってくださいベアトリスさん誤解ですっ! レナさんはそんなこと――!」

「意味ないよ、クロエ」

「えっ?」

「たぶん、これがレベッカの作戦だから。本当にずる賢いね」


 レナは、ギュッと手を握りしめてベアトリスたちの方を見た。

 ベアトリスの背後で――倒れたレベッカがニヤッとこちらをあざ笑っている。その顔にクロエがぞくっと身を引いた。

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