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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十二章 花婿の決着編

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スロットとカード

 そして命を賭けたカジノゲームが始まった。

 コインを失えば死。生き残るには勝ち続けるしかない。

 この状況に怯え、中にはカジノのプレイを諦める招待客もいた。しかし多くの者が果敢に挑戦し、勝つ者もいればコインと化す者もいた。


 そんな中、クレスとフィオナもまた立ち向かう。


「俺はこういったものに覚えがないが、このスロットというのは何をすればいいんだ?」

「そこのレバーを引いて絵柄を揃えりゃいいんだよ。ディーラーや他の客との心理戦や駆け引きが必要なカードやルーレットはお前にゃまだ早えだろ。とりあえずこっちやっとけ」

「わかった」

「っておい!? いきなりゴールドコイン入れやがったのか!」

「先ほどヴァーンがそうした方がいいと言っていたじゃないか」

「ありゃオレ様が浮かれてただけで、まさかこんなヤベぇカジノだとは――って、いや違ぇな。それでいい。ちまちま勝っても意味ねぇんだ。男ならドカンと一発勝負だろ! オラ行けクレスっ!」


 傍らでヴァーンが見守る中、うなずいてスロット台に集中するクレス。

 三つのボタンをタイミング良く押す。


「揃ったぞ」

「は?」


 いきなり『7』が3つ綺麗に並んだ。

 その瞬間スロット台がピカピカ光り出し、明るい音楽と共にジャラジャラとゴールドコインが溢れ出てくる。ヴァーンがさすがにポカンとしていた。


「よくわからないが、これでいいのか?」

「オイオイマジかよ。そいつが大当たりってヤツだ」

「そうなのか。意外と簡単に出るものなんだな」

「普通は出ねぇよ。普通はな。……いや待てよ。そういやオレ様も割とあっさりジャックポットしたしな。ひょっとするとこいつは……おいクレス。隣の台もやってみろ」

「む? こっちはもういいのか?」

「ああ。ほれほれやってみな」


 言われた通りに、隣の台でゴールドコインを使いスロットのレバーを引くクレス。

 また『7』が3つあっさりと揃った。

 隣の台と同じようにピカピカ光って音楽が鳴り出し、ゴールドコインがたんまりと放出される。さすがにクレスも呆然とした。


「スロットというのはこんなに単純なものなのか……?」

「やっぱりな」

「ん? ヴァーン? どういう意味だ?」


 顎に手を当てて何やらわかった風な顔をしていたヴァーンに、クレスが疑問を投げる。

 ヴァーンはさらに隣の台をペタペタ触りながら「まぁ見てろ」と手持ちのゴールドコインを投入して立ったままスロットを始めた。すると『7』ではないが別の絵柄が揃い、シルバーコインが溢れ出てくる。


「こいつは普通のギャンブルじゃねぇな。最初から決まってやがる」

「決まってる?」

「ああ。あのねえちゃんたちも言ってたろ。本物の運がありゃクリア出来るってな。理屈はわからねぇが、こっちの運を試してやがんだ」

「運を……試す……」

「ま、ひとまずこれだけありゃ十分だろ。来いクレス。フィオナちゃんの様子見に行くぞ」

「あ、ああ、わかった! しかしコインが――」

「親愛なるお客様。こちらは私共がお持ち致します」

「おおっ。す、すまない。助かる」


 いきなり現れた二人のバニーガールがクレスのコインを集めて革袋に入れ、クレスの代わりに運んでくれた。

 こうして二人は女性メンバーの方へと向かう。


 

 一方、フィオナはエステルの付き添いでカードゲームを行っていた。


「マナカードに慣れているフィオナちゃんにはこちらの方が合っているでしょう。ルールはわかっているわね?」

「は、はい。えっと、カードの合計点数を21に近づければいいんですよね? 昔、おじ様とおば様に遊び方を教えてもらったことがあります」

「そうよ。『トゥエンティワン』ではディーラーよりも高い点数を取れば勝ち。けれど欲張ってバーストしても負け。このゲームは選択権のないディーラーが相手になるから、本質的には自分との勝負よ。ゲームが始まれば私はアドバイス出来ないから、冷静にやりましょう」

「はいです!」

「それでは親愛なるお客様。ゴールドコインをベットでよろしいでしょうか」

「はいです!」

「迷いなく……本当に肝の据わった子ね」


 エステルが後ろで感心する中、ディーラーからフィオナへ2枚のカードが配られる。本来は手持ちのコインをチップに変えて賭けるゲームだが、ここでのルールは特別だ。ゴールドコインを賭けた場合は勝利時にコインが1000倍になる。しかし負ければ命の猶予が1枚減る。ゴールドコインを使うにはあまりに大きな緊張感を伴うゲームだが、フィオナは怯む様子もなかった。


 フィオナは配られた手元のカードをめくる。クイーンの『10』と『7』だった。


「親愛なるお客様。カードを追加したいようでしたなら『ヒット』。ここで止めておくなら『スタンド』をお選びください。ジェスチャーの指示でも構いません」


 じっと自分のカードを見つめて考えるフィオナ。

 ディーラーの手元にある2枚のカード。そのうちオープンになっている1枚のカードはキングの『10』だ。ディーラーはカードの合計が『16』以下の場合自動的にヒットし、『17』以上であれば自動的にスタンドとなる。


 フィオナは言う。


「それではヒットします。もう1枚ください」


 ディーラーは手慣れた動きですぐにカードを1枚差し出す。

 背後のエステルは、ゲームに影響が出ないよう無表情のままでプレイを観察していた。このゲームにおける『最も効率的(ベーシック)なプレイ方法(ストラテジー)』において、『17』とはスタンドすべき危険な数字。ゆえにフィオナがヒットしたことは大きな賭けだった。


 そしてフィオナがめくった追加カードは、『2』。これで合計は『19』となる。


「親愛なるお客様。いかがされますか」


 赤い目のバニーディーラーが淡々と尋ねてくる。

 ディーラーの手札のもう一枚が『10』やエースカードだった場合、フィオナは負ける。しかしこのゲームではジャック、クイーン、キングと『10』になるカードの枚数が最も多い。かといってさらにカードを求めればバーストの可能性は非常に高くなる。ここはスタンドしておくのが最善であったが――。


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