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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第六章 実家に帰らせていただきます編(新婚旅行編)
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久しぶりの聖都とお土産

 明るいうちに聖都へと戻ってきたクレスとフィオナ。

 帰りは騒ぎを考えて街門の外へと着陸したため、それから気球を中へ運ぶことになったが、気球の存在に気付いてくれたヴァーンや街の男たちが駆けつけてきてくれたので、運搬は非常に楽だった。ちなみに気球はベルッチ家の広い敷地内に保管されることとなっている。


 ということで、手荷物だけで楽に歩けるようになった二人は、まずその足でセリーヌの店へと立ち寄った。ちょうどリズリットがアルバイトの時間だったこともあり、ちょっとした土産話をしてから、最後に手土産を渡して去る。


 それから『聖究魔術学院(アカデミー)』にも足を向け、モニカから許可を得る形で彼女の講師室へ。フィオナの身体を心配してくれていた彼女に報告を済ませていると、ちょうど本日の授業を終えたばかりのエステルがやってきて、さらには噂を聞きつけたレナまで訪れ、五人でしばらく話をした。エステルやレナもフィオナのことは気に掛けてくれていたようで、安心させることが出来たのはフィオナも嬉しいところである。またクレスやフィオナは知らなかったが、エステルとモニカは講師同士で交流するようになっていたようで、一緒に食事へ行くこともあるらしい。レナもエステルの授業へ通うようになって、さらに魔術の知識を深めたようだ。


 アカデミーを出るとようやく森の家へと戻ってきて、夜までしばらくのんびりと過ごす。

 少々空けていただけだったが、それでも家の香りはどこか懐かしくほどホッとするものだった。やはり二人にとって最も落ち着けるのはこの空間であり、お風呂で汗を洗い流すと気持ちもさっぱりしたものだった。



 ――そうして日が暮れた後。

 クレスとフィオナは月の照らす美しい夜の聖域――聖エスティフォルツァ城へとやってきた。カップルのデートコースとしてお馴染みの希望の丘から見える街並みは、今晩も大変綺麗なものだ。新しく建設されているアカデミーの塔は、以前に増して立派なものが完成へと近づいている。


 クレスが城の門前でつぶやいた。


「前回の茶会からだと……ここへ来るのはずいぶん久しぶりだな」

「ふふ、そうですね。ソフィアちゃんにも、もうわたしたちが戻ってきたことは伝わっているのでしょうか?」

「気球は目立つからね。街中の皆が知っていたし、おそらく聖女様も知っているだろう。忙しいようならまた日を改めることにしようか」

「そ、そうですねっ」


 いつもより、ちょっぴり緊張した面持ちのそわそわフィオナである。

 それもそのはずだった。聖女ソフィアがフィオナにとって実の『妹』であるという事実を知ってしまった以上、今までのようにはいられない。そのため、いつもなら向こうからお茶会に誘われる形でやってくるものだが、今回は話をしたくて自発的に足を運んだのだ。しかし約束などしていないため、そもそも会えない可能性もある。というよりも、普通、アポイントメントも取らずに聖女と謁見出来ることなどない。だからダメ元である。


 ――と、二人はそう思っていたのだが。



「クレス様、フィオナ様。お待ちしておりました」



 門をくぐった二人を待っていたのは、礼儀正しく頭を垂れる一人の見知ったメイドであった。

 メイド少女は頭を上げて、城の中へと手で促す。


「どうぞ。ソフィア様がお待ちです」


 この対応に、クレスもフィオナも少し呆然となる。まるで本当に二人の到着をわかっていたかのような対応だったからだ。


 フィオナが言った。


「あ、あのメイドさんっ? でもわたしたち、今日は何の約束もしていなくて、お茶会のお誘いを受けたわけでもなくて……いきなりで、だ、大丈夫なんでしょうか?」


 すると、ソフィアの専属であるメイドが落ち着いた表情でハキハキと答える。


「昼に窓から気球が見えたところで飛び出していきそうになりましたがお引き留めし、説得して、今まで夜の時間を確保するため懸命に公務に励んでおられました。ですがそろそろ限界でしょう。むしろお越し頂いて大変助かります。お二人なら、きっと素敵な土産話を持ってきてくれるはずだからと。それだけを糧に頑張っておられましたので」


 クレスとフィオナが顔を見合わせる。

 メイドはスタスタと歩き始めた。


「どうぞこちらへ。今晩もまだ蒸しますから、涼しげなアイスティーをお作り致します。旅の疲れを癒やしていただけるよう、甘味のご用意もございます。よろしければどうぞ」


 クレスとフィオナは同時に思った。

 本当に良く出来たメイドである、と。

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