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遠足⑥

(つうか、そろそろどいてくれって言ってもいいと思うのだが……、どうすっかな……、)


 アリカに抱き付かれてから、十分程度たち、自分自身でどうにかするしかないと考え出したゼエル。

 ゼエルは当初、少し待っていれば、スズかイリカがどうにかしてくれるもんだと思っていた。

 だが、ずっと待っていてもなにもする気配がない。

 それどころか、揺れの大きさに、スズもイリカも混乱しているようで二人で抱き合い、悲鳴を上げたままになっている。


(スズはともかく、アリカとイリカは軍事訓練を受けているって聞いていたのになぁ……)


 疑問に思うゼエル。

 現在の馬車の揺れは、確かに舗装された街中で走る馬車に比べればひどい揺れだ。

 だが、それは舗装された街中と比べた場合にだ。

 軍事訓練で通る道は、まったく舗装されていない。

 いや、むしろ、あえて悪路を走っているんじゃないかって思えるくらいぼこぼこな道だ。

 そんな道だから当然、揺れはものすごく激しい。

『ぴょんぴょん』はねているって思えるくらいの動きだ。

 そのことから比べれば、今の馬車の揺れは、まだ揺れていないと思えるくらだ。余裕すぎる。


(けど、軍事訓練をちゃんと受けていると自称するアリカとイリカが怖がる程度の揺れ。

 もしかしたら、俺がなんとも思っていないだけで、実は異変が起きているのだろうか……)


 不審に感じだし、馬車をいったん止め、外にでてみようと思うゼエル。


(仕方がないから、アリカを無理やりどかすか……)


 と、ゼエルがアリカを揺れのタイミングに合わせ、離れさせる。

「いったっ、なにすんのよ! ゼエル!」と言うアリカの叫び声を無視し、馬車のドアを開け、外を見まわす。


(確かに、悪路だ……、。

 普通に考えて湖に向かうのにある程度、道が整ってしかるべき。にもかかわず、まったくデコボコだ。

 となると、馬車の運転手が道を間違えたか……。

 確か、馬車の運転手を手配したのは、生徒会長のマリエッタだったはず……。

 そうなると、この悪路を通ることになったのは、マリエッタの仕業か、。

 いや、この悪路を通ることになったのは、アリカのせいだ。

 学園から湖に向かうときに、ユミリィとスズとのやり取りを見ていたマリエッタが勝負を持ち掛けたのだった。

 その持ち掛けてきた勝負というのは、湖に先についた馬車のほうが勝ち。

 当然、血気の多いアリカが挑発に乗る。スズはやや不服そうだったが、アリカが威勢よく啖呵をきった以上、勝負を受けざる負えないという状況に追い込まれ、勝負を受けたのだった。

 そして、勝負には勝者への褒美がつきものだ。その褒美というのは、ゼエルを一日自由にできるというものだった。

 だから、スズのために絶対にマリエッタに負けられないとアリカは思い、通常の道を選ばずに、馬車の運転手が嫌がるにも関わらず近道を選んだのだった。

 馬車の運転手がものすごく嫌がったときにやめとけばよかったのだが……、アリカの勢いや立場上で無理だった……。

 まあ、今は過去を振り返っても仕方がない。早く場所を止め、どうするか考えよう)


 ゼエルは、誰にも悟られないように、馬車の前方に爆発を起こし、馬車を止めることにしたのだった。

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