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後片付け②

「大丈夫でしたか?」


 ミーイヤとスズがどうやって、今回の遠足の目的地である湖に向かう道程を決定し、アリカをルキフグ城に帰し、ミーイヤたちを隠密の護衛に配置させたあと、生徒会長たちが馬車に乗ってゼエルとスズたちのところに来たのだった。

 生徒会長の声音、馬の息遣い、それらから、心配て急いで来たのがわかる。

 ゼエルは、この場合、世間的に身分が上のスズが応えるべきだと思い、スズのほうに視線を送る。

 スズは、ゼエルの視線に気づき、無言でうなずいたあと、


「私の護衛が守ってくれたので大丈夫でした。

 湖に向かうのが遅れてしまい、すみませんでした。

 ユミリィとの勝負は負けてしまいましたね」


 と、やや無理に笑顔を作りながら、言う。

 会話に自分の名前がでてきたユミリィは、自分の欲しかった勝利を手に入れられ、ほっとしている反面、スズたちが乗っていた馬車が無残に破壊されている残骸を見て素直に喜びを表現することはできない、と思い、どうしようかとまどいながらユミリィに合わせて控えめな笑顔を作る。

 ユミリィが困っていそうな状況を見かねて、生徒会長は心配そうな表情で言う。


「そういえば、アリカとイリカがいないようですが……、大丈夫ですか?」

「ご心配いただきましてありがとうございます。

 ですが、大丈夫です。アリカとイリカは今回の闘争で少々傷を負ってしまったので大事をとってルキフグ城に帰しました。

 休養を十分にとったのち、学園に戻ってくるでしょう」


 と、言うスズ。

 アリカについては本当のことであるが、イリカについては嘘をついた。

 なぜならば、イリカがさらわれたと本当のことを話したら、面倒であり、イリカの名誉にかわると思ったのだ。生徒会長がもしイリカがさらわれたとしれば、救援するための手伝いをすると言い出すだろう。すると、まだ、イリカがどこの、誰にさらわれたのかわからない、という、さらわれたという失敗の上、現状すらわかっていないという失態がばれてしまう。その上、イリカの任務であるスズの護衛をしっかりと果たせなかったとなると、イリカの失敗がはっきりと周知されてしまうことになるだろう。そうなると、アリカとイリカがまた学園に戻ってきてスズの護衛をする、といった任務をするのがやりずらくなってしまい、学園に戻ってこれなくなってしまう。絶対にあってはならないことだ。

 スズはそんなことを考え、スズとゼエルたちは、事前にアリカとイリカの失態を隠せるように打ち合わせをしていたのだった。

 それに対して、生徒会長は安心した表情で、


「そうですか……、みんな無事なようでよかったです。

 ですが、今日は散々な目にあわせてしまい、すみませんでしたね」


 と、自分の主催した遠足で失態があったことについて、謝罪する。

 スズはそんな生徒会長をみて、首を横にゆっくりと数回ふり、


「そ、そんな……、こちらこそ急に襲われたとはいえ、ちゃんと対応できなかったのだ悪かったのです」

「いえいえ、こちらこそ……、主催したこちら側でちゃんと護衛するのができなかったのです。

 なので、責めを負うべきはこちら側です」

「ありがとうございます、生徒会長。

 ですが、私の護衛である、アリカとイリカはそんなにやわではありません。

 ルキフグ城から学園にまた戻ってくるときは、さらに力をつけて戻ってきてくれるでしょう」

「うふふ、そうですね。主人であるスズがそう言うのであれば、アリカとイリカは今回の件を励みにして頑張れるでしょう」

「はい、生徒会長。私もそう思います」

「けれども、スズが襲われ、アリカとイリカが帰ったとなれば、今日は遠足を中止するしかありませんね」

「はい、申し訳ございません」

「スズが謝ることはないわ。すべては、スズを襲った奴らが悪いのですから……。

 学園としても、スズたちを襲った者たちをしっかりと調べ、護衛を強化するようにしておきましょう。

 何か困るようなことがあれば、気兼ねなく言ってくださいね」

「ありがとうございます。

 ですが、それには及びません。

 私を襲った者たちの報復も私の護衛も、9大魔王ルキフグ家の威信をかけて対処いたしますします」

「そう、スズ本人が言うのであれば、生徒会としてもそのようにするわ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、四人用の馬車だから、私、ユミリィ、スズ、シュウ、ゼエルの五人で乗るのはちょっときついかもしれないけれども、おんなじ馬車で帰りましょう」

「はい、」


 そうして、スズたちは、学園に戻るために、馬車に乗り、走り出したのだった。

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