魔王ルキフグ城侵入①
ルシゼエルはリリを助けるのに時間がかかってしまったので遅れを取り戻すため、歩いて魔王ルキフグの城に向かうのをやめ空を飛んで向かっていた。
途中、魔物とかが現れたが、難なくたおし、1日もかからず無事についた。
魔王ルキフグの城につくと、とても高い城壁に囲まれていて、武器を装備した兵士が城壁の周りで歩き、見回りをしている。外部から襲われるという万が一の事態にちゃんと備えているようだったが、兵士がやや多いように思う。
ルシゼエルは通行が自由になっている南門から入ると、想像以上に栄えていて活気がある、という印象があった。
南門から城の門まで伸びている中央の大通りに店舗が並んでいる。店舗は、飲食店や武器屋、奴隷販売店、果物屋、肉屋など様々なものがある。
ルシゼエルは、歩いている途中で気になったこととがいくつかあった。
1つ目は、10人くらいに組織された騎兵隊が大慌てで、城壁の外へ出て行ったこと(何か緊急自体が発生したのだろうか?)。
2つ目は、ドラゴンと奴隷が戦うショーのチケットを売る幼い売り子から声をかけられたこと(娯楽の一つなのだろうが、そんなむごいショーがあるなんてさすがは魔界だ)。
3つ目は、赤い髪が肩ぐらいの長さの幼い少女が兵士に追われていて、いきなりぶつかられたこと(なぜ追われていたのだろうか?そして、ちゃんと逃げられたのだろうか?)。
4つ目は、これから狩りに出かける、とういう集団のリーダーから「一緒にいかないか?」と声をかけられたことだった(もちろん、即答で断ったが、なぜ声をかけてきたのだろうか?)。
5つ目は、奴隷として売られている商品の中に天使が混じっていたこと(見たことのない顔だったが、どうして売られているのだろうか?)。
そんな風に、ルシゼエルが歩いていると飲食店から香ばしい食べ物の匂いがしてくる。
(そういえば、魔界に来てから食事をしてなかったな。
いくら魔界であっても、お金を払わないと食事をできないだろうし……。
早くルキフグに会って、そのときに食事をご馳走してもらえばいいか)
ルシゼエルは食事を食べてなく、魔界に来てからずっと動きっぱなしだった。魔王ルキフグの城に来るまでにリリを助けたり、半日以上飛びっぱなしだったり。なので、疲れもたまっている。普段ならばもう少しよく考えたりするところ、短絡的に物事を考えるようになっていた。
ルシゼエルは、ルキフグに早く会おうと思い、どこにも立ち寄らず、まっすぐと魔王ルキフグ城に向かう。
そして、城の門には門兵が2人いて、城の中に入るのを止められる。
「通行証を持っているか?」
「いや、持っていない。
魔王ルキフグ様はいらっしゃるのか?」
「いらっしゃる。
だが、通行証を持っていなければ城内に入れない」
「そうか」
「そもそも、通行証を持たずに城内に入ろうとするとは……。
貴様は誰だ?」
「ゼエルだ」
ルシゼエルと名乗ると天界にいた天使だとバレ可能性があるので、偽名としてゼエルを名乗ることにしたルシゼエル。リリを助け名前を聞かれたこともあり、偽名を考えておいたほうがいい、と思い、考えておいたのだった。
一方、門兵のほうは怪訝そうな顔をしている。門兵は士気が高いらしく、ハキハキしている。
「ゼエル? 聞いたことのない名前だな。
なぜ通行証を持ってないのになぜここにきたのだ?
ルキフグ様に会いに来たのか?」
ルシゼエルはなんて言うか悩んだ。魔界の神であるサタンにルキフグに会うように、と言われたということを伝えてしまってもいいのだろうか、ということを。
いや、やめておいた方がいい。魔界の神であるサタンと話しをした、ということはものすごく重大なことになる。10枚羽根のデザインのように、魔界の神であるサタンからの神託によって、国家を揺るがすような重大な決定事項を決めたりしている。だから、サタンとの話は直接ルキフグに会うまでは言わないほうがいい。
なので、ルシゼエルは門兵の目を見て、
「言えない」
「じゃあ、さっさと帰れ!」
と、言いながらルシゼエルの肩を、乱暴に押す門兵。
こうなってくると、一回出直して来たほうがいいのだろうか?とルシゼエルは考える。だが、通行証なんてどうやって手に入れればいいのかわからないし、すぐに手に入れられるような物ではないだろう。そうなってくると、正攻法で城内に入るための方法はない。仕方がないが、ここでは実力行使で中に入ったほうがいい。
一方、門兵は、槍の棒の部分でルシゼエルに殴ろうとしてくる。ルシゼエルがどこにも行かず、無言で立ち止まって考えていたからだろう。
なので、ルシゼエルは槍を手で掴み、奪い取ってへし折り、2人の門兵の腹に一発づつグーで殴り気を失わせる。
ルシゼエルは城内に入り無用な争いを避けるため、姿を見えなくする魔法を使いう。そして、城内に入り、ルキフグがいるであろう城の上へと目指す。
だが、初めて入る城なので、すぐに道に迷ってしまった。上に向かっていると思っていたら下の方に向かっていたり、同じ場所に戻っていたりした。万が一、城内に敵が侵入したときに、なかなか魔王の場所までにたどり着けないように作られている、らしい。
そうやって城内をウロウロしていると、門兵が気絶したことを知って城内で不審者を探す部隊が捜索しだした声や足音が聞こえてくる。なので、ルシゼエルはできるだけ兵士がいない道を選んで進んでいく。ルシゼエルは姿を見えなくする魔法を使っているが、訓練をしっかりとしていて、レベルの高い者だったら見破る者も出てくるかもしれない、と思ったからだ。
(誰にも見つからず、争いも起こらずに魔王ルキフグに会えればいいが……)
ルシゼエルはそう思いながら城内を歩き、ルキフグがいる場所を目指す。
だが、相手にとって本拠地である城内で、ルシゼエルの思い通りにうまくはいかないらしい。
ーーお前だな。例の侵入者は。
と、背後から、重く重厚感のある声でルシゼエルは話しかけられたのだった。