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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十二章 花婿の決着編

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始まりは豪華ディナーから

 その会場にいたすべての者がステージ上へ注目していた。

 煌びやかにスポットライトを浴びる一人のバニーガール。自らを『ニーナ』と名乗ったその人物は、このパーティーの『主催者』とは思えないほどにあどけない顔立ちをした少女だった。


 まず目立つのは、やはり頭頂部にある長いウサギのような耳。クセのない金色の長髪は光を艶やかに反射し、リボンがくるくると巻き付いている。そんな金髪の“裏”はピンク色になっており、不思議と表と裏で髪色が異なっているようだった。

 アイシャドウも印象的なパッチリと大きな瞳はツァボライトのような美しいグリーンで、快活ながら淑やかさも備えた色気のある表情は魅惑的。耳元にはダイス型の特徴的なイヤリングが着けられている。

 他のバニーガールとは少々デザインの異なる黒と白のバニースーツはセクシーかつ愛くるしい装いで、隠す気もないだろう豊満な胸は大胆にその谷間を誇る。手先にはハートなど色とりどりのネイル。腰には一際大きなリボンが添えられており、鼠径部から伸びるスラリと長い脚の肌色が皆の目を惹きつけ、ハイヒールを見事にはきこなしている。そのしなやかな肢体は見事なものであった。


 注目を浴びる中でニーナがニコリと微笑む。


「それでは皆サマ~! 自己紹介も済みましたところで、早速パーティーを始めましょーう! きっとたくさんがんばってお腹空いちゃってますよね? とゆーわけでぇ、お客様たちをごあんなーい♪」


 ステージ上でニーナが片手と片足を上げながらテンション高く言ってベルを鳴らすと、多くのバニースタッフたちが動きだし、クレスたち招待客をステージ前の各テーブルに案内し始めた。

 クレスたちは戸惑いながらその指示に従い、とりあえず席へとつく。するとすぐに豪華なコース料理やワインなどが運ばれてきて、豊かな色彩と香りが広がる。照明や音楽などもムードのあるものに変更され、あっという間に立派なディナー会場へと変貌した。まるで豪勢な結婚披露宴のようでもある。


 同じテーブル席のクレスたちが困惑しつつ話す。


「むぅ……これはまたずいぶん立派な……」

「ほ、本当にパーティーみたいになっちゃいましたね」

「オイオイなんだよ。オレはてっきり『殺し合いパーティーを始めまぁす♥』みたいなことを言い出すかと思ったぜモグモグ」

「気持ちの悪い声真似をしないでちょうだい。どういうつもりか知らないけれど、こんな怪しい料理を食べる馬鹿が――いたわね」


 既に肉料理に手をつけていたヴァーンが「ウメェ!」と声を上げ、エステルが呆れたようにため息をつく。その反応を受けてか、他の招待客も料理に関心を寄せ始める。


 そこでニーナが拡声器を利用して会場全体に声を届けた。


「皆サマご安心くださーい! パーティーの料理はすべて有名シェフたちによる特製レシピを用いた自慢の品々! もちろん毒やアヤシイモノなんて一切入っておりませんよ~! 素晴らしい運を持つ皆サマのためだけに用意したせっかくの料理がもしも冷めてしまったら……ニーナ泣いちゃいますぅ、くすんっ!」


 あざとらしい泣き真似をして会場の反応を見るニーナ。ヴァーンが「いやマジで毒とかねーぞ」と付け加えたことで、次第に警戒心の薄れた者たちがワインに口をつけたり料理に手を伸ばしたりする。


 足を組むエステルが辺りの様子を伺いつつ、静かな声でつぶやく。


「……どうやら本当に毒などは入っていないようね。毒味担当のこの男が言うならそうなんでしょう。けれど、よくもまぁ得体の知れない女が用意した得体の知れない料理を食べられるものだわ。クーちゃんやフィオナちゃんは控えておきな――フィオナちゃん!?」


 思わず驚いてしまうエステル。

 フィオナは目の前に置かれたフルーツやチョコレートのケーキ、チーズスフレ、アイミーのパフェらに目を奪われており、キラキラした顔で今にもそれらを口に放り込みそうな感じであった。


 名前を呼ばれたフィオナは「はうっ!」と我に返り、持っていたフォークを置く。


「うう~すみません! あ、あんまりにも美味しそうなスイーツばかりでつい~!」

「き、気持ちはわかるけれど……先ほどまで私たちにあんなデスゲームをさせていた相手よ? ここは警戒すべきでしょう。ひょっとしたら、また私たちを洗脳しようと――」

「してませーんよっ♥」

「っ!?」


 突然耳元から聞こえた甘ったるい声に、バッと振り返るエステル。

 そこに、いつの間にかあの主催者――ニーナの姿があった。一体いつ現れたのかわからなかったのはクレスたちも動揺であり、皆が驚愕する。


 ニーナはちょっとしょんぼりした顔で口元に指を添える。


「そもそも洗脳なんて誤解なんだけどなぁ。だってあたしはみんなが楽しんでくれるように尽くしただけで、罠にかけたつもりもないですし。一流の料理人を集めるの大変だったんですよぉ? あーあ、せっかくエステルチャンの好きなエルンストンの雪解け鍋も用意したのにぃ~。えーんっ!」


 両手を目元にもっていってまたシクシクと泣き真似をするニーナに、エステルは我が耳を疑う。


「貴女っ、なぜ……!」


 警戒するエステルに対し、ニーナは目元から手を離してニヤリと笑う。


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