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最強のお嫁さんが俺を甘やかします ~もう頑張らなくていいんだよ!~  作者: 灯色ひろ
第五章 子育て編(仮)

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おしおき

 それからしばらくして。


 魔族コロネットは、砂浜の上に正座させられながらジリジリと陽光に焼かれていた。


「うう……あついのだ……」


 これでもかと降り注ぐ日差しによってコロネットはだらだらと汗を掻き、耳の美しいヒレがへんにょりと力をなくしてしまっていた。また、彼女の頭部に乗っているミニタコのデビルクラーケンはもはや真っ赤になって茹でダコ寸前だった。


 他にわずかにいた海水浴客たちは、先ほどから一体何が起きているのかと困惑しっぱなしの様相であったが、エステルがよそいきスマイルで「子どもたちと遊んでいただけなので大したことはありませんよ」アピールをしたため事なきを得た。そもそも騒動の中心が勇者クレスたちであると知って納得したようである。



 一方、涼しげなビーチパラソルの下でチェアに腰掛け、酒をあおりながらそんな光景を眺めるヴァーンがゲラゲラ笑っていた。


「ワハハハハ! そのタコはマジでタコ焼きになっちまいそうだな!」

「デ、デビちゃんだけでも許してほしいのだ~。もう人間たちにいたずらしないように言っておくから、おねがいなのだ~!」


 涙目で懇願するコロネット。

 彼女はレナやドロシーたちを襲った(クラーケンとしてはじゃれついていただけらしい)反省のため、ヴァーンによって“おしおき”を受けている最中なのである。以前クレスから受けた“おしおき”でなければなんでもすると発言したので、ヴァーンがこれを提案したのだ。


 だが、さすがに見た目だけなら可愛らしい少女がこんなおしおきを受ける様子にいたたまれなくなったのか、コロネットがふらふらしてきたところでフィオナが我慢しきれずに駆けだしていた。


「コロネットさん、大丈夫?」

「うう~、くらくらするのだ~……」 

「大変……! ヴァーンさん、もういいですよね? このままじゃかわいそうですっ」

「オイオイフィオナちゃん、まだそこ座らせたばっかりだぜ? それにこいつ魔族なんだからこんくらいなんてことねーはずだぞ」

「でも、もういたずらしないって言ってくれてますし……。ローザさんみたいに話の通じる魔族(ひと)なら、円満に解決出来るはずだと思うんです。レナちゃん、ドロシーちゃんたちも、もういいかな?」


 フィオナがそちらに向かって尋ねると、エステル特製レモンドリンクを飲んでいたレナやドロシー、三人娘たちも揃ってこくこくとうなずく。


 そこでレナがコロネットを抱きかかえてパラソルの下に戻ってくると、よく冷えたレモンドリンクをコロネットに飲ませてあげた。


「はい、ゆっくり飲んでね」

「うう……」


 フィオナに支えられたまま、ちゅーとストローを吸い始めるコロネット。なんとたった一回吸っただけでコップの中身が空っぽになる凄まじい吸引力を見せつけ、その目がぱっちりと開いた。


「――あ! レモン味なのだ! レモン好きなのだ!」

「ふふ、よかった。もう元気になったかな? おしおきはもういいからね。こっちでお話ししよう?」

「う? ゆるしてもらえるのだ?」

「うん。レナちゃんたちがもういいって。あ、エステルさんが氷菓子を作ってくれたから、一緒に食べようね。冷たくて美味しいよ。レモン味もあるんだよ。けど慌てて食べるとお腹が冷えちゃうから、少しずつにしようね」

「ふぁ……」


 優しく微笑むフィオナを見て、コロネットとその頭部のクラーケンは呆然とした。


 そして、一人と一匹は揃ってダバーと滝のように涙を流す。


「しんせつなおねえさん……ありがとうなのです……」

「えっ!? ど、どうしたの? そんなに辛かったの? ごめんねっ、もう大丈夫だよっ」

「ちがうのだ……。あつかったけど、クレスの“おしおき”とくらべたらぜんぜんだったです……」

「え? そ、そうなの?」

「めいわくかけたあたしたちにもやさしい……おねえさんは天使なのだ……デビちゃんもそう言っていますのだ……」

「がぶぶ……でゅろろ……」

「え、え? その子の言葉がわかるの?」

「『アナタ……メガミ……』と言っていますのだ……。あたしもやさしいおねえさんがだいすきなのだ。こころからはんせいしていますなのだぁ~~~」

「わぁっ!?」


 滂沱の涙と鼻水を見せるコロネットは、そのまま水着姿のフィオナに抱きついてびえーんと泣き続ける。ついでにクラーケンもフィオナの頭に移ってぽろぽろと泣いていた。


「コ、コロネットさん? あの、えっと、えっと……ど、どうしましょう~~~?」


 眉尻を下げて困った表情をしながらクレスたちの方に助けを求めるフィオナ。


 エステルが腕を組みながら言う。


「フィオナちゃんは、たぶん母親の才能があると思うわ」


 そんなつぶやきに、唖然としていたクレスたちが皆おかしそうに笑い出した。


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