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後片付け④

 声が聞こえてきたほうをスズが見ると、ミーイヤがいたのだった。


「どうしたのですか? 今はゼエルと大事な話をしているのですから、少し待ってもらえますか?」

「いや、スズ。イリカの件だから、もしかしたらとても大事な話かもしれない。

 ちゃんと聞いておいたほうがいいぞ」


 スズをたしなめるゼエル。

 さらわれてしまっているイリカの話。緊急事態である。もし大事な話でなく、ささいな話であっても、ちくいち情報を仕入れていたほうがいい。

 それに、ゼエルとしては、『一緒の部屋に住みなさい』というスズの話を終わらせたかった。

 スズは、ゼエルの指摘に、『はぁ、』とため息をつく。


「ゼエル、ミーイヤはイリカについて大事な話、なーんて言ってますが、おそらくたいしたことはないと思います」

「どうして?」

「ミーイヤは私たちが水魔法で襲われた場所に戻ってきたときにイリカとアリカのことを馬鹿にしていました。そんな者がイリカをちゃんと操作しているとは思えないからです」と、ミーイヤに対して感情をむき出しにして言うスズ。

「スズ様。確かに現在でもイリカの場所をわかっておりません」と、悪びれる様子もなく言うミーイヤ。

「ほらみなさい、ゼエル。やはり、ミーイヤの話なんて聞く必要なんてないのです」

「いや、スズ、ならなおさらどうしてミーイヤがここに来たのだか確認すべきだろう?」

「もったいぶるように話をするミーイヤの話を聞く気にはなりません。

 ゼエル、ミーイヤの話が大事だ、と言うのであれば、あなたがミーイヤの話を聞いておいてください」


 ぷいっ、とするスズ。

 そして、寮の自分の部屋の中に向かって行ってしまった。


(いつもになく感情的になっているな……、スズとミーイヤには昔から因縁があるのだろう……。

 仕方がないから、俺が聞いておいてやるか……)


 寮に行くのを止める気になれず、スズを見送るゼエル。

 そして、ゼエルはミーイヤを見て、


「悪いが、そういうことになってしまったから、俺が話を聞いてスズに伝えておく」

「いえ、むしろその方がよかったと思います。

 私もゼエル様と二人きりで話をしたいことがありましたから。

 あと、スズ様の前ではゼエル様の特殊な事情から呼び捨てで呼ばせていただきますが、二人きりのときは『ゼエル様』と呼ばせてもらいます」

「それで、話は?」と、呼び方なんてどうでもいいと思っているゼエルは、話を促すゼエル。

「ええ、そうです、私はルキフグ城で隠密の部隊長の仕事をしておりますが、そんな私も次期ルキフグ王候補者たちの派閥争いに無関係ではありません」

「それで?」

「それで、ゼエル様には我々が押している候補者に会って欲しいのです」

「いや、別に会わなくたっていい」


 次期ルキフグ王候補になんて興味のないゼエルは、即答で返す。

 即答で『合わなくたっていい』と言われたということは、自分たちが押している候補を価値がない、と言われたに等しいにもかかわらず、ミーイヤはゼエルの回答について予想がついていたのか、冷静に対応していく。

 いや、どちらかというと、必死にゼエルを勧誘する行動をミーイヤはとる。


「今、結論をださずとも結構ですので、一度ゆっくりと考えていただけないでしょうか? 私たちが次期ルキフグ王にと押している方もゼエル様にぜひ会いたいと言っております。

 ゼエル様にどんな事情があるのか詳しいことは存じませんが、きっと力になることができるはずです」

「そんなことを言われてもな……、俺がルキフグ王選定に力になれるわけがないのになぜ? 

 俺と会ったって時間の無駄だと思うぞ」

「私たちが押している次期ルキフグ王候補は、ゼエル様にそういったことを求めているのではありません。

 ただ単に、我々の部隊が対処できなかった正体不明の暗殺者から、スズ様を守ることができるほど力のあるゼエル様と話をしたいだけなのです」

「う~ん、それだけではなんとも答えられないが……」

「そうですね……。

 少し私たちが押している次期ルキフグ王候補の話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「ああ、」

「ありがとうございます。

 私たちが押している次期ルキフグ王候補は、ルキフグ王の支配地内にある国の治世を任されており、現在ではルキフグ王の支配地内でトップクラス賑わいがあります。

 ですが、私たちがルキフグ王に押したいと思っているのは、その方が持っている治世の能力だけではありません。

 どちらかというと、出生や身分にこだわらず、能力があれば高く評価してくれることになります。

 それは、アリカやイリカたちのように古い考えをしている古い貴族たちとは違います。

 そして、私たちが押している次期ルキフグ王候補は優秀な人材を集めたがる癖があります。ただ、単に優秀な人材といっても、人によってそれぞれで、戦争に役に立つような力や頭脳を持っている者もいれば大道芸人みたいな者もいるのですが……。

 ですので、ゼエル様のように優秀な能力を持っているかたであれば、重要に扱ってくれるはずです。

 なので、ゼエル様にもぜひ私たちが押している次期ルキフグ王候補に会って欲しいのです」

「そうか……、考えておくよ」と、めんどくさいと思いながら話をはぐらかそうとするゼエル。

「いつごろ回答をいただけますか?」と、ゼエルから話をはぐらかされまいとするミーイヤ。

「わかった。そのうち、会わせて欲しい」


 あまり興味はないな、と思いながら、そう言わないとイリカの話にならないと思い、『会わせて欲しい』と言うゼエル。早く内容のある話をしたいのだ。

 ミーイヤはとりあえずゼエルからの回答が『会わない』ではなくなったので、一安心したらしく、「よかった」とつぶやきながら、安堵の表情を浮かべる。

 もしかしたら、絶対にゼエルを次期ルキフグ王候補のところに連れてくるようにと言われていたのかもしれない。


(けど、まあ。いつ行くかは決めてないから、行きたいときに行けばいいしな。

 むしろ、行きたくなかったら、ずっと行かなくたっていい)


 ミーイヤは甘いなと思うゼエル。

 けど、それに助けられたのだが……。

 と、それよりも肝心な話を進めなければいけない。


「それで、イリカについての話しを早くして欲しい」

「わかりました」


 ミーイヤはイリカの件について、さっきまでの次期ルキフグ王候補の話しとは全然違う声音で淡々と話し出したのだった。

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