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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十二章 花婿の決着編

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お待ちかねのメインショー!

 そうしてパーティーは続く。


「さてさて! お料理を楽しんでもらいながら、こちらのステージもお楽しみください! バニーガールたちによるロマンティックファンタジーイリュージョンショーでーす!」


 ステージ上のニーナのそばには多くのバニースタッフたちが集まってきていて、そこから怒濤のショーが展開されることになった。


 まずは大きな箱の中に一人のバニーガールが入り、他のバニーたちが次々にその箱を剣で突き刺す。客席からどよめきが起きた。容赦なく何本も突き刺される様子に、フィオナは思わず目を塞いでしまった。


「はっはっは! 心配すんなよフィオナちゃん。ああいうのは中で上手く避けてんだぜ。リゾート都市のショーで見たことあるわ」

「そ、そうなんですか? でも、見えない箱の中で避けるなんてすごいです……!」

「ネタを明かすのは興ざめというものでしょう。まったく無粋な男ね」

「どうやって避けているのか俺も知りたい……よほどの手練れだろう」


 各々の視点でショーを楽しむクレスたち一行。


「それではごかいちょーう♪」


 ニーナの声と共にゆっくりと開封されていく箱。

 ヴァーンの言う通りに中のバニーが剣を避けていた――のかと思いきや、すべての剣がぐっさりと身体に突き刺さっていた。フィオナが「きゃあ!」と短い悲鳴を上げ、クレスやヴァーン、エステルもそれぞれに動揺する。他の客らも同様だ。


 しかし平然としているバニーガールはそのまま外に出てきて一本一本剣を抜き取る。するとその身体には傷一つも残っておらず、血の一滴すら漏れてはいない。虚を突かれた客たちは思わず拍手をし、バニーガールがペコリと頭を下げた。


 クレスたちも手を叩きながら言う。


「すごいな……どうやったんだ……!」

「び、び、びっくりしました! 確かにちゃんと刺さっていたのに……どういうことなんでしょう!」

「はっはっは! オレ様の裏をつくたぁなかなかやるじゃねぇか! つーかこんなもんタダで観られるとか、やっぱアイツイイヤツなんじゃねぇの?」

「……どうもあのニーナという魔族は、よほどパーティーとやらにこだわっているようね」


それからもショーは続き、バニーガールたちが様々な出し物で観客をアッと驚かせ、喜ばせ、魅了する。

 美味しい食事に見事なエンターテインメントショー。人々はカジノでのことなど忘れるようにショーにのめり込み、愉しんだ。


 そしてニーナがステージの中央に立つ。彼女の周りには他のバニーガールたちが揃って集合した。

 スポットライトを浴びるニーナが言う。


「ショーはお楽しみいただけましたでしょうか! しかしまだまだこれからです! ニーナプレゼンツのロマンティックファンタジーイリュージョンショーはここからが本番! それでは次のパーティーをはじめましょーうっ♪」


 ぴょんとジャンプして手を挙げるニーナ。

 次の瞬間――会場の照明がパッと落ちて暗闇に包まれる。小さなどよめきが起こった。


 クレスはすぐに行動を起こす。


「フィオナ、大丈夫かい?」

「あ、ありがとうございますクレスさん。少しびっくりしましたけれど、大丈夫ですよ。でも……このまま、もう少し手を握っていてもいいですか?」

「ああ、もちろん」


 暗闇が苦手なフィオナを気遣い手を握っていたクレス。お互いの顔も見えないような状況で、それでも二人は笑いあって心を落ち着かせていた。


 多くの者たちはこの演出に驚きつつも、次はどんなものが楽しめるのかという期待に胸を膨らませ、警戒を見せる者はほとんどいない。ヴァーンが「ヒュー! 次はストリップショーで頼むわー!」と歓声を上げ、直後に彼が「ぐえっ」と鈍い声を上げる。


 明かりが復活した。

 今度は大きなどよめき。多くの者が思わず立ち上がっていた。

 先ほどまでの華やかなパーティー会場からは一転。


 そこは――巨大なコロシアム場となっていた。


 クレスたちが囲んでいたテーブルや椅子、そしてニーナたちバニーの立つステージはそのままに、それ以外のすべてが石造りのコロシアムへの変貌していたのだ。しかしただの無骨な作りなコロシアムではなく、あちこちにパーティー感を演出する花やリボンなどの飾り付けが施されている。柱もすべてニーナの姿を象ったような派手な意匠だ。


 クレスたちも驚愕する。


「ここは……まさか聖都の!? し、しかしいろいろと異なっているな……」

「て、転移の魔術でしょうか? ……いえ、違う。おそらくこれは、結界内に作られた作り物の場所……」

「これだけの人数を瞬時に転移させるなんて神業でしょうし、そういうことなのでしょうね。フィオナちゃん、見えているの?」


 小さくうなずくフィオナ。聖女だけが持つ『天星瞬く清浄なる瞳プリミティア・ライラ・オクルス』の力によって、魔力により生み出された世界のカタチを認識することが出来た。


 ヴァーンが後頭部を手でさすりながら言う。


「んだよストリップじゃねぇのか。コロシアムで殺し合いってか?」

「笑えない冗談はやめてちょうだい。また叩かれたいの?」

「わかってたけどやっぱお前だったのな! 暗闇で後頭部殴るとかもはやアサシンの所行だぞ!」

「こんな美しいアサシンに殺されるなんて貴方も本望でしょう」

「ハッ、ならあと30トールくらい乳でかくしてから言えや。乳に埋もれて死ぬなら本望だからよ!」

「なぜ男はどいつもこいつも胸だ乳だおっぱいだと……」


 冷気を放ちながらイライラし始めるエステル。ヴァーンがケラケラ笑い、クレスとフィオナは苦笑する。


 そこでステージ上のニーナがビシッとヴァーンの方を指さしてウィンクした。


「そちらのエッチなおにーさん! 大当たり~!」

「ハ? んだよ?」


 いきなりのことに意味もわからず呆然とするヴァーン。エステルが「猛烈に嫌な予感がする……」と頭を抱えた。


 果たしてニーナは言う。



「それでは皆サマ! お待ちかねのメインショーは~~~……なんと! お客様ご自身がご参加いただける特別ショー! 素晴らしい運のお持ちの皆さんによる、楽しい愉快な殺し合いショーでーす♪」



 両手を広げて本当に愉しそうに言ったニーナとは対照的に、クレスたち招待客はただ愕然とした。


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