学園に入学する前①
ルシゼエルは、執事のセバミンに案内された部屋にいたのだった。
すると、いきなり、どごーん、という大きな音を立てて部屋の部屋が破壊される。
誰かが魔法をつかって壊したらしいが、殺気は感じられない。もし、ルシゼエルに対して危害を加えるような攻撃をしたいのであれば、すでに襲ってきているはずだ。ルシゼエルは念のため、警戒し、敵が来ても大丈夫なようにかまえる。
現在の部屋の状況は、ドアが派手に壊れたばっかりに、木片が飛び、ホコリが舞っている。なので、ドアを壊した者の姿はまだよく見えない。
ドアを壊した者は、ドアが壊れたホコリにによって、ごほごほ、ごほごほ、と咳き込んでいる。
声からして、どうやら女の子らしい。しかも、2人いる。
徐々にホコリが落ち着いてくると、女の子の姿が見え、2人ともよく姿が似ている。違うのは羽根の位置で、それぞれ左右別になり黒い羽根が1枚づつついている。
一方、ドアを壊した者もルシゼエルの姿が見えてきたらしく、
「やっとホコリが落ち着いてきたなっ」
「って、変態ぃー。なんで裸なのよ!」
「ゾウ、ゾウが下半身についている」
「あれは、ゾウではありませんわ」
「じゃあ、いったい何? あれはいったい何?」
「おそらく処女にはわからないものですわ」
と、いう声とともに、ドアを壊した者が手に持っていた物を全部投げられた。ポットとか、カップとか、お菓子などなど……。
ルシゼエルはそれらを自然とかわす。
ルシゼエルとしてはののしられるいわれはない。むしろ、いきなりドアを壊した2人の女の子が悪い。
ルシゼエルが裸なのは30分前にさかのぼる。
◆◆◆
ルシゼエルはルキフグと食事をしたあと、セバミンに案内された部屋にいたのだった。
ルシゼエルにあてがわれた部屋は1ルームになる。浴室とベット、トイレ、キッチンが備わっている。おそらく下働き使用人用の部屋よりもいい部屋だろうけど、ルシゼエルが天界で使用していた部屋より簡素で質素なものだった。
それは当然で、次の御前天使候補と呼ばれていた天使であるルシゼエルは、天界でエリート中のエリートだった。
なので、天界での対偶は通常の天使よりもよく、最高のものを使用していた。
(しかし、いきなり濡れ衣を着せられ、随分と生活が変わってしまったものだ)
ルシゼエルはそう思いながら、寝る前に汗を流そうと浴室でシャワーを浴びて出てくる。
すると、タイミングを見計らったかのように、部屋のドアが吹き飛んだのだった。
そうして、この話の最初に戻る。
◆◆◆
ルシゼエルはいきなり女の子から悲鳴をあげられたので、素早く服を着る。
そして、何事もなかったかのように、
「いや、なんでいきなりドアを壊したんだ?」
「新しく変態がきたら歓迎するために、ドアを夜にいきなり来て壊すっていう伝統なんだ」
「せっかく変態さんの噂を聞いて、帰って来てすぐに来てあげたのに、変態さんが変態の格好をしてるなんて」
「ほんとそうだぜ。
私たちは一緒にセントラル学園に通う変態がいるって聞いたから、挨拶に来てやったっていうのに。
いきなり変なモンを見せるなんて」
「アリカ。初対面の変態さんに変態というのは失礼ですよ」
「って、イリカだって変態の変態な部分を見て、驚いて変態って言ってるじゃん」
「それで、変態さん。挨拶に来たのですよ。
私が双子の妹イリカで、こっちが双子の姉アリカですわ」
「ほんとせっかくお茶会をしようと思ってきたのに変態のせいで台無しだぜ」
「ほんとですわ。
変態さんに責任をとってもらいたいわ」
と、勝手に話のやり取りをするアリカとイリカ。
双子の姉がアリカで左に黒い羽根がついている。一方、双子の妹がイリカで右に黒い羽根がついている。
2人とも双子言うだけあって、とても似ている。髪は肩ぐらいの長さで、淡いグリーン色。身長は高くなく、胸はグレープフルーツぐらい。雰囲気は、姉のアリカのほうが活発という印象があり、妹のイリカはおっとりしているが毒気があるような印象がある。
ルシゼエルはいきなりきた初対面のアリカとイリカからいきなり変態、変態と連呼され、イラッときた。殴りたおしたい。
だが、魔王城で新参者であるので少しはこらえようと思った。
「俺はゼエル。よろしく」
「そう。辺境の村で拾われたのですってね」
「アリカ。事前に聞いていた情報よりも本題を聞きましょう」
「本題?」
「そう。ゼエルって羽根何枚持ってるんだ?
セントラル学園は魔界で優秀な人材を集めた学校になるから、羽根は1枚以上持ってるんだろ?」
「そう。アリカの質問がとっても気になってるのですわ」
「俺はまだ羽根を出すことができない。
俺はどちらかというと学問のほうが専門になる」
と、嘘をつくルシゼエル。
それは、ルキフグと事前に話しあってきめておいた内容だった。ルシゼエルが天使であったことは必ず隠すことになっており、名乗るときは偽名のゼエルを使い、羽根は出せないこととする。生まれは辺境の村にし、出自をごまかす。
ちなみに、ルシゼエルが単身で城に乗り込んだことはなかったことにされており、知っているものは誰にも話してはいけないことになっている。
だが、そういったことやルシゼエルの城での争いを知らないアリカとイリカは、羽根が出せないという話を聞いて、バカにした表情になり、
「ぷっ、羽根が出せないなんて」
「あからさまにバカにしては変態さんがかわいそうですわ。
もう少し、オブラートに言わなくてわ」
「じゃあ、いったなんて言うんだよ」
「変態落ちこぼれダメ野郎、なんていかがでしょう」
「なんかイリカの言ってるほうがひどくないか?」
「そんなことはないですわ」
「けど、羽根が出せないような奴と交流を持ったって仕方がないか?」
「そうですね。さっさと早く帰りましょう」
と、アリカとイリカは言って、ドア直さずに帰って行ってしまったのだった。