後片付け⑦
「おう、よく来たな」
ゼエルとスズがサタンに指定された場所に行くと、サタンが待っていたのだった。
サタンは、ゼエルを転生させたときと同じ格好をしている。
まあ、当然といえば当然なのだが、口調もゼエルを転生させたときと同じようにとても偉そうな声だ。
ちなみに、場所は学園の近くのサタン廟になる。
サタン廟は、魔界にあるサタン信仰により、各地にたくさんあり、一番大きい廟は学園と9大魔王ルシフェルとの間にあるものになる。
「あ、あの……、イリカを助けるのをご協力いただけるというのは本当でしょうか……?」
サタンに向かって恐る恐る言うスズ。
この場所にはゼエル、スズ、サタンの三名しかいない。
「ああ、本当だ」
「あ、ありがとうございます。
どうすればよろしいのでしょうか?」
「そうだなぁ、」
考えるように一呼吸置くサタン。どこか空を眺めている。
どうせ結論が出ているにも関わらず、もったいぶってるんだろうな、と思うゼエル。
だが、サタンを神とあがめるスズにとってはゼエルと違った感情でサタンを見ている。畏敬の念を持ちながら、イリカを助ける唯一の手段を持っているサタンに必死にすがるような様子だ。
「な、なんでもしますので、どうかお願いします。どうか教えてください」
「……、……、そうだなぁ、どんなことでもか?」
「はい、」
「本当か?」
「ほ、本当です」
「スズ、お前の気持ちはよくわかった」
ニヤリ、としながら言うサタン。
すべてサタンの計画通りなのだろう。
スズはサタンにとって重要なパーツなのかもしれない。
(そもそも、俺をここに呼んだのはいったいなぜだ?
サタンはここに来てから俺についてなにも触れてこない。
まあ、サタンとはそんなに長い付き合いではないが、サタン自身で話そうとしない限り、聞いてもなにも言わないだろう)
そう思いながら、スズへサタンの言葉を待つゼエル。
そうして、サタンはさっきまで考えていた様子から解放されたような表情をする。
いや、なにかひらめいた表情にサタンはなり、
――じゃあ、スズ、お前は命を差し出せ!
と、短くつぶやいた。