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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十一章 神域のラブファイト編

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私たちの独擅場!

 フィオナが“まじない”を唱える。


「『――逃げるな、(プディ・)前を向け、魂を燃やせ(ルファラ・エクレーン)』」


 急速に高められた体内の魔力がふくれあがり、放出されたそれは炎の壁へと変貌し周囲へと燃え広がる。アンデッドたちはその光と熱に動きを止めた。

 フィオナの銀髪から魔力の残滓が粒子となって零れ落ちる。その瞳には星の魔力が宿り、次第に髪がプリズムに煌めき出す。


 唖然とそんな光景を見つめていたソフィアの手を、フィオナが掴んだ。

 二人の目が合う。


「フィ、フィオナ、ちゃん……」

「大丈夫。わたしたちなら出来るよ。ソフィアちゃんのことは、お姉ちゃん(わたし)が守るからね。必ず、一緒に帰ろう」


 フィオナは、こんな状況でも変わらない優しい微笑みを見せた。

 そんな姉の言葉と想いを受けて、ソフィアの震えが止まる。そしてソフィアは、思いきり大きく口を開けた。



「――わああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~~っ!」



 妹の突然の大声に驚いた後、キョトンと呆けるフィオナ。

 ソフィアの髪もまた美しいプリズムに煌めき、同時に彼女の『星の杖』がぐんぐんと巨大化。ドラゴンにも負けないほど大きくなった杖の先端についた巨大な星の装飾が光輝き、聖なる威光に魔物たちが怯む。


 ソフィアは、その杖を思い切り振り下ろした。



「スーパー【スターライト】ぉっ!!」



 美しい流れ星のように。または激烈な隕石のように。

 ソフィアの星は激しく地面を振るわせるほど大きな衝撃と共に、接近していた魔物たちを一掃。潰された魔物たちはキラキラと魔力の粒子のようになって浄化された。


 その光景に、思わず目をパチパチさせるフィオナ。

 呼吸を整えたソフィアが顔を上げる。とても爽やかに、子供らしく快活に笑った。


「ありがとお姉ちゃんっ! もう大丈夫! そうだよねっ、私たちならこれくらいヨユーだよねっ!」

「ソ、ソフィアちゃん」

「今まで本気で魔術を使ったことなかったから、全力でやったらどうなるか自分でもわかんないけど、私たちだって初代様の血を引いてるんだぞってとこ見せてやる! ここからは私たちの独擅場だよ! あんなヤツら、お姉ちゃんには指一本触れさせないんだからっ! ガンガンいこっ、お姉ちゃん!」

「……うん!」


 綺羅星の姉妹は手を繋ぎ、お互いにいつも通りの笑みを取り戻した。


 月と星の杖が――二人の胸のペンダントが強い星の輝きを宿す。



 それからは、ソフィアの言ったとおりに姉妹の独擅場となった。


「【ヴァーチュ・ディ・ボルド】!」

「【ぷちメテオ】×1000! 名付けて【メテオシャワー】っ!」


 二人の杖の宝石が輝く。フィオナの放つ赤熱の雷光は辺り一面を焦がし尽くし、ソフィアの落とす可愛らしいコンペイトウのような無数の聖石が爆弾のように地面をえぐり取って、あのドラゴンさえも押しつぶす。

 恐怖心を克服したことで二人の身体には今まで以上に活力がみなぎり、女神から授かった杖により膨大な魔力のコントロールが可能となったことも相まって、強力な魔術を次々に放った。そのたびにアンデッドの魔物たちは紙のように吹き飛び、燃えさかり、爆散する。こうなってしまえば魔力耐性の弱いアンデッドたちにできることはなく、ただいいようにやられるしかなかった。


 ソフィアは目を輝かせながらぴょんぴょんと跳ぶ。


「すごいすごーい! 全然疲れないし、いっくらでも魔術が使えるっ! 私、こんな風に全力で魔術使ったことなんてなかったよ~! 思いっきり魔術使うのって、こんなに気持ちいいんだ~~~っ!」

「ふふっ、ソフィアちゃんすっごく楽しそう。でも、本当にすごいね。どれだけ魔術を使っても、身体に魔力がみなぎってくる感じ……。抑えきれなくなりそうなくらい」

「抑えなくていいんだよー! 私たちの魔術で、あの女神様驚かせちゃうんだから! どんどんいっくぞー!」


 ソフィアは眼前で『星の杖』を握り直すと、まるでタクトを操るオーケストラの指揮者のように軽やかに杖を振り、踊り子のごとく華麗に舞った。その切っ先からはキラキラした魔力の粒子が――星の光がこぼれ落ち、天の川のごとく世界を彩る。

 そして最後に、ピッと杖を頭上へ掲げた。


「【スターシンフォニー】!」


 刹那に時が止まる。

 直後、集められた魔力がソフィアの杖から噴水のようにあふれ出し、煌めく星の粒子となってパアアアァァァッと辺り一面に広がっていく。その美麗さにフィオナは心奪われ、つい魔術の手を止めて魅入ってしまう。すると星の粒子はフィオナの周囲を巡り、やがてフィオナの身体さえも輝きだした。

 フィオナは自身の身体を見下ろしながらつぶやく。


「わぁ、綺麗な光……! それに、なんだかすごく魔力が高まってくる……。これ、前にも聖都で見たことがあるような?」

「うんっ。式典でちょっとしたお遊びに披露することもあるんだけど、本当はね、これは私を応援してくれるみんなを応援するための魔術なのっ」

「応援の、魔術?」

「うん! 私に力をくれたみんなに力を返す。正しき心を持つ人を応援(パワーアップ)することができる魔術なのです。そして逆に、邪な存在の力を減退させます!」


 ソフィアが魔物たちの方に杖を向ける。

 フィオナがそちらを見ると、星の粒子を浴びた魔物たちはうめき声を上げながら倒れ、崩れ落ち、動けなくなっていく。効果はてきめんのようだった。


「さぁフィオナちゃん! 一発でかいのやっちゃってください!」

「……うん!」


 うなずいたフィオナはまぶたを閉じ、より深く意識を魔力の奥底に沈めて、世界の魔力を取り込み、体内の魔力を強く、大きく循環させる。高純度に練られた魔力は、使用時に爆発的な威力向上を生む。


「いけいけごーごーお姉ちゃんっ♪」


 手足を上げる妹の可愛らしい応援ダンスを一身に受けながら、フィオナは準備を済ませる。心なしか、先ほどよりさらに魔力が高まったような気がした。

 フィオナの頭部にクインフォ族のキツネ耳がぴょこんと現れ、ソフィアが「かわいー♪」と黄色い声を上げる。身体から漏れ出す魔力はすでに青い炎となり、それは完全に魔力が練られた証である。


「《蒼き世界。那由多たゆたう果てに再び根源の火を灯す》」


 詠唱を刻むことで、整えた魔力が世界に具象化する。フィオナの周囲で12本の青白い炎の柱が激しく立ち上り、ソフィアが「わぁっ!」と驚いてフィオナの背中にくっついた。ケーキのロウソクのように円く並んだ12本の炎の柱は、そのまま外側に向けて倒れる。その姿は狙いをつけた砲台のようでもあり、また青い花びらが咲き開いたようでもあった。

『月の杖』の宝石が、青白く輝く。


 フィオナが目を開いた。


「【光陣咲く青の世界アーク・ゼム・ヴェルメール】!」


 ――ボオオオオオオオウッ!!

 放射線状に伸びた12本の柱は凄まじい勢いで燃えさかり、触れた魔物たちを一瞬にして青白い光と化す。


「【開花(ティア)】!」


 さらにフィオナが杖を地面に突き立てると、すべての炎柱がフィオナを中心に高速回転し、風を巻き込んでさらに激しい燃焼を起こす。地平線までに存在するあらゆるモノを青い世界に引き込み、消滅させた。

 完全燃焼した青い炎は回転を止め、やがて魔力の粒子だけを残し、静かに鎮火する。焼き尽くされた荒野には、花のような形の焼け跡だけがあった。


 一連の流れを見届けたソフィアが、「ほあ……」と間の抜けた声を上げる。

 フィオナは小さく息をついた。


「ソフィアちゃんのおかげで、思ったよりすごい威力になっちゃった……。さすがにもう、大丈夫、かな?」


 あれほど溢れていたアンデッドの魔物たちは、見渡す限り存在しない。

 ソフィアが背中からフィオナに抱きついた。


「ぃやったー! さっすがアカデミー首席卒業のフィオナちゃんっ! てゆーかすごいね今の! あんな魔術見たことなかったー!」

「覚えてただけで、一回もちゃんと使ったことはなかったんだけどね。元の世界じゃ、あんな規模の大魔術を使う機会なんてないから……わたしも、ちょっと楽しかったかも」


 くすっと笑ったフィオナを見て、ソフィアも大きく笑った。


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