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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十二章 花婿の決着編

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【朗報】おめでたフィオナ

 クレスたちの視線が注がれて、フィオナは自身の腹部に触れながら「え?」と困惑する。


「この世界に命を宿す者はいないの。簡単な話」


 そう言って指を下ろした包帯少女。エリシアが「わかるの?」と尋ねれば、「天才だからなの」とだけ返ってくる。エリシアはなんだか微笑ましそうにフィオナの方を見た。


「フィオナ……まさか……」

「え? ク、クレスさん?」

「オイオイマジか。とうとうか。マジかよオイ! お前らにか!」

「フィオナちゃん……そう……朗報ね」

「ヴァーンさん? エステルさん? え? あ、あの? よかったって、えっ?」


 まだ意味がわからずキョロキョロするフィオナの腹部に、レナがそっと手を重ねた。


「フィオナママ、ほんとにママになったの?」

「……え? ママ? わたし……が? …………え? え? ええええ~~~~~~っ!?」


 ようやく意味を理解し、真っ赤になってうろたえ出すフィオナ。ヴァーンが気分良さそうに大声で笑い、エステルがなんだか感慨深そうな表情で目をつむり、クレスは目元に手を当てて神妙な面持ちをしていた。


 エリシアが微笑みながら言う。


「おめでたい話はまた後にしよっか。とにかくありがとう。あなたのおかげで助かりました。なにかお礼が出来ればいいんだけど、あいにくお金を持ってなくってね」


 そっと手を差し出すエリシア。

 白衣の少女はじっとその手を見つめるだけで、関心もなさそうにつぶやく。


「そういうのはいらないの。フレは自分の創りたいモノを創るだけなの。お礼なら身体で返してほしいの。全身を切り刻ませてくれるの?」


 先ほどまで何の興味もなさそうだった彼女の目が途端に輝き出し、フィオナとレナが「ひゃっ」と怯えた。


「ウフフフ。冗談なの。どうしてもというなら、あなたたちの下着が欲しいの」


 少女はこちらに向けて両手を差し出す。


「貴重な生者のサンプルは、喉から手が出るほど欲しいの。今身につけているそのパンツが欲しいの。新鮮な遺伝子が採れるそのパンツが、欲しくて欲しくてたまらないの。濡れてきちゃうの。ちょうだい? ねぇちょうだい? ウフフ、ウフフフフ!」


 めちゃくちゃヤバそうに輝く彼女の妖しい瞳は、クレスたちに揃って恐怖を与える。 

 エリシアが腕組みをしながら「ムムム」と思案し、そして勢いよく言った。


「ム~…………よし! じゃあここはボクが責任とりまぁす!」


 そう言って自らの下半身に手を伸ばしたエリシアに、クレスたちがまた揃って慌てだした。



「やっぱりスースーするね」


 研究所を後にし、ニーナがいるかもしれないという崖を目指して歩く一同。

 ドレスのスカートをパタパタさせながらエリシアがそう言って、クレスはそちらを見ないように配慮していた。しかしヴァーンが「おほー」とがっつり見ていたため、エステルとレナから「ヘンタイ」呼ばわりされる。


「ボクの下着一枚で貴重なものがたくさん貰えたんだから僥倖だったねー。さ-て、それじゃあ後はあの子を見つけるだけですけれども」


 スカートから手を離したエリシアは、そこであの白衣の少女から貰った薬をクレスに渡した。


「これはキミが使った方がいいだろうね」

「え? 俺が……ですか?」


 受け取ったクレスは、呆然と手元のそれを見下ろす。


「薬は一人分。一回分だけ。じゃあ最も可能性が高い人が飲むべきだよね。さてクイズです! ここにいるキミたちはみんなラビちゃんから認められた強運の持ち主だけど、中でも一番運が良いのは誰でしょーう!」


 そんな陽気な発言に。

 フィオナも、ヴァーンも、エステルも、そしてレナも、一様に納得した顔でうなずいた。


「そりゃあこんなイイ嫁孕ませてんだからよ、お前が使うべきだわな!」

「死の淵から蘇った勇者……クーちゃんほど運の良い男はいないでしょう」

「レナみたいなよくできた子どももいるし、ね」

「ふふっ、そうだねレナちゃん。クレスさん――」


 全員の視線を集めたクレスは。


「――わかった。俺が、必ずあの子に触れてみせる」


 大きく一度うなずいて、そう応えた。


 そしてフィオナに近づき、そっとささやく。


「無事に元の世界へ戻ったら、ちゃんと調べてもらおう」


 フィオナは少し驚いたように頬を染めて、それから嬉しそうに返事をした。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 そしてとうとう辿り着いた、まん丸の月が大きく見える崖の上。


 その切っ先で、ウサギの少女は膝に顔をうずめていた。

 彼女は足音と気配に気付き、そっとこちらに顔を向ける。そして大きく目を見開いた。


「…………え? み、皆サン? どうやって……!」


 驚く彼女の方へ、先頭のクレスが足を踏み出す。



「もう一度――君に触れに来た」



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