表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第十章 夫婦の定期健診編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

252/466

セシリアのひみつ♥

 驚きの真実にぶわわっと赤くなっていくフィオナ。自分たちの種族に関して真面目な話をしていたはずなのに、いきなりエッチな子認定されてしまい困惑する他なかった。


「えっ、えっ、えー! わ、わたっ、わたしそんなっ!」


 頬に手を当てたままうろたえるフィオナを見て、セシリアは一段とおかしそうに笑い、口元を隠しながら背中まで揺らしていた。そして思う存分笑った後、目尻の涙を拭いながら言う。


「ご、ごめんなさいフィオナさん。冗談ですよ~」

「ほにゃっ!? え? じょ、じょうだん? えっ? ウ、ウソってことですか!?」

「は、はい。フィオナさんがあんまり可愛らしくて……つい、からかってしまいました」

「ふぇぇ……そ、そうだったんですかぁ……はぁ~~~」


 いい加減驚き疲れたようにがっくりとうなだれるフィオナ。それから呼吸を整えつつ、気を取り直してセシリアに尋ねる。


「そ、それじゃあわたしは普通、なんですよねっ! そうですよねっ? うんうん、よかったぁそうだよねっ。だってわたし、そ、そこまでエッチな子じゃ……」

「あ、それは本当ですよ~」

「へっ!?」

「性欲がと~~~っても強い、という事は事実なんです~。冗談なのは、それで男性が耐えられなくて、という部分なんです」


 ガーンとショックを受けたように固まり、またじわじわと赤面していくフィオナ。

 意外と人をからかうのが好きらしいセシリアは、そんなフィオナの反応を見つつ続きを話した。


「何度も驚かせてしまってごめんなさい、しっかりと説明しますね。ご存じかと思いますが、女性の魔術師が体内に巡らせる魔力というのは臍下(せいか)――この辺りに集中し、そこから全身へ流れます」


 セシリアは自身の腹部――へその下辺りに手を触れながらそう話す。当然その基礎を理解していたフィオナはこくこくとうなずきだけで応える。

 さらにセシリアは続けた。


「その女性が通常の魔術師であれば何も心配は要りませんが、強大な魔力を秘めているアルトメリアのエルフにとって、それは子を成すための行為に大きな危険を及ぼしてしまうんです」

「……え? 危険、ですか?」

「はい。一度の行為で、容易く命を奪ってしまうほど」

「…………えっ」


 淡々と、事実を連ねるセシリア。

 フィオナは一瞬固まった後、すぐにハッとした。


「――! そ、それじゃあクレスさんもっ!?」

「いえ、クレスさんは大丈夫ですよ。フィオナさんは普段から魔力を体外へ放出して上手く調整(コントロール)していますし、クレスさんも、特別に丈夫な方ですからね。これは、私のように純粋なアルトメリアとの場合、ですね~」

「あ、そ、そうなんですね……はぁ……よかったぁ…………」


 胸に手を当ててホッと安心するフィオナに、セシリアは落ち着いた声で説明をしてくれる。


「アルトメリアの女性が持つ魔力に耐えられるほどの男性は、そうそういません。ですから、アルトメリアたちは外の男性とそういった行為を控えるようになり、そのため、種としての数を増やすことがなかなか出来なかったのです」

「あっ……そ、それで希少な種族になったんですか!?」


 こくんと、セシリアは大きく一度だけうなずいた。


「戦う術を持たず、伴侶を見つけることも難しい……。それでも、ここまで命を繋いでくださった母や祖母、ご先祖様たちに、私はとても感謝しています。今、ここで生きていられることは、それだけで、とても幸せなことですね」

「今、ここで……」


 セシリアは、優しく微笑み掛けた。

 その笑みに見惚れながらも、フィオナは強く実感する。そんなアルトメリアの歴史の中で、祖母や母は自分に命を繋いでくれた。特に母のイリアは、代理聖母としてとても大きなお役目を果たしたほどだ。そうして、大切に娘を育ててくれた。


 そのおかげで、クレスに逢えた。

 たくさんの人たちと出会えた。

 幸せな毎日を手に入れることが出来た。


 だから。



「……はい。わたしも、母たちに感謝しています!」



 明るい表情を見せたフィオナに、セシリアは穏やかに微笑む。

 それからセシリアが付け加えた。


「とは言っても、私の母はまだまだ元気なのですけれどね」

「――えっ? あ、あれ? でもお母様からお店を受け継いだって以前にっ」

「純血のエルフは長生きですから~。母は店番に飽きてしまって、大陸各地で材料の採取ばっかりしているんですよ。数年に一度ここへ帰ってきては、たくさんの材料をくれるんです~」

「ええーっ!? そ、そうだったんですか!? わ、わたしはてっきり…………ふふっ」


 思わず笑い出すフィオナ。


「それは、とっても幸せなことですねっ!」


そう言ったフィオナに、セシリアはまた大きくうなずいて返事をくれた。


 

 こうして話が一段落したタイミングで、二人が窓の外を見てみると、いつの間にか追いかけっこは終わってレナとショコラが大の字に寝転がり、クレスは木にもたれかかって息を整えていた。さすがに休憩しているらしい。


 と、そこでフィオナはあることを思い出して鞄を手に取った。


「あの、セシリアさん。実は一つ、お伺いしたいことがあったんです」

「はい? なんでしょう?」

「このお薬なんですが……」


 そう言ってフィオナが取り出したのは、とろっとした白い液体の入った小瓶。

 セシリアはそれを見て、珍しく驚いたように目を大きく開いた。


「それは……ひょっとして、『天使の雫』ではありませんか?」

「あ、やっぱりご存じなんですね! エステルさんも以前そう言っていました。寿命を延ばすことの出来る薬だって」

「そのとおりです。しかし、天界に存在する霊樹からのみ採取可能と言われる貴重なもの。私のお店に入荷することもまずありません。それを……大変驚きました」


 そんなセシリアに薬を手渡すフィオナ。セシリアは間近で薬をチェックし、感心した声を漏らす。


「えへへ。実は、以前ちょっとしたご縁である方にいただいて。それで、本物かどうかセシリアさんに見てほしかったんです」

「そういうことでしたか。であれば、これは紛れもなく本物だと断言出来ます。含有されている魔力の輝きがその証ですね」


 セシリアが薬を返却し、フィオナは受け取った小瓶をじっと見つめる。


「ありがとうございます。わたし……その、ちょっぴり不安がありまして」

「不安、ですか?」


 意外な言葉だったのか、セシリアは少し大きく目を開く。

 フィオナは小さくうなずき、窓の外を眺める。そこではクレスがレナとショコラを両肩に乗せて歩いており、子供二人はキャッキャと楽しんでいた。


 優しい瞳で、フィオナは話す。


「クレスさんと……レナちゃんと。そして、いつか生まれてきてくれるかもしれない子たちと。わたしは、いつまで一緒にいられるのかなぁって。ふと、思うときがあるんです」

「フィオナさん……」

「ぜ、ぜんぜん気にしてるわけじゃないんですけどっ、幸せすぎると、ちょっぴりそういうことを考えちゃいますね。えへへ。でも……だから強くなりたいって思うんです。もっともっと元気に長生きして、クレスさんをずっと隣で支えたい。レナちゃんや、子供たちの成長を見守っていたい。そのために、一日一日を大切に生きていきたいです。セシリアさんのお話を聞いて、ますますそう思いました」

「……そうですね」


 セシリアはにこやかにうなずき、ポットの新しい紅茶をフィオナのカップに注ぐ。爽やかな香りが部屋に広がり、フィオナがお礼を言ってカップを手に取ると、セシリアは言った。


「フィオナさん。その『天使の雫』ですが、確かに寿命を延ばす霊薬と云われてはいますが、実際にその効果があるかどうかはわかりません。貴重すぎることもあり、効果を証明する方法がなかったからです」

「そ、そうなんですか? でも……そっか。確かに、確かめる方法なんてないですもんね……」

「はい。けれど、一つ確かな効果がありますよ。それは、寿命が延びたと確信出来るくらい、とっても元気になれるということです」

「元気に、ですか?」

「ええ。より具体的に言えば……性欲がとっても強くなります!」

「え!? ま、また性欲ですか~!?」

「うふふ。つまり、それだけ体力や生命力を高めてくれるということですね。フィオナさんにお渡ししているラブラドルの花蜜――『愛の涙』を使ったお薬よりさらに強力です。これは、私が実際に飲用して確かめました」

「たっ、たた確かめたんですかっ!?」

「はい。初めて店に入荷したとき、一滴だけ確かめました。薬の正しい効能もわからず、お客様に提供するわけにはいきませんから」

「な、なるほどです……!」


 驚きつつも、セシリアのプロ精神に得心するフィオナ。

 だが、ただでさえ“性欲がとっても強いアルトメリアのエルフ”が、“性欲がとっても強くなる薬”なんてものを使ってしまったらどうなるのか。ラブラドルの蜜にお世話になっているフィオナだからこそ、とても気になるところである。


 だから当然尋ねた。


「そ、それでっ! あのぅ……結果は、ど、どういう…………?」


 ちょっぴり興奮しながらそうフィオナが訊くと。

 セシリアは、微笑みながら人差し指を自分の唇に当てて――


「それは……ひみつ、です♪」


 と、妖しくウィンクをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ