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魔王ルキフグ城侵入②

 ルシゼエルは重厚感のある声が聞こえてきたほうを見ると、身長の高く、彫りが深く、威厳のある男が立っていたのだった。年は若くなく、経験豊かな老兵、といった印象を受ける。目は鋭く、ルシゼエルをにらみつけている。濃い緑色の軍服を着て、飾られている腕章から階級が高そうなことがわかる。

 男は腰にさしてある剣を抜き、ルシゼエルに向かってかまえるながら、


「お前は何しに来た?」

「……………………」


 ルシゼエルはすぐに男の質問に答えず、男を眺め実力を見極めようとする。

 まず、剣の刀身は深海を思わせる様な濃い青色をしている。幅がやや広く、重量感がある。もしかしたら、伝説級の代物かもしれない。

 次に体つきは、老兵といった印象を受けるものの、まだ現役並みに体を鍛えていることが軍服を着た上からもわかる。無駄な脂肪はなく引き締まり、がっちりとした筋肉がついている。

 どうやら、相当な実力があるらしい。

 ルシゼエルが男の実力をはかっていると、男のほうはルシゼエルへ向ける殺気を高めていき、


「まあいい。王家の宝物を狙ってくるなら、この城ではなく宝物庫に行くだろう。

 だから、お前の目的は限られてくる。

 おそらく、ルキフグ様か他の王族の暗殺かのどちらかだろう。

 ここまで侵入して来たということは、相当実力があるっていうことはわかっている。

 だから、最初から全力で行かせてもらう」


 そう言ったあと、剣を振りかぶり、ものすごい勢いでルシゼエルに向かってくる男。

 ルシゼエルは、男よりも速いスピードで、間合いを詰め、男が剣を振り落とす前に剣のつかを右手で掴み、振り下ろせないようにする。


「……なっ…………!」


 予想外のことが起こり、驚きの声をあげる男。

 ルシゼエルはすかさず左足をあげ、男の腹に蹴りを入れる。

 男は、ぐはっ、と息を吐きながら、吹き飛んでいき、背中を壁にぶつけ、たおれる。

 ルシゼエルはそれにより、男が身動きを取れなくなるか、気絶すしているだろうと思った。

 なので、男が吹き飛んでいく途中で落とした青色の剣をかがんで拾う。


 ーーその瞬間だった。


 ルシゼエルに向かって、小刀くらいの氷の塊が飛んできたのだった。

 それは、男がルシゼエルの油断する瞬間を狙い、魔法で作ったものだった。攻撃をした理由は、ルシゼエルに致命傷を与えるためではない。ルシゼエルに少しでもダメージを与え、次にルシゼエルと戦う者にとって助けになることを期待しての行動になる。さっきのルシゼエルの動きで相当実力があるのはわかった。普通に氷の塊を飛ばしたのでは、ルシゼエルに当たることはなく、防がれてしまう。だから、男が使える魔法の中で、威力が落ちたとしてもスピード重視の魔法を使ったのだった。それであれば、ルシゼエルがいくら強くても、必ず当たるはずだと。

 しかし、男の期待ははずれる。

 ルシゼエルは氷の塊に気がつき、左手で受け、握りつぶし、


「まだ、動けたとは」

「ふん、貴様の蹴りなんて痛くはないわ」


 と、苦しそうな表情を作りながら、崩れた壁に背中をよりかからせて強がりをいう男。

 ルシゼエルは、ほう、と言いながら男の剣を持ち、


「ルキフグ様への道のりを教えろ!」


 道に迷っていたこともあり、男からルキフグまでの道を聞き出そうと思い、そう言うルシゼエル。

 本当は城に乗り込んだ理由を隠しておきたかったが、男はほぼ理由を言い当てている。なので、理由を隠しておくのは意味がなく、道のりを聞いたほうが有意義だと思った。

 男は、ふっ、と笑って、


「教えるわけがなかろう」

「なら、死んでもらう」


 そう言いながら、男の首に男の剣を当てるルシゼエル。ルシゼエルが男の首に剣を当てたのは、本当に男を殺すためではない。道のりを聞き出すのに脅しをかけるためだった。

 だが、男は怯えた様子も見せず、むしろルシゼエルに対して座ったままでにらみつけ、


「脅したって無駄だ。

 侵入者に主君の居場所を教えるわけがなかろう。

 早く殺せ!」

「カミアン将軍! ここは我々が対応しますので早くお逃げください」


 と、言う声がルシゼエルの背後から聞こえてきて、ルシゼエルに向かって火の玉が数発飛んでくる。

 どうやら、男はカミアンという名前で、将軍らしい。どおりで身なりがしっかりしているはずだ。

 ルシゼエルは、自分に向かってくる火の玉を慌てず青色の剣で斬り、新しく集まった兵士に向けて青色の剣をかまえる。

 兵士は、30人程度は集まってきている。おそらく、カミアンを蹴り飛ばし壁にぶつかり、それなりに大きな音がたったので、それを聞きつけた兵士たちが集まってきたのだろう。

 一方、兵士たちはルシゼエルの不意をついて攻撃したにも関わらず完璧に防がれたので、驚き、たじろぐ。

 だが、30対1で負けるはずがない、と兵士たちは気持ちを奮い立たせ、剣を抜き、槍をかまえ、ルシゼエルへ攻め込んでいく。ルシゼエルをなんとか殺そうとする気迫がある。

 それに対して、ルシゼエルは兵士たちを殺すことはできない。ルシゼエルは、ルキフグと友好関係を築きに来たのだ。兵士を殺してしまったら、ルキフグとの友好関係を築けなくなる。だから、ルシゼエルの攻撃は必然的に武器の破壊と、殴る蹴るの攻撃となる。

 それにもかかわらず、兵士の攻撃はルシゼエルに一切あたらず、兵士たちのほうがルシゼエルの攻撃によって次々とたおれていく。

 カミアンは、ルシゼエルの動きが流れるようにスムーズで、綺麗で素晴らしかったので、


「すごい。厳しく訓練した兵たちをいとも簡単にたおしていくなんて……。

 我が軍に必ず欲しい人材だ」


 と、敵だと認識しつつも絶賛の声をあげ、


(しかもあの剣が所有者として認めるとは……。

 そういえば、今日はルキフグ様に大切な客人が来るって言ってたが……まさかあいつが……)


 と、内心思う。

 ルシゼエルは、またたく間に兵たちをたおしきり、カミアンのほうを見る。

 すると、今までいなかった執事服を着た男が立っていたのだった。

 戦闘タイプではない。だが、異様な雰囲気があり、その場にいるはずなのにいないかのような感覚がある。

 ルシゼエルは執事服を着ている者を警戒し、にらみ、青色の剣を向け出方を伺う。

 すると、執事服を着た男は礼儀正しく、軽く会釈をして、


「私はセバミンと言います。

 ルキフグ様からの命令で、あなた様をお連れするように、と言われてきました。

 ぜひ私についてきてください」

「わかった。

 だが、ちょっと待ってくれ」


 そう言ったあと、カミアンのほうに向かうルシゼエル。

 そして、青色の剣を鞘に収める。


「使わせてもらってありがとう。

 それに、蹴り飛ばして悪かった」

「いや、いい。こちらが先に斬りかかろうとしたんだ。

 それに、その剣はお前にくれてやる」

「いや、あなたに怪我をさせたのに、こんな素晴らしい剣を受け取れない」

「俺がやるって言ったんだ。だから、持って行け。

 目上の者の言うことは聞くもんだ。

 今度会ったときに剣のことは話してやる。

 ただ、ルキフグ様を待たせてはいけない。早く行け」

「わかった。ありがとう」


 そう言って、青色の剣を腰にさすルシゼエル。

 そして、ルシゼエルはセバミンの後ろについていったのだった。

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