遠足④
スズとユミリィがゼエルを挟み込んで「「むむむぅ~」」といがみ合っているなか、ゼエルはやってらんないな、と思い、少し離れた場所にある森林のほうを見る。
すると、かすかに殺気を感じる。
1、2、3……、と数えていくと、どうやら十人程度いるらしい。
気配をうまくけしているところから、相当の使い手だということがわかる。
じっくりとこちらの様子をうかがっているところから、まだ、行動に起こすつもりはないらしい。きっと、今いる場所だと学園からすぐに警備の者たちが駆けつけてくる可能性が高いから湖の近くにいった場所で、攻撃をしかけるつもりなのだろう……。
(でも、いったい誰を狙っているのだろうか?)
と、かすかな殺気の向かう方向を慎重にとらえると……、どうやら、スズを狙っているらしい。
入学式のときは、ユミリィを狙っていたのに、今度はスズが狙われているとは……。
スズが狙われている理由は、きっと9大魔王ルキフグの娘からになるのだろう。
けど、学園内はしっかりと警備を配置しているはずにもかかわらず、暗殺者が入り込んでいるなんて、どうなっているんだ? とゼエルは思い、生徒会長のマリエッタのほうを見ると、なにか企んでいる表情をしている。
(いったい何を企んでるんだろうか? 本当にめんどくさいことに巻き込まないで欲しいよ)
と、思いながら、冷静に分析をする。
おそらくマリエッタはわかっていて暗殺者がいることをわかっていて泳がせているようだ。
だから、暗殺者に対応する方法もしっかりと考えているのだろう。
そうなると、マリエッタと一緒の馬車になるユミリィとシュウは安全なんだろう。
一方、スズたちの馬車は大丈夫だろうか……、と考えると、答えは、《ノー》だ。
今潜んでいる暗殺者たちは、入学式のときにいた暗殺者よりも腕がたつ。そのことは、気配の消し方からわかる。
入学式のときにイリカだけでは、暗殺者の対応をできなかったことから、スズたちが襲われたら守り切れないかもしれない。
(仕方がない……、俺が一緒の馬車に乗って万が一のときは助けてやればいいか……)
ゼエルは感情的にはユミリィと同じ馬車がいいかな、と気持ちが傾いていたが、
「すまん、ユミリィ。俺はスズと同じ馬車に乗る」
と、言ったのだった。
すると、スズはものすごく勝ち誇ってうれしい表情になり、一方のユミリィは非常に悔しそうな表情になったのは確認をしなくても明らかだった。